複雑・ファジー小説

Re: Love Call ( No.1 )
日時: 2011/06/04 20:01
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

 神様神様。

 どうかどうかこれ以上。

 お兄ちゃんから何も奪わないでください。

 どうかどうか神様神様。

 これ以上どうか。



 お兄ちゃん。

 僕のお兄ちゃん。

 お兄ちゃんは優しくって綺麗で頭がよくて。みんなから大好きって言われてた。

 そんなお兄ちゃん。僕を大切にしてくれるお兄ちゃん。

 そうだ、今度お兄ちゃんと話せる機会があったら言ってみよう。

 お兄ちゃん、ずっとずっと、大好きだよ、て。


          「Love Call」


 鋭利な絶叫が響いた。

 夜、だった。その悲鳴は、あー君のものだった。

 嗚呼、また怖い夢見たんだね。

 あー君は自分で目を開けて、叫び続ける自分の口に手を突っ込んだ。

「んー……んー……」

 荒い息遣い。まだ叫び散らかしたい自分の意思を押し殺して、あー君は黙り込む。黙り込んで、身体を折った。

「……あうぁっ……あ……あぁ……」

 何かを我慢するように、あー君は小さく言葉を漏らす。

 けれど、ひとりの我慢には、限界があった。

 痛くて、痛くて仕方がない。傷がついた胸をおさえて、あー君は涙をぬぐった。

「めいわくかけないって……にーにのほうがいたいんだもん……」

 我慢しなくていいんだよって。それでもあー君は首を振る。

「くらくなっちゃったから……おでんわしちゃいけないんだもん……かんごふさんがおこるもん……」

 そうだね。いつお電話しても、お兄ちゃんには繋がらないんだもんね。

 お兄ちゃんに会いたい?

 声、聞きたい?

「にーににしんぱいかけちゃいけないんだもん……」

 大丈夫。ただ聞くだけだから。

 あー君は微かに表情を動かす。泣きそうな、道に迷ったような、不安そうな顔。


「あいたい……にーに……」