複雑・ファジー小説
- Re: 迷子セカイ ( No.18 )
- 日時: 2011/06/06 19:53
- 名前: 華焔 ◆xEt1wVJEg. (ID: 8hgpVngW)
- 参照: ズット一緒。 死ニタイ時ハ私ニ言イナサイ、一緒ニ死ンデアゲル。
辻褄の合わない出来事に最初から気付いていたが、カレンはずっとスルーしていた。
自分は昔から彼に甘いから。 なんてただの言い訳に過ぎないが、彼女にとって彼は、ハーツ・トランスエバーは唯一信頼できる大人であるに違いない。
教師でありながら、反学園派のカレン達に味方して貰えるのなんてハーツ以外にいるわけがない。
だから彼女は、彼が彼女の時間を狂わせた事を自分たちの為と信じて疑わなかった。
「わたしは、あの子を助けたいからね。 だから、貴方もこの学園から一緒に連れ出してあげる」
虚空に向けて言葉を発する。
「ずーっと一緒って、先生と約束したもんね。 だから、わたし達はいつも一緒なの、ね、グレン」
にっこりと薄い桜色の唇で弧を描く。
大きく息を吸って、言った。
「ハーツも一緒。 オルドもミリーノも一緒。 グレンも……先生も、一緒。
私に怖いものなんて、ないんだからっ♪」
カレンの瞳から、一筋の涙が零れた。
***
「……あるえ? ハーツくん、いたの? そういえばさっきアンタの魔術感を感じたけど、何かした?」
リバーは、男の色素の薄い髪の尻尾を引っ張りながら耳元で囁く。
嫌そうに目を細めて、ハーツ・トランスエバーは振り向いた。
「ん。 カレンらが生き急いでたもんで、ちょっと狂わさせてもらった」
「……話変わるけど、男のくせにキレーな顔してんねえ」
「あー……、あんたは全然変わってないよな。 俺がココ卒業してから何も変わってねーよ、リバー先生」
褒めているのか、貶しているのか。
何にせよ何も読めない人物だ、とリバーは心中で評価した。
「あれ?」とハーツが声を漏らすとリバーはそれに反応した。
「なによ」
「俺が生徒だった時代に比べて、老けた?」
「だまらっしゃい」
ハーツだってすでに成人していることは誰の目にも明らか。
そのハーツの先生であるリバーの年代と言ったら。
「ぶふっ」
ハーツは想像して吹き出す。
「あにソーゾーしてんだよ」
「いや、先生の年齢。 どんだけ小さく見積もってもなあ……ぷっくっくっ」
リバーの張り手が、ハーツの右頬に炸裂する。
赤く腫れ上がった右頬を素早く抑えて、へにゃっと笑って見せる。
本当に、読めない奴だ。
「いったいじゃん、先生」
「アンタもあの子らもアタシの大事な生徒だよ。 アンタがどんだけでかくなっても悪い事したら仕置き。 それが、センセーです」
「屁理屈。 俺だってもう先生だっつーの、つまり、さ」
リバーの耳元までハーツの唇が近づいてくる。
緊張して身を固める事もなく、ただ冷静にハーツの行動を見守る。
目はハーツを追っているが、かといって生気が宿ってるわけじゃない。
「先生の同僚、だろう」
ハーツはそう呟くと、先程リバーが通っていった道を早々に歩き始めた。
「ちょっと、アンタも一緒の方向から来てたでしょ。 んでそっち行くのさ……?」
ハーツの姿は消えていた。
大方、魔術でどこかへ飛んだのだろう。
リバーは騒がしい自分の生徒らがいるであろう校舎の方へ歩き出し始めた。
持っていた書類を力強く抱きしめて、呟く。
「何に当てられたらそうなるのよ。 理由はカレン? ロラン? …………昔からそう、訳わかんないッ!」
大粒の涙が書類の上に輪を作る。
「アタシ、間違った事、したのかなあ……?
ロラン、教えてよ。 アタシは、ロランを生き返らせた方がいい? 死なせたままの方がいい?
アタシの命なんていくらでもあげるから、許して……!」