複雑・ファジー小説
- Re: 白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜 ( No.19 )
- 日時: 2011/07/03 15:13
- 名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「えっと…ここら辺かな?」
グーレンの言った通り来て周りを見るとすぐ見つけれた。
看板も出ており【宿屋 眠りの宿】と書いてあってドアを引く。
カランカラン、とドアの鈴が鳴ったのを聴いてカウンターの人がニコッと笑って私に言った。
「ようこそ、お客様。【宿屋 眠りの宿】に来てくださってありがとうございます」
その言葉に私は少し「あ、はい」と言った。
カウンターの人は私をジッと見た後、続けて言う。
「お泊りでしょうか? ならば、ここに部屋の種類があるのですが…」
スッとパンフレッドのような物を私に渡してくれた。
「—— わぁ… !」
写真も貼っており凄く綺麗で部屋の種類が豊富である。
少しマジマジと見ていたけれども我に帰ってカウンターの人に私は言う。
「あ、あの…。私、“双子屋の友達”なのですけれど…」
カウンターの人はその言葉を聞いて「まぁ… !そうだったのですか、ちょっと待ってくださいね」と言って近くの黒電話で何処かへ掛ける。
「オーナー、“双子屋のお友達”さんが…」とか色々話している間私は立って待っていた。
それにしても凄く綺麗なピンクと白のコントラストで鮮やかな宿屋に多分泊まれる事は夢にも思っていなかった。
ガチャン、と黒電話を置く音が鳴り響いた後にカウンターの人がニコッと笑って言った。
「オーナーがお客様にお会いしたいと言っておりました」
「え…? わ、私が泊まる…部屋は?」
そう言うとカウンターの人は「お会いした後少しお話しをしてから泊まらせると言っておりましたよ」と言い返ってきた。
どうして、私に会いたいのだろう…。
私の心は不安な気持ちでいっぱいになる。
「お客様、着いて来て下さいまし」
「え、あ、はい…」
私はカウンターの人の後に続いて行った。
———
同刻、血の濡れた様な屋敷。
その屋敷は薄気味悪く、誰も近寄らないような場所。
「—— お呼びですか主人」
「…遅かったな、メトロ」
そのような屋敷のある部屋で彼—— 『チャシャ猫』の猫色メトロの姿があった。
「主人」と呼ばれた彼はメトロよりも若い男でメトロをキツく鋭い目で見る。
メトロは深々く頭を下げて「申し訳ありません…」と言った。
「主人」と呼ばれた彼は行き成り唐突に—— メトロを蹴りつける。
「—— っ !!」
メトロは行き成りの痛みに顔を歪めた。
その姿に「主人」と呼ばれた彼はクスクスと笑う。
「…本当に遅くて使えない猫だな。だが、俺の元にいる限りはボロボロ雑巾のように扱ってやる。恨むんだったら—— お前の運命に恨めよ」
「…はい」
メトロは反撃も何も無くただ彼に仕えるだけ。
彼を殴ろうとも彼を殺そうとも今の彼には—— そういう感情は無い。
例え前の「主人」よりも下種で痛めつける野郎だとしてもメトロは何もする事無く従うだけ。
そのメトロの「主人」と呼ばれる彼は少し悪戯っぽい顔をした。
「そう言えば、お前『白ずきんちゃん』って言うのに会っているだろ?」
「……はい」
「主人」と呼ばれた彼は「やはりか」と言って少しにやっと笑った後、メトロを見て言う。
「じゃあ、命令を出しておこうか俺の下僕。俺はね、その『白ずきんちゃん』って言う奴に会いたい。凄く幸せな奴なんだろ、だったら俺の手で—— その子の人生、潰すから。だからこの屋敷に連れておいで」
凄く満面の笑みを見る。
メトロはその姿を見て凄く逃げ出したいが逃げれない。
それは彼の運命でもあるから——。
「あ、そうそう」と「主人」と呼ばれた彼は何かを思い出してメトロの耳に呟いた。
「反抗するなら腕とか足とか斬りつけて連れて来てよ。じゃないと俺の出番が無いからさ」
「…はい、分りました」
泣きたい、苦しい、痛い、嫌だ——。
そんな感情がメトロの心の中に徐々に沸いて来る。
だけどもメトロは…運命には逃れられない哀れな猫だ。
第12話「同刻」