複雑・ファジー小説

Re: Love Call ( No.127 )
日時: 2011/11/07 01:31
名前: 葬儀屋 (ID: cX9VSRxU)

 朝はいつもその人が、僕の名前を呼ぶ声で起きる。

 着替えを済ませたら、手錠を外して、違う部屋に移動して、朝食を食べるように努力する。

 ただ、僕は食べられない時がほとんどで、食べたとしても、それから吐き出してしまう。喉に詰まって、呑み込めないのかな。

「いいよぉ、苦しかったらぺってしてね」

 その人はいつもそう言う。だけど、僕は飲み込もうとするから、時々、喉にひっかけて、息、出来なくなる時がある。

 すると、いつもその人が助けるんだ。

 喉にひっかけたものが無くなったら、気持ち悪くなって、全部吐き出す。吐き出すと、身体の力だ抜けて、横になる。すると、また吐き出したものが喉に詰まる。これの繰り返し。そのたび、その人は僕の息を助ける。



 覚えているのかな。

 僕は最初に言った。殺しても、いたぶっても、遊んでも良いからって……でもね、その人は、僕に何もやらない。やるって言ったら、たまにキスを頬にするだけ。

「だって、ボクは冬花が大好きなんだもん。ごめんね、キスも、冬花は気持ち悪いでしょ?」

 なんで謝るの。本当は僕が謝らなくてはいけないのに。

「ごめんね、冬花」

 そう言って、その人はまた、僕にキスをする。



 ……本当はね、もがけばすべて取れて、逃げられるほど、僕は、自由だったんだ。

 でも僕は、此処にいることにしている。

 だって、もし、此処で死んだとしても。



 必ず、一人は僕の死を悲しんでくれる人がいるから、ね。

 我儘、かな。でも、僕の我儘、少ないから。これだけは……かなえてほしいんだ。