複雑・ファジー小説

本編 2 ( No.6 )
日時: 2011/05/08 14:49
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

「うん、だって俺らは、そういうのには感動しないはずだろ?上辺だけ綺麗って言うことは可能でも」

そう言ってヨウトはやっと、にこりと笑った。

人間のような曖昧な心を持っていなくても、人工的な美や、プログラムされた芸術的な美、ストレートな言葉…直喩っていうのかな?は僕らでも理解できる。

ただ、風景…風情ってやつ?とか、抽象的な美、抽象的な言葉…隠喩っていうの?は正直なとこ、理解不能だ。

…もし、この空をキレイだって思う感情がプログラムなら、それでもいい。

それでも俺は、空や星が好きだから。

空は、万人から好かれるよね、ちょっと羨ましい。

…いつか、ネオンの光に汚されてない夜空を見たい、なんて昔(と言っても1・2年前だけど)ヨウトに言った気がする。

その時もヨウトは無表情で首を傾げてたなぁ。思い出してちょっと笑う。

「__ン!リン!」

「え、あ、はい!」

名前を呼ばれて我に返る。

いつの間にかホームルームが始まっていて、黒板の前には先生(勿論ヒューマノイド)が呆れたような表情で立っていた。

僕の癖、としてプログラムされている、『考え出すと周りが見えなくなる』という性質(であってるのかな、知らん)

正直なんでこんな癖をつけたのか理解に苦しむ。

「__我々ヒューマノイドは、あくまで__、我々は製作者であるニンゲンより〜___」

先生の『いつもの話』が始まる。

僕らA組の生徒にだけ伝えられる言葉。

もう、何十回…いや、何百回何千回ときいた。

こういう時に欠伸がでるのは、なんでなんだろうなぁ。

きょろ、と教室をこっそり見回しても欠伸をしてる奴なんかいない。

皆真剣に聞いている。