複雑・ファジー小説
- Re: Love Call ( No.21 )
- 日時: 2011/08/13 21:40
- 名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)
再び座った姉原を見て、翡翠はそのそばに寄ってきて座った。
「なんだ。まだ用か」
「一つ提案だけど」
「……」
嫌な予感しかしない。
「姉原……また、花狩と話したいでしょ?」
「……何をいまさら話せと言うんだ。俺ももう24だぞ」
「精神年齢は小学生の低学年と言ったところか……」
「そのひとりごと、聞こえているぞ」
「ねぇねぇ、話したくない? 抱きしめられたくない?」
姉原の殺気をうまくかわし、笑顔ですり寄ってくる翡翠。
「……何が目的だ」
「いやぁ、もしそうなれば、それを実現させてあげられるなぁと思ってねぇ」
沈黙。「あれ?」と首を傾ける翡翠を目の前に、姉原は翡翠の狙いを理解し損ねていた。そして誘惑に負ける。
「それは……どうすればいいんだ」
「それはねぇ。最初に言った通り、私は今、花狩って言う人と同一人物とも言える存在なわけで。だから、私が花狩って言う人に「なりきり」をしたら、自然にこう……なんて言うかな、すぅっと精神が交代できて、久しぶりの再会ー! みたいな?」
「……なりきり」
「そう、その人が生前、どういう生活パターンで、どういう職業をしていて、どういう姿、格好で、どういう性格で、どういう喋り方で、どういう趣味で……とか、色々再現していくわけ。するとその意志は、共通点の増えた私に、もっとなじみやすくなって、精神の交換まで出来るようになっちゃうっていう寸法よ! どう? なんか効率良くない?」
興奮しているせいか、話し方が変わっている気がする。
「効率がめちゃくちゃに悪いな……」
——出来るわけないだろうが……——
此処で姉原はあることに気づく。
「……しかし、そのなりきりをすれば」
「うん! 私は此処に住むことになります! 男物の格好をして」
悪寒が走る。
「ということは、不登校の朝霧は……」
「一日中、私と遊べる……何? ちょーラッキーじゃん!」
アンラッキーだ。
朝霧が一日中こいつと一緒にいれば、オカルトマニアに洗脳されるのは時間の問題だろう。ただでさえ、今の朝霧も五月蝿いと思うのに、これがオカルトマニアになったりでもしたら、その日は……。
朝霧を殺してしまいそうで、恐怖に眼を見開く姉原に、翡翠はすりすりと身をこすってくる。
「ねぇねぇ、いいでしょ? ちゃんと朝霧と一緒に学校行くから」
「お前、12なのか?」
「うん、しかも日向教室だよ。ねぇ、だからいいでしょ?」
「日向って……お前! やっぱり障害者じゃねぇか!」
「いんや、私の場合、虚言癖が半端なく激しいみたいで。けど、この話は本当だよ。信じて」
そこだけ真顔になる翡翠。呆れかえる姉原。
「……もういい。好きにしろ……しかし、お前の両親には了解をとってあるのか? 後で誘拐犯とかになってたら困るけどなぁ」
姉原の問いに、翡翠は頬を膨らませた。
「家出の許可を、わざわざ親に確かめる反抗期がどこにいますか」
この一言で翡翠は勝ったと思ったのかるんるんと姉原から離れていき、熟睡中の朝霧を歓喜の声で叫びながら抱きしめた。
あの反抗期娘……いや、ペテン師は此処をいい別居地にと考えていたらしい。今までの話も信じてはいるが、これが本当の目的ではなかったのか。
姉原は天井を仰ぎ、花狩に会った時には今までため込んだ色々な愚痴を永遠に聞かせてやると、誓った。
「もう、どうにでもなりやがれ……」
