複雑・ファジー小説
- Re: 最後の審判 キャラクター募集中! ( No.13 )
- 日時: 2011/06/16 19:56
- 名前: ショウタロー ◆mOYvzARW6k (ID: d.8YONjT)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
第二話
母が家を出て行ったのは10歳の頃、今から8年も前だった。なぜ出て行ったのかは分からない。父に聞いたが、教えてくれなかった。今でも気になっている。
そして、間もなく家に知らない女がやって来た。父はその女を新しい母と言った。もちろん納得がいかなかった。
継母は僕に冷たかった。童話に出てくる継母のようにいじめてはこなかったが、常に僕を見る目は邪魔者を見る目で、会話は全て事務的なもので、必要最低限しかしなかった。僕は継母が大嫌いだったから、別にそれでも構わなかったけど。
継母がやって来て丁度一年後に、継母と父の間に子供が生まれた。腹違いの弟だ。
腹違いの弟は甘やかされて育った。継母は頭の出来が悪く、子供に優しくするのと甘やかすを履き違えた女だった。だから腹違いの弟は、頭の悪い、我侭で自己中心的、かつ乱暴な人間になった。
奴は僕を殴ったり、蹴ったり、物を投げつけたり、悪口を言ってきたりしてきた。父に言っても、じゃれついているだけと片付けられた。奴は僕の持ち物を奪うか、壊した。そんな腹違いの弟を、父と継母は誰よりも可愛がった。
そして、父は僕を邪魔物を見る目で見つめた。
僕の中で何か、形のあるものがはちきれて、飛び散った、そしてそれは僕を包み込むようにしてまた形を形成していく……
「!」
伊原が目を覚ましたときに最初に見たのは、生い茂る木々の間から差し込む細い日の光りだった。昼間のはずなのに薄暗い。森の中だ。自分は直接、地面に寝転がっていた。伊原は一瞬の間自分がおかれている状況が理解できなかったが、すぐに思い出した。
頭の中に昨日の映像が流れる。あの後、伊原はショックで気絶していた。「人殺し」と、伊原の意識がなくなるほんの数秒前に、美鶴はマミにそう叫んでいた。その後、多分マミは美鶴を……。マミならやりかねない。伊原の考える最悪の結果が当たってそうで怖かった。
伊原は頭を押さえ、項垂れた。とにかく体調が優れなかった。頭がスプーンで抉られたかのように痛み、体が重かった。キツネマスクの女の頭がひしゃげる映像が、何回も頭の中で繰り返される。堪えきれなくなって、伊原はまた吐き出した。しかし昨日から何も食べていないから、口からは胃液しか出てこなかった。
伊原は目に涙を浮かべ、苦しそうな表情を浮かべた。
これからもこんな苦しまなければならないのか。そう考えるだけで狂ってしまいそうだった。それでも伊原は絶対に死にたいとは思わない。その理由は伊原のみが知る。
後ろから、誰かが伊原の背中を擦る。伊原がビックリしながら振り向くと、何故かびしょ濡れのマミが心配そうな顔をしていた。手には魚が握られていた。
「ゲロってたけど、大丈夫?」
「ほっといてぐで……」
マミが隣りに体育座りになる。
「マミ、やりすぎちゃったみたいだね」
「自覚できたんだ」
「まあ、死んで当たり前の人間だったから別にいいよね?」
ニヘラと笑いながら、マミが立ち上がった。
「……」
伊原は曖昧な表情になり、口を金魚のようにぱくぱくとさせた。
安全をとるか、心の平安をとるか、
「伊原、一応言っとくけど……」
マミが思い出したように笑顔を作り、口を開いた。
「お別れとか言ったら、殺すからね」
「えっ」
くるりっ、とマミは一回ターンをした。
「よーし、お魚食べて精力つけようか!マミ、さっき面白い場所見つけたから、これ食べたら行ってみようよ!」
伊原は口元をひくつかせた。
- Re: 最後の審判 キャラクター募集中! ( No.14 )
- 日時: 2011/06/21 18:26
- 名前: ショウタロー ◆mOYvzARW6k (ID: IPhHYvUG)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
マミが手早く火を熾し、魚の調理を始めた。
出来たのは、魚に木の枝を突き刺して、調味料も何もつけずただ焼いただけの簡単な物だった。
「いっただっきまーす!」
ガツガツとマミが魚に齧り付いた。
とにかく気分が悪く、何も食べたくないと思っていた伊原だったが、よく食べるマミを見ていて、やはり空腹には耐え切れず、一口、魚に齧りついた。すると、伊原は堰が切れたようにガツガツと魚に齧りつき始めた。空腹は最高のスパイスとはまさにこの事で、しまいには伊原とマミが魚を取り合う事態にまで発展した。
食事を終えて満腹になった伊原は、ふと、マミに違和感を感じた。正確には、マミの格好に。
「マミ、その服……」
マミの服が昨日着ていたのと違っていた。たしかマミは昨日、キャミソールにホットパンツとラフな格好をしていたはずだったが、今着ているのはノースリーブの、妙に可愛らしいレースがついた紺色のワンピースと、白いボレロのカーディガン。明らかに違う。それにサイズが少し大きい。その上、やたら動きまわるマミには向いていない服装だった。
「やっぱ似合わない?」
「いやいや、そういう問題じゃなくて……」
思い出した。マミが今着ているのは美鶴の服だ。
「マ、マミ。お前一体美鶴さんに一体何をした」
口元をこれほどにないくらいにひくつかせながら、伊原は尋ねた。マミは悪びれる様子もなく、右手をピースにしながら、
「失礼な事を言ったから、ひん剥いて川に投げたよ」
「エエエエエエェェェェェエエエエェエエエエエエェッ!?」
伊原はマミの両肩を掴み、ゆさゆさと上下に揺らした。
「お前って奴は!お前って奴は!」
マミは一回溜息を吐くと、
「うるっせぇよ」
そう言いながら、マミは伊原の口の中に人差し指と中指を突っ込んだ。
「ふっぐぉっ!!」
「伊原はマミのやる事なす事になんでいちいち口出しするかな……黙ってマミについて来いって感じなんだけど」
「いふぁっ!うっぐぁい!」
マミは伊原の口から指を抜き、服で付着した唾液を拭いた。
「よし、スッキリした!じゃあ、伊原!探検に行こうよ!すっごく面白そうな場所があったんだ!」
マミは伊原の腕を掴み、ぐいぐいと引っ張った。
「い、嫌だ!そういうのって嫌だ!また奴等が現れたらどうするんだよ!」
「あーあー、聞こえない聞こえない。黙ってマミについてくる!」