複雑・ファジー小説

Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.94 )
日時: 2012/05/02 17:03
名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)

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「王子様ヅラしてんじゃねぇよ。
                 ——フン!  どうせ武藤のカラダだけが目当てなんだろ…… ん? 高樹君……」
 僕の肩に手を置き、耳元に顔を近付け囁いて、松浦鷹史は階段を降りて教室へ戻っていった。
(————それは、あんたのことだろっ!!)
 僕は拳で壁を思いっきり叩いた。


 なみこちゃんの気持ちを考えたら、今は一人でそっとしておいてあげた方がいいのだろうか。
                             ————それとも僕がそばにいてあげたほうがいいのだろうか……


「助けて」
 さっき松浦鷹史に手を引かれていった彼女の泣きそうな顔が頭の中に浮かんだ。
 同時に、今あいつに言われた言葉と一緒に考えたくもない光景が映し出された。


 なみこちゃんが、あの部屋で————


「な……何するの、松浦くん…… やめてッ!!」
                『武藤のやつ…… 暴れるわ、叫ぶわで大変だったぞ……』
「……うるせーな。 騒ぐんじゃねぇ……」
 松浦鷹史に押し倒されて……ムリヤリ……
                『まったく処女ってモンは扱いかたに困る……。』
「すぐ終わるから……我慢しろ……」
 けがれたあいつの手が————なみこちゃんの体に触れる……
「 !! 」


                『————今“あそこ”で…… 再起不能になってるぜ……』


 握りしめた手にじわりと血がにじんでいる。 それを舐めて僕は一回深呼吸をした。
(いけない……爆発しそう…… 落ち付け、僕……)
 体の震えが止まらない。 しかし、なみこちゃんの方がもっと震えているに違いない。
 あいつにこわいことをされて……今、泣いているのかもしれない……
 僕の足が階段を————上へ昇る方に動いた。

Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.95 )
日時: 2012/05/03 10:45
名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)

66>

(なみこちゃ、ん……)
 階段を昇る途中で、なみこちゃんにバッタリ会った。
 突然のあまり彼女にかけてあげたい言葉が見つからず、僕は何も言えずにゆっくりと彼女に近付いていった。
 松浦鷹史は僕を脅そうとしてあんなデタラメを言ったんだ。 絶対にそうだ。 そうであってほしい…… 血のにじむ拳を握りしめてそう祈りながら————


 彼女の様子を見ると、着ている服に乱れはなく、涙の跡も無い。
(うん、大丈夫そう…… よかった……)
 僕の体の震えが徐々に消えていく。
 口元を小さな手で押さえて隠し、はにかんだ顔で僕から目を逸らす彼女。 
(やばい。 可愛すぎるよ、なみこちゃん……)
 あれは何時だったか……まだなみこちゃんに出逢って間もない夜に見た夢がよみがえる……。 まさに今の“その顔”をしたエプロン姿の彼女が、初めて一生懸命作った手料理の前で僕を誘う————


「はやく食べてくれないと、冷めちゃう、よ……」
                            ————と。


 それがすごくおいしそうで我慢ができなくなった僕は、彼女の言う通り、すぐに料理……の方じゃなくて、“彼女”を頂いた夢。
(今ここで……抱きしめてもいいか、な……)
 “ゾクゾクする”とはいっても、さっきとは全く違う感情が僕の体を震え上がらせる。
(……バ、バカ! よりにもよって、こんな時に……何考えてんだ、僕っ!!)
 頑張って引っ込めていた僕の本能が理性をぶっ飛ばそうとしている。 僕は彼女から目を離さずに、重たい足を持ち上げて階段を一段づつ踏みしめる。
(————抱きしめたい)
 彼女がいる一段下の所で僕は足を止めた。 そこでちょうど背の高さがなみこちゃんと同じ高さになり、僕の顔の前が彼女の顔になった。 口に手を当てて顔を真っ赤に染めている彼女は、チラッと僕の顔を見て再び顔を反らした。
(……キ、キスしたいっ!!)
 完全に本能が剥き出しになった僕は、生つばを飲み、彼女の両肩に手を置いた。


 キーン コーン……
 始令のベルが僕の暴走を止める。
                   ————しかしそれは、ほんの一瞬だけだった。


「————サボっちゃおっか……」
 驚いている彼女の手を握って、僕は三階の“ヤリまくり部屋”へ向かった。
 通う学校の違う僕たちが、二人っきりにならないとできない“あそこ”でしようとしている…… “あの夢の続き”を————
 まだ会って間もないのに一体何を考えているんだ……。 僕の中に棲んでいる悪魔が天使を差し置いてしゃしゃり出てきて、耳元で“素直になれ”と囁く。
 もっとなみこちゃんと一緒にいたい……なんて正直言って綺麗事なのかもしれない。 松浦鷹史への対抗心が加わって、気が付かないうちに僕の彼女への恋心は強烈なものになっていた。
(……もう、だめだ。 我慢できないよ……)
 なみこちゃんの手を握りながら“ヤリまくり部屋”のドアを開けると同時に————
                                              僕は欲望のドアを開いた。

Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.96 )
日時: 2012/05/03 10:51
名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)

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(……でも僕、今“アレ”…… 持ってないんだよね……)


————残念だけど、今回は……おあずけ。


 結局、僕は欲望の爆発を必死で抑えた。
 僕にしがみ付いてくるなみこちゃんを震える手で支えながら、無意識でズボンのベルトを緩めてしまったけれど、部屋の中に偶然揃っていたビリヤードの道具のおかげで、なんとか気持ちは緩まなかった。


 ほんの40分だけ……なのに、最高に甘酸っぱい“プチ・デート”を僕はなみこちゃんと二人っきりで楽しんだ。
 そこで彼女にもらった夢の様なプレゼントは————“キスつきのデート”。
(一日中、なみこちゃんを“ひとり占め”……)
 どうやら今度の日曜日まで、僕は充分に眠れなさそうだ。
                             なみこちゃんとのデートのシミュレーションで————