複雑・ファジー小説

Re: 白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜 ( No.2 )
日時: 2011/06/12 15:22
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

誰かが、私の事が嫌いでも私は頑張るんだ。


だってお母さんが言っていたから。


「人は誰にだって嫌いになると思うわ。だけどね、頑張る人を見続ける人は嫌いにならないから」


頭を撫でて私にいつも言っている言葉。


いつも一人ぼっちな私を気遣っている言葉。


私はその言葉とお母さんの温もりが少し恥ずかしくて、ちょっと遠慮気味。


それでもお母さんは綺麗な人。


私はそんなお母さんの子供になれて嬉しい。


だから、私は頑張るんだ。


お母さんも、小さい頃は嫌われていたんだって。


だけど、お母さんも頑張って認めてもらえた。


だから、きっと私も認めてもらえるよね。


頑張って頑張って…友達も何もかも作るから。


———

「あんた、本当に目敏いんだけど!」
「そうそう、何が『白ずきんちゃん』よ! 可愛い通称だからと言ってあまり気持ち上がりすぎるんじゃないの?」
あぁ、今日も私は“嫌われている”。
黙って聞いている私に、二人の女の子が少し舌打ちをする。
「アンタねぇ、何か言いなさいよ!!」
「しかも、可愛くなくブスでのろまで祟りのある白い髪なんだから祟りの子らしく私達を呪って見せなさいよ」
「アハハハ!」と彼女達は笑う。
けども、私は何も言わずただ必死に涙を堪えていた。
もう溢れそうな涙、だけど弱音を吐いちゃいけない。
吐いちゃったら…私の努力が無駄になってしまう…。
「ねぇ、なんか言えって言っているでしょうが!!」
「——!!」
片方が私を殴ろうと片腕を上げ私の顔へと来る。
私は目をつぶって衝撃を待っていたが—— 来ない。
バッと目を開くと、その子の腕に…傷が一本入って血がポタッと落ちた。
「キャ、痛いっ!!」
「ほ、本当に祟りの子だわ!!」
二人とも青い顔をした。
「あ、あの…私はっ…」
「私はやっていない」と言う前に、二人ともこっちを見て怖い顔をして言った。
「やっぱりアンタ…—— 生きる意味が無いのよ! アンタなんか、亡霊で死神で祟り子なんだから!!」
「っ——」
二人とも青い顔をして私を置いて行った。
あぁ、まただ。
また、よく分らないけれども私に危機が来ると何故かあの片方の子のように…—— 一本の傷を付けてしまう。
「…私は…生きていいのかな…?」
もう、どうだっていい。
頑張っても頑張っても…私はまた“嫌われてしまった”。
少し大きいフルーツバスケットを持って私はその場から立ち去った。
その場所にはもう居たくなかったから、だから立ち去った。
「…お母さんになんて言えば、いいのかな」
一筋だけ、私の頬に涙が一筋落ちた。

———

「ハァ…また虐められてたから助けたのに。何で彼女は泣くのかな〜」
木上で座っている猫のようなモチーフの服装で尻尾や猫耳が付いた男はそう言った。
彼が見つめているのは、少し大きいフルーツバスケットを持った彼女。
いつも虐められ、嫌われて、それでも頑張り屋。
そんな彼女をいつも彼は見ていた。
そんな彼は気配に気付き、拳銃を構えだす。
「誰かな、今忙しいんだけど?」
「—— 忙しいと言っても彼女を守っている事はどう言う事だ? チャシャ猫?」
ライフル銃を持ち、拳銃を構えている彼に対しそう違う彼は言った。
「なぁんだ、帽子屋さんじゃないか〜」
チャシャ猫と呼ばれた男は少しニッと笑う。
帽子屋と呼ばれた男は真剣な眼差しでチャシャ猫と呼ばれた男を見る。
「…チャシャ猫、最近おかしいと思ったが—— あんな小さな女を何故守っている?」
「…何々? もしかして帽子屋さん—— 俺に嫉妬?」
「オイ、それ以上言ったら尻尾ひきちg「ああああああああっ!! ごめんなさい!! 嘘嘘、冗談冗談!!」…ならいい」
ふぅ、とチャシャ猫と呼ばれた男は疲れたため息をする。
「悪かったよ、帽子屋さん。だから、そのライフル銃しまってくれない?」
「…理由を話してくれたらな」
「話す、話すからしまってよ」
「……」
スッと帽子屋と呼ばれた男はライフル銃を入れるケースにしまう。
チャシャ猫と呼ばれた男は少し安心したため息をした。
「で、チャシャ猫。さっきも言ったが…何故あんな小さな女を守るんだ?」
「う〜ん…。俺も良く分らないけれど、彼女—— 俺らの世界の余所者に適合するんじゃないかと思って?」
「余所者…。フン、なるほどな」
帽子屋と呼ばれた男は少し納得した様子だ。
「確かに最近、住人達がまた悩みが多くなっているからな」
「うんうん、そう言うこと。ちなみに彼女…なんだっけ…16年前の『赤ずきんちゃん』に似ているからさ」
「—— ! …何処が似ているって言うんだ。あんな明るい『赤ずきん』とあの小さな女と」
ニコッとチャシャ猫と呼ばれた男は、帽子屋と呼ばれた男に笑った。

「え? だって彼女も『赤ずきんちゃん』も—— 頑張り屋で優しいじゃん?」

ワンダーランドの住人は、今日も何処かで待っている。


悩みがあれば解決して欲しい。


だから、君を求めているんだ。


今回は、そう。


君を求めているんだよ——『白ずきんちゃん』。


君は優しくて努力家で、『赤ずきんちゃん』みたいに笑顔が綺麗で…。


だからこそ、ワンダーランドの住人は君を待っているんだ。


この世界は君を求めていない。


なら、俺達が君を求めよう。


君は俺達にとって必要なんだ。


それ位それ位、君を待っている。


そして俺は—— 君の事が好きなんだろうね。


前の公爵夫人のように、君は優しいから。


だから、君を失いたくないから君の邪魔者は—— 皆消してあげる。


君は笑って欲しい、泣かないで。


だからこそ、俺やワンダーランドの住人は。


「—— さぁ、始めようね白ずきんちゃん。君の事をワンダーランドは求めているから」


君を守りたくて、君をもっと知りたくて。


愛しいほどに、君を—— 待って求めているから。



        第1話「始まり」