PR
複雑・ファジー小説
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.6 )
- 日時: 2011/05/21 12:58
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
4.そう、君だ。
『ピーンポーン……』
錆びた扉の向こうから古いインターホンの音が聞こえた。相当古い物なので、画面は見えない。だが、予想は出来る。
私は寝っ転がっていた痛んだ畳から起き上がって、扉のほうへ無言で言った。
今日は何のようだろう?
「やっほー、新情報入手だよー!!」
私は、突然の訪問者にあきれて、前髪を持ち上げながら言った。
「……なんだよ、せっかく寝てたというのに。瑠歌、お前時間帯をわきまえろ」
「えー、だってまだ一時だよ?昼食べてないんでしょ?一緒に食べよーよ」
「おごりか?」
「えっへん、おごりだ」
「よし、ちょいまて」
私は瑠歌を玄関に待たせたまま、超高速でパジャマを脱ぎ捨てて、Tシャツとジーパンに着替えた。どちらも安物。
金は、親戚が負担してくれるからいいが、やっぱり悪い気がするので、男物の安物だ。
瑠歌いわく、「美羽が美形だから、ヤサでカッコイイ」だと。
私って美形なのか?と思っても、この家には鏡が無い。
「よし、行こう」
「早ぁ……」
「行くぞッ」
「……んもう」
チャリンコにとびのってファミレスに向かうときの風や、流れる景色は、いつ見ても心地がよく、なんだか懐かしい。
言い忘れていたが、瑠歌はこの土地を買い占められるほど有力な権力を持つ、豪邸のお嬢様だ。
お嬢様にしては格好は普通だし、性格も普通だと思う。お嬢様ぶらないところが、私は好きだ。
だから時々おごってくれたり、服を買いに行くのに付き合ってくれたりする。
私は言葉に甘えて、ついていく。
ファミレスの中は冷房がきいていて、ひんやりとしていた。
いくら初夏だといっても、暑いものは暑い。半そでのTシャツをパタパタしながら店員についていく私達は、普通の女の子達だった。
PR