複雑・ファジー小説
- Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.114 )
- 日時: 2012/05/03 22:33
- 名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)
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「……最後のは、冗談だろ?」
松浦鷹史は笑いながら、また一つ段ボール箱を蹴飛ばした。
(当たってるくせに……)
彼の笑顔が動揺して引きつっている。 その顔があまりにも滑稽で思わず僕も一緒に笑っちゃいそうなくらいだ。
彼だけは許しておけない。 徳永さんと同じいたみを存分に味あわせてやりたい————
「——さっき、さ、“松浦くんと塾も学校も同じ女の子”から
デートに誘われちゃっ、た」
ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ……
秋はもう深まってきているのに季節外れの雷が鳴り出した。
「……嬉しかったよ。
松浦くんはもう知ってると思うけど、僕もずっと“彼女”のことが気になってたからね。
デートの約束は、今度の日曜日……」
まるで戦いの始まりを知らせるゴングの様に窓の外で激しい稲妻が横切り、雨が凄い音をたてて降り出した。
「ハハ。 どしゃ降りになりゃあいいよな、その日……」
松浦鷹史はまだ引かない。 ここまで言われてもまだ窓の外を見ながら笑っている。 ————おそらく表面だけ……だけど。
(でも、これで“終わり”だよ……)
「どしゃ降りになったら、か……。 ふふっ。 でも、もしそうなれば“おうちデート”に持っていけるし……
実は僕の家、明日から一週間、両親が仕事で外国に行く事になってるから、その間ずっといなくってね。
一つ屋根の下で、あんなに可愛いなみこちゃんと二人っきりで何時間も一緒にいたら…… 絶対、何か起こっちゃうよね」
松浦鷹史から完全に笑顔が消え去った。
「高樹…… おまえ、初めてのデートでいきなり武藤を家に連れこむ気か……?」
彼の鋭い視線が僕を突き刺す……。
「……だから、僕が紳士でいられるように……
————祈っててね、松浦くん……」