複雑・ファジー小説
- Re: たか☆たか★パニック 〜ひと塾の経験〜 ( No.95 )
- 日時: 2012/05/03 10:45
- 名前: ゆかむらさき (ID: dKbIszRw)
66>
(なみこちゃ、ん……)
階段を昇る途中で、なみこちゃんにバッタリ会った。
突然のあまり彼女にかけてあげたい言葉が見つからず、僕は何も言えずにゆっくりと彼女に近付いていった。
松浦鷹史は僕を脅そうとしてあんなデタラメを言ったんだ。 絶対にそうだ。 そうであってほしい…… 血のにじむ拳を握りしめてそう祈りながら————
彼女の様子を見ると、着ている服に乱れはなく、涙の跡も無い。
(うん、大丈夫そう…… よかった……)
僕の体の震えが徐々に消えていく。
口元を小さな手で押さえて隠し、はにかんだ顔で僕から目を逸らす彼女。
(やばい。 可愛すぎるよ、なみこちゃん……)
あれは何時だったか……まだなみこちゃんに出逢って間もない夜に見た夢がよみがえる……。 まさに今の“その顔”をしたエプロン姿の彼女が、初めて一生懸命作った手料理の前で僕を誘う————
「はやく食べてくれないと、冷めちゃう、よ……」
————と。
それがすごくおいしそうで我慢ができなくなった僕は、彼女の言う通り、すぐに料理……の方じゃなくて、“彼女”を頂いた夢。
(今ここで……抱きしめてもいいか、な……)
“ゾクゾクする”とはいっても、さっきとは全く違う感情が僕の体を震え上がらせる。
(……バ、バカ! よりにもよって、こんな時に……何考えてんだ、僕っ!!)
頑張って引っ込めていた僕の本能が理性をぶっ飛ばそうとしている。 僕は彼女から目を離さずに、重たい足を持ち上げて階段を一段づつ踏みしめる。
(————抱きしめたい)
彼女がいる一段下の所で僕は足を止めた。 そこでちょうど背の高さがなみこちゃんと同じ高さになり、僕の顔の前が彼女の顔になった。 口に手を当てて顔を真っ赤に染めている彼女は、チラッと僕の顔を見て再び顔を反らした。
(……キ、キスしたいっ!!)
完全に本能が剥き出しになった僕は、生つばを飲み、彼女の両肩に手を置いた。
キーン コーン……
始令のベルが僕の暴走を止める。
————しかしそれは、ほんの一瞬だけだった。
「————サボっちゃおっか……」
驚いている彼女の手を握って、僕は三階の“ヤリまくり部屋”へ向かった。
通う学校の違う僕たちが、二人っきりにならないとできない“あそこ”でしようとしている…… “あの夢の続き”を————
まだ会って間もないのに一体何を考えているんだ……。 僕の中に棲んでいる悪魔が天使を差し置いてしゃしゃり出てきて、耳元で“素直になれ”と囁く。
もっとなみこちゃんと一緒にいたい……なんて正直言って綺麗事なのかもしれない。 松浦鷹史への対抗心が加わって、気が付かないうちに僕の彼女への恋心は強烈なものになっていた。
(……もう、だめだ。 我慢できないよ……)
なみこちゃんの手を握りながら“ヤリまくり部屋”のドアを開けると同時に————
僕は欲望のドアを開いた。