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複雑・ファジー小説
- Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.117 )
- 日時: 2012/05/03 22:40
- 名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)
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松浦鷹史は教室へ戻っていった。
つい勢いで飛び出てしまった言葉だったけれど、本当は彼に“なみこちゃんとのデート”の事を教えてやりたかったのかもしれない。
彼と同じで実は僕も焦っている。 学校が同じで家がとなり同士、というハンデがあるから……。
彼が去り際に残していった言葉が胸に引っ掛かっている————
————「なぁ、高樹君、“北風と太陽”っつー物語……知ってるか?
旅人の上着を脱がすために、北風と太陽が勝負する……ってヤツ。
一応、物語では太陽が脱がした事になってンだけどな……
北風が、もう少し強い風を起こしてたら————
旅人の上着を剥ぎとばすことができたんじゃないか……って、思って な……」
窓の外を見ると、さっきはあんなに荒れ狂っていた空がウソだったかの様に穏やかになっている。
「通り雨か……。 きっと自転車ベタベタだな……」
床の上に落ちたままになっていたジャケットを拾い上げて肩に掛け、僕も教室へ戻った。
(——確か、塾の帰り道の途中にあるドラッグ・ストアーって九時閉店だったっけ……。
急いで帰れば……なんとかギリギリで間に合うかな……)
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