複雑・ファジー小説

Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.80 )
日時: 2012/05/02 14:52
名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)

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     ☆     ★     ☆


「よ、よぉーっし、 じゃ、“お姉ちゃん”が君の靴に“魔法”をかけてあげよう!  1・2・さんっ、 えーいっ!」
「うんっ、 コレで大丈夫!」
「……ほんとう?」
「たぶん…… いや! 絶対!
                     ————だからもう泣いちゃだめだよ、 ね?」


     ☆     ★     ☆


————ここは僕の通っている釜斗々中学校。
 今は昼休み。 僕は廊下の壁にもたれながら、窓の外で交尾をしているトンボを見ていた。


「やあやあ高樹殿、本日はお待ちかねの塾でござるなあ。 愛しのなみこ嬢との甘い愛の戦略を練っておられるようで? 邪魔してすまんな……」
「会いたいのにぃー……週二しか会えなぁーい……。 どうしてあなたは原黒中なの? どうして処女なの?  ——痛ッて! 何すんだ由季ッ!」
「……ばーか。 もうっ、ごめんね高樹くん」
 ヘンなやつらだけど、一応彼らは僕の友達。 時代劇役者(?)口調の聖夜と、「少年よ、オンナを抱け(いだけ)」が口癖の、見ての通り“チャラ男”な健。 そして“はきだめに鶴”、日本人形のようなしとやかな顔をしているこの女の子は……信じられないけど、まさかの“あの”健の彼女の由季ちゃん。
 なんだかんだ言っていつも彼らとつるんでエッチな話に花を咲かしているんだけど————
                                            今は由季ちゃんがいるから無理だな……。


「え! ウソ! マジで今日告るの!? 静香!!」
「……ウン」
 廊下にいる僕に“わざと聞こえるように”アピールしているのか大きな声で教室の中からぞろぞろと出てきた女の子たち。 三人いる中のひとり、一番スカート丈の短い中学生離れしたグラマーな体型をした“今日告白するらしい”女の子は“徳永静香さん”。 彼女は見ての通りクラス……いや、この学校の名物キャラだ。
 その名物、徳永さんがお尻を振りながらゆっくりと歩いて近付いてきて、僕の横に香水の香りをフワフワと漂わせながらもたれてきた。
 彼女は赤茶色の縦ロールの長い髪を指で少しつまみ、毛先を僕の鼻のそばに近づけて、上目づかいで話し出した。


「高樹クン……  静香をフったコト……今に後悔させてアゲルから————」


「おおうっ! 今日も色っぽ……いや、エロっぽいよ!静香御前」
「よッ! 女泣かせの色男、高樹源氏!」
 僕と徳永さんの前で健たちがワケの分からない事を言ってはやしたてている。
 僕は自分の鼻の前にチラついている徳永さんの髪を手で払いのけ、「ふっ」と小さく笑った。


「胸の谷間に着火したダイナマイトはさんで挑む覚悟がないと……無理だと思うよ……。
                                        ————頑張って。 本気で応援してるから」