複雑・ファジー小説
- Re: Love Call ( No.128 )
- 日時: 2011/11/27 00:32
- 名前: 葬儀屋 (ID: cX9VSRxU)
その人はいつも苦しそうだった。もしかしたらいじめられていたのかもしれない。僕と同じ。だから、僕を閉じ込めてくれたのかな。
「とう、かぁああああぁぁぁ……ボ、クは……悪い、人……なのか、なぁ?」
その人は泣いて、僕に顔を押し付ける。髪の毛がちくちくする。
悪い人じゃないって言うと、その人はもっと僕をきつく抱きしめる。
痛いよ。駄目だよ。僕なんかに縋っても僕がその重みに壊れるだけだよ。
愛とか好きとか。そう言うの嫌い。甘ったるくて身体中にまとわりつく香水みたい。
「ほん、と……? 冬花、はボクのこと……好きぃ?」
頷いたら、その人はえへへと笑った。毛布を頭から被り、生温かい風が額を撫でる。
きつい、薔薇の匂いがした。安っぽい香水の匂い。その人のやわらかな髪がさらさらと僕の胸を撫でる。
「ぼくもとうかのことすきだよぉ? いっしょにずっとずっといたぁい!」
子供みたいにそう言うその人。ごろんごろん僕を抱きしめたままベッドの上を回っている。
「えへへ、ぼくうれしいなぁ。ぼく、とうかだけでいいやぁ。とうかだけぼくのそばにいてくれたらいいのぉ」
そう言うことは、言わないでほしい。僕も本気で信じちゃうじゃないか。
横で眠ったしまったその人の腕をつかんだまま、僕も眠っていた。怖い夢だった。僕がずっと一人の中で泣いていた。頂戴頂戴ってずっと叫んで。
雪が降ってきて、道路が見えた。強い薔薇の匂いに頭がくらんで、殴り倒されたらお母さんがいた。
大きくなっちゃいけないのに、大きくなるから。僕を愛してくれなくなった。骨が上がっても、お母さんは僕に太陽を見せてくれなくて。
何も食べちゃいけなくて。学校の給食も、こっそりお父さんが作ってくれたオムライスも、食べたもの、全部吐き出して。
頭がぐわんてなって、怖くなって叫んだら。
「どうしたのぉ?」
そうやってその人が僕の頬を撫でた。
「怖い夢見たのぉ? とんでけってしてあげよっか?」
こつんて僕のおでこにおでこをくっつけて。その人は笑って。
僕の唇にキスをした。
「わるいのわるいのとんでけぇて。ぼくのとうかにてをだしたらゆるさんぞー」
悪い人だよ貴方は。だって僕にキスをするもん。好きって言うもん愛しているっていうもん。
信じちゃうんだもん。
痛いよ。僕はやだ。嫌いだよそんな言葉。縋らないで僕なんかに。ちっさな僕が崩れたら、絶対貴方も僕のことを忘れちゃう。
ねぇ、そうでしょ………… ?