複雑・ファジー小説

Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.87 )
日時: 2012/05/02 16:58
名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)

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 僕たちは階段を、二階を越えて三階まで昇ってきた。
 三階に着いたとたんに、黒岩先輩の汗でにじんだゴツゴツした手が僕の手を強く握ってきた。 ————しかも僕がまだ、なみこちゃんとしたことのない“恋人つなぎ”で……。
 僕は一回つばを飲み込んでから、彼に問いかけた。
「話って…… なんですか……」
「………。」
 先輩は何も言わずに僕の手をさっきよりも強く握りしめ、廊下をまっすぐ歩いていく。 先輩と交互に絡んでいる指が痛い。 あんなに人とフレンドリーに関わる健や聖夜も、彼には距離を置いている。 先輩はちょっと……いや、“かなり”強引なんだ。 嫌がられると余計に燃える(萌える?)タイプっていうのか————


「すみません。 あきらめてください……。 僕には今、好きな女の子がいますので……」
「——……知っている。」
 “女の子”という所をちゃんと強調して言ったのに、先輩はそれでも構わないかのように僕を連れて、そのまままっすぐ歩き続けた。
(マズイな。 先輩、やっぱり……)
 僕の予想通り、彼は廊下の一番奥の部屋の前まで来て足を止めた。
 この部屋は、塾のカップル達がキスをしたり、もっと“すごいこと”をして愛し合う……という“ヤリまくり部屋”。
 ここに僕がなみこちゃんとではなくて黒岩先輩と来ることになるなんて……思ってもみなかった。


「高樹…… おまえ両刀使い、なんだろ……?」
                   (え……  ちょっ、と待って、先輩……  それ は……)
 黒岩先輩はいきなり僕の手の甲にキスをして……僕の尻を撫でてきた。


「————最後に一度…… 一回だけでいいから……
                                思い出つくらせてくれ……」