複雑・ファジー小説
- Re: Love Call ( No.131 )
- 日時: 2011/12/18 00:37
- 名前: 葬儀屋 (ID: cX9VSRxU)
ある日。僕はいつものようにその人の声で起こされた。
でも、それと一緒に。身体を起こした僕を、その人は抱きしめて、潰れるくらいに抱きしめて。
「いやだぁ……! とうかは、ぼくのものなんだよぉ!? ずっとずっとぼくといっしょにいてくれるんだよ!」
叫んで、倒れこむその人を、僕はなんとか落ち着けようとした。ベッドに押し付けられて、息ができない。
酸のきいた臭いがした。肩にかかる生温かい液体を感じて。もう駄目なのかなって。ゆるくなった腕からはい出て、電話に飛びついた。
……僕の眼は、見えてない。だから、でこぼこになってるボタンを探して、救急車を呼ぼうとした。
でも、その手をすぐにその人が掴む。強く強く僕を抱きしめて、ずっと僕の名前を呼ぶ。
「いっしょにいたいよぉ……ずっと、ずっとぉ」
警察に、見つかってしまったんだって。
その人が外出した時……僕が、食べられるようなものを買いに行ってもらった時に、見つかってしまったんだって。
「ごめんねぇ……とうかぁ。ぼ、ぼくのせいで……!」
いいよ。だって仕方ないよ。僕のせいで貴方が誘拐犯になってしまったんだから。謝るのは僕の方なんだから。
嗚咽を懸命にこらえるその人の肩は震えて。これは全部僕が貴方に与えた痛みなんだなぁて思ったら僕なんかいなくていい気がして、また嫌われてるんじゃないかなって思って。
嗚呼、もう嫌われてるんだな、て。
貴方は、本当は僕なんか、要らないんでしょ。
「冬花。冬花は楽しい? ボクと一緒にいて。ボクに必要とされているのは気持ちいい? 縋ったりしてごめんね。でも、ボクはもう無理みたいなんだよ悪い子になっちゃうんだよ。だから許してね……?」
その人はそう言って謝る。そのたびに、僕の頭の中から嫌われていることが無くなって、此処に居場所があると思ってしまう。
後ろから抱き締められる温かさが、冬の底冷えに勝って、また苦しそうに蹲ったその人が、何かを吐き出す。
嗚呼もう、耐えられないよ……。
