複雑・ファジー小説
- Re: 【参照200】Love Call【ありがとうございます!】 ( No.62 )
- 日時: 2011/09/13 19:06
- 名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)
「……ふっ……なかなかうまいじゃないか」
「クロさんえらぁ〜い! すご〜い!」
「……」
私は頭をおさえ、目の前にある信じられないチェス盤を凝視した。
其処には私の駒である白のキングに黒のナイトがチェックメイトしており、全く逃げられない状況であった。
「……かち?」
「それも分からずにこの状況を作ったのか!?」
私に怒鳴られ、彼は委縮するが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
チェスをしようと言い出したのはすーくんだった。
しばらくの間、すーくんをほったらかしにした罰として遊ぶことになったのだが……何しろ、すーくんは現実逃避したとはいえ天才。凡人の私が勝つことはないのだが……!
「クロさんすごいぃ! すーくん見なおしたぁ!」
今まで格下に見ていたのかと突っ込みを入れたくなったが引っ込んだ。すーくんがこのように笑うのは珍しい。
ちなみに、クロさんとは彼のことだ。名前も分からないため、一応「ネクロフィリアさん」と呼んでいたものの、名前が長いと言う問題に突き当たってしまった。そこで、ジュンさんの提案で衣装も黒いことだし、「クロさん」に統一しようということでこの名前になっている。
それにしても……。この物事の飲み込み方は素晴らしいとしか言いようがない。彼には簡単なルールと各駒がどのように動くかを適当に教えただけなのだが……もしや、記憶をなくす前はチェスの選手だったとか?
「負けましたぁ……次から師匠と呼ばせてください……」
「クロさんエライからなでなでする!」
すーくんに撫でられ、彼は頬を緩め、顔を赤くした。
「ありがと……すーくん」
彼がこのチェスに勝利したと確認した直後……ドアが開く音が聞こえ、私は振り返り、
固まった。
「あー……ごめんなさぁい。部屋の前でのノック、忘れてたぁ?」
いや、その前に家にはいる時のノックがなかったが!
私の心の中での呟きをその見知らぬ女性が感じてくれるわけもなく、彼女は堂々と私たちの自室に入り込んできた。
「なんかねぇ……外であった人追いかけてきたら此処に来ちゃったんだけどぉ……あらぁ! 可愛い!」
すぐさますーくんを見つけ、ぎゅっとしがみつく。
「う? ……うぐ……!?」
「きゃーん、外で初めての男の子ハッケーン! しかもちょー可愛いじゃん」
突然現れた危険人物っぽい人に彼は固まっていた。そして彼女はそんな彼を見逃すはずもなく、すぐにその顔を覗き込む。
「ふーん、世の中、こんな真っ黒の人もいるんだねぇー。家の中で帽子かぶるって、これ、常識的に合ってんの?」
「え……あの」
「あー……きーみ、一番理解ありそうな人。えっと、私、ある人探してるんだ」
彼女は作り笑いと一瞬で分かる微笑を湛え、私にずいっと近寄った。
「こんな……栗色で、ちょっと癖っ毛だったかな。垂れ目で、Mっぽい人。此処にいない? あー私の名前言ってなかったね。じゃ、聞かれる前に先言っとくよ」
該当の人が……と言いかける私を押し付け、彼女はまるで言いたくてうずうずしているかのように、身震いした。
「私、ニューって言うの。よろしくね!」