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複雑・ファジー小説
- Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.57 )
- 日時: 2012/05/02 14:21
- 名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)
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「————これでも、まだ、わかんねぇのか、 ……バーカ。」
プライドの高い彼の事だから、蹴られた仕返しに十倍返しで反撃されると思っていた。
あたしは恐怖と混乱で、松浦くんの胸の中で固まってしまった。
気のせいなのかもしれないけれど、バカにされた言葉のはずなのに、何故だろう……あたしを抱きしめながら耳もとで囁く彼の声が、少し震えていた様な感じがした。
松浦くんはあたしに何か大事な事を伝えようとしているみたいだけど、はっきり言ってくれないから分からない。 そんなことよりも、身長170センチ近くもある彼に、こうやって力の加減無しで覆い被されている状態で抱きしめられていて苦しい。
たぶん、もう一分以上もこの体勢ではないだろうか。 ————いい加減に離してほしい。
(蹴っちゃってごめんなさい、って言おう……)
——と思った時に、彼は抱きしめる腕の力を緩め、あたしの顔を覗きこんできた。
研ぎ澄まされた刃のような視線を顔面に突きつけられ、あたしは言葉を失った。
「俺が先に…… 奪ってやる……」
「 !! 」
口の中にミントの味が広がった。
あたしのファーストキスは、予想もできない不意打ちで松浦くんに奪われてしまった。
「……じゃあな。 楽しかったぞ、なみこ」
あたしのくちびるを指でギュッとつまんで鼻で笑い、彼は一人で部屋を出て行った。
あたしの口の中に、噛みかけのガムを残して————
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