複雑・ファジー小説
- Re: 白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜 ( No.12 )
- 日時: 2011/06/22 21:14
- 名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「さぁ、どうぞ」
コトッとアップルティーを入れたカップを私の目の前に置いてくれた。
「あ、ありがとう」
少しドキドキしながらも私はカップの取っ手に手をやり、カップに口を付ける。
フワッと優しいティーの甘味が口の中に流れ込む。
とても美味しい紅茶、淹れ方も凄く上手い。
私の方をジッと見ていたグーレンは少しドキドキしていたようで、焦ったような声で聞く。
「ど、どうかな? 一応、淹れ方とか気を付けていたんだけど…」
「大丈夫、美味しいわ。…淹れ方も上手いのね」
「そ、そう?」
「良かった〜…」と凄く安心したようにグーレンは言う。
本当に彼の淹れ方は上手い。
何故こんなに褒めるかと言うと…その技術を私に教えて欲しいほどに凄く良かったから。
彼は安心した後、私の向かいに腰をかける。
「えっと…白ずきんちゃんだよね。ようこそ「Music box 双子屋」へ。この「Music box 双子屋」はさっきも言った通り【いつ・何処で・誰から貰って・いつ壊れたか】をお客様に教えてもらいオルゴールを修理する専門店なんだ。ここまでは大丈夫だよね?」
私は彼の問いにコクンと頷く。
「じゃあ、早速だけれども…まず君のオルゴールを見せてくれる?」
「あ、うん」
少し大きなフルーツバスケットの中を少しゴソゴソと探して、取り出し見せる。
「これ…だけど」
「どれ?」と彼にオルゴールを渡して見せる。
「意外に丈夫だね、外の方は…そして装飾品だけど—— !」
彼は一瞬驚いた顔をする。
そして、私を一瞬見てこう言った。
「ねぇ、君のこのオルゴール…—— 『赤ずきんちゃん』のオルゴールでしょ?」
「—— ?赤…ずきんちゃん…?」
「あれ?」と私は思った。
『赤ずきんちゃん』と言えば、私のお母さんの通称の名前。
グーレンは私の反応を見て言う。
「うん、赤ずきんちゃんだよこのオルゴールのやつは。…もしかして、白ずきんちゃん—— 赤ずきんちゃんの娘さん?」
「え…あ、あの…」
聞かれても私は知らない。
確かにお母さんは6年前まで『赤ずきんちゃん』と呼ばれている。
だけど、何故—— グーレンは知っているの?
グーレンは私をジッと見て何か続きを言おうとしたその時、バンッと扉が強く開かれた音が聞こえた。
その音の先の方に私とグーレンは反応して見てみると——。
「—— オイ、これも忘れてっぞグーレン」
結構箱を持って顔の見えない人がそう言った。
グーレンはハッと我に帰って返す。
「に、兄さん…それは必要ないって言ったでしょ !?」
「え…兄さん?」
その兄さんらしき人は「はぁ? …聞いてねぇし」と呟いて、足元に箱を置いた。
その箱を置いた後、私は凄くギョッとしてしまった。
兄さんもグーレンと瓜二つでそっくり。
髪形も髪色も顔立ちも服装も似ているけれど、瞳の色はバイオレッドな色で首にオレンジのスカーフを巻いてしかも言葉遣いが違う。
そんな私の視線に気が付いたのか、少し焦っている。
「ゲッ、お客さん来ていたのかよ !?」
「兄さん !!その言葉はお客さんに対して失礼だろ !」
「だってよぅ…」と少し語尾がごにょごにょとする。
「ハァ…まったく…。ゴメンね、白ずきんちゃん。急に来て白ずきんちゃんに対して「ゲッ」って失礼な言葉をした兄を許してね」
「あ、だ、大丈夫です。私、気にしないので…」
急に振られて少しドキッとしたがすぐに返した。
その時、ピクンとグーレンの兄が反応する。
「…グーレン、そいつ『名持ち』なのか?」
兄の言葉に少しイラッと来たのか、グーレンは軽くきれる。
「兄さん !何回言ったらわかるのさ、相手はお客さんなんだ !お客さんに対して本当に失礼だよ…。というか、これ以上—— 僕を怒らせないでくれる?」
「ヒッ—— !」
一瞬にしてグーレンの兄は即座に青い顔と恐怖に怯える。
ピキッと何か亀裂が入ったような音が私にも聞こえた。
もちろん、私はこの時に初めて—— グーレンを怒らせてはいけないと悟った。
グーレンの兄は怯えながらもグーレンに対し謝る。
「わ、わわ悪かったよぅぅぅっ !!だ、だからそんなに怒るな !俺が悪かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ !!」
そして、グーレンの兄は冷や汗をかきながら土下座した。
その姿を見てグーレンは一瞬怖い顔をしたけれど、すぐににっこり。
「そうそう、謝れればいいんだよ兄さん」
…もしかして、一番怖くて危ないのは—— グーレンなのかもしれない。
第8話「兄と弟の立場」