複雑・ファジー小説
- Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.61 )
- 日時: 2012/05/02 14:23
- 名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)
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☆ ★ ☆
(……よし。 松浦くん、もういないな……)
“やりまくりべや”のドアを開け、顔を出して覗いて確認をしてから、あたしは廊下に出た。
でも、いくらこんな事をしたって、どうせまた帰りのバスでイヤでも顔を合わせなくちゃいけない。 彼からは逃げたくても逃げることができない。
さっき、松浦くんに強引に口移しで放りこまれたガムも捨てて、くちびるも箱ティッシュが空っぽになるまでいっぱい使って拭いた。 でも……ミントの味が消えただけで松浦くんの味は消えてくれない。
「楽しかったぞ…… なみこ……」
勝手にあんな事をしておいて“楽しかった”だなんて……。 あたしを見下ろし、いやらしく笑っていた彼の顔も消せない。
昨夜、せっかく“素敵な思い出の場所”として胸の中に残しておいた“三階の思い出”が、松浦くんのせいで、今夜一気に“最悪の事故現場”へと崩れ堕ちてしまった。
思い出したくない……。 もう二度とここへは来たくない————。
あたしは両方の手の平をギュッと握りしめ、早歩きで廊下を渡った。
教室に戻ろう。 とにかく高樹くんの前では、何もなかったような顔していなくっちゃ————
「!」
階段を降りようとしたら、二階から高樹くんが昇ってきた。
(どうしよう…… よりにもよって、こんなところで会っちゃうなんて……。 三階に松浦くんと一緒にいた事、知られちゃったかも————)
あたしは頑張って何も無かった様な顔をしたつもりだったけれど、絶対、動揺している顔になっていた。
いつもなら「なみこちゃん」と、優しい笑顔で呼んでくれる彼が、あたしの顔を見ても何も言わずにゆっくりと昇ってくる。
キーン コーン……
高樹くんが階段をあたしのいる所から一段下の段まで昇ってきた時、始令のベルが鳴り出した。
「————サボっちゃおっか」
(え……?)
驚いている間もなく、あたしの手は彼に握られ、再び三階に連れて行かれた。
————松浦くんだけではない。 高樹くんの様子も今日はなんだかおかしい。
「だっ、だめだよ高樹くんっ、 戻らないと叱られちゃうよ……
あたしたち、この前も問題起こしてるし……マズいよっ……」
高樹くんに手を引かれ三階の廊下を渡りながら、頭の中に色んなことが浮かびあがってくる。
ビリヤードの台の上で高樹くんに……キスされて……
服を脱がされて……
キスされて……
いろんなところを触られて……
キスされて————
☆ ★ ☆
気がつくとあたしたちは“やりまくりべや”の前に来ていた。
高樹くんはドアを開けて、あたしの背中を押した。
「僕のこと嫌いだったら……
————ごめん。」