複雑・ファジー小説

Re: 百万回生きたひと ( No.2 )
日時: 2011/04/16 02:29
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)

 少年は百万回も生きて百万回も死んだので、頭が良いのも運動が得意なのも当然だった。
百万回生きた分の知識を持っているし、百万回生きた分の経験も持っているから。
ある時は学者だったし、ある時は戦士だった。またある時は芸術家だったし、さらにある時は遠い国の王様だった。
 だから、少年には毎日がひどく退屈に感じられる。
「…つっまんないなー…」
 学校の屋上で風を浴びる少年は、柵に肘をついてつぶやいた。
 クラスの女子から人気があったって、皆が知らない事をたくさん知っていたって、周りから期待されたって、そんなのちっとも。
女に囲まれるのは、大富豪だった時にもう飽き飽きしてしまった。そしてそれは全部お金目当てだった。
 どういう経路を辿っていっても、結局最後は死んでしまう。人間はそういうもので、そのルートだけは何があっても外れられない。
百万回生きて百万回死んだ少年にとって、自分の人生はまるで弓矢の矢か花火や爆弾、もしくはゲームの使い捨てのアバターのように感じられた。

 少年は、程度が低すぎる周りの人間が大嫌いだった。少年は誰よりも自分が好きだったのだ。