複雑・ファジー小説
- Re: Love Call ( No.19 )
- 日時: 2011/08/13 16:32
- 名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)
「はいはいはいはい。そーゆーことですね」
空が金色に染まる夕方。いつもの時間にやって来た姉原を見て、少女は叫びだした。
眠そうに眼をこする朝霧を一瞥し、姉原は少女を睨む。
「誰だテメェ」
「誰って、朝霧の友達……いや、よき理解者かな?」
「は?」
どういう意味だと朝霧を見ても、その微かな希望は間の抜ける笑みで引き裂かれる。どうやら、不法侵入者本人に聞くしかないようだ。
少女はネコ目を細め、姉原を見上げていた。どう見ても朝霧より年上の少女だ。16程ではないだろうか。黒く、つややかな長髪を指に絡め、何やらぶつぶつと独り言を言っている。
いかれている侵入者に呆れ、またそれを家に入れた朝霧にも呆れ、姉原はまだ理解ができていない先ほどの問いを聞こうかと口を開いた時、
「ところで姉原さんは、幽霊を信じますか?」
——……名前を?——
聞き違いか。少女が今会ったばかりの姉原の名前を知ることもない。朝霧も、初対面の相手に話すわけはないだろう。
「……意味が」
「あーなるほど、信じないわけですか。頭が真四角ですね」
そのとたん、頭の中に渦巻いていた疑問は吹き飛び、驚きと憤りの感情が一気に姉原の表情をゆがめていく。
「お前……」
「はぁ、そーいうことだから、私みたいな赤の他人に声かけてくるしかなかったのか。悲しいなおい」
姉原を見て、またやれやれと首を振る少女。
それを引き金に、姉原の憤りは頂点に達する。
「何様のつもりだお前! さっきから大人に向かってべらべら堂々愚痴言いやがって! 大体、お前は誰なんだ! あからさまに朝霧と友達と言うこともないだろうが!」
姉原の問いに、少女はにやりと笑った。
「違います、私は朝霧のよき理解者……友達じゃないですよ。第一に私は……」
「あなたたちが今一番会いたいと思っている人に一番近い存在……いや、どちらかと言うと、同一人物……とでもいいましょうか?」
遠回し……違う、直球だった。少女は姉原に言った。
「私は、あなたたちの先生なんですよ」