複雑・ファジー小説
- Re: 白ずきんちゃんと。〜ワンダ ( No.3 )
- 日時: 2011/06/13 17:11
- 名前: 龍宮ココロ (ID: kDmOxrMt)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
お母さんは優しくて温かくて、私はいつも尊敬している。
——“「君は、生きててもいいのって思っているのに?」”——
頑張ってやる分、皆が認めてくれるって私も信じている。
——“「君の可哀想な姿は、俺は見ていられないよ」”——
たとえこの髪が原因でも、私が原因でも分る人は絶対いる。
——“「突き飛ばされて、絶望の淵にいたとしても誰も助けてくれないよ」”——
泣かないで我慢して、でも最近は凄く泣きたい。
——“「我慢しないで? 大丈夫、俺がいるから」”——
受け止めてくれない、一緒に笑えない。
——“「なら、俺が君をいつでも笑顔にしてあげる」”——
私は…一人ぼっちなのかな。
——“「いいや、君は一人じゃないさ」”——
———
ハッと私は目が覚めた。
どうやらもう朝のようで、カーテンの隙間から光の線が私の部屋を起こすように入っていた。
少し私は汗をかいていたらしく、ちょっとパジャマがぬれていた。
「あの声は…誰の声?」
夢に出てきた私の本当の声と重なって、聞こえた水のように透き通るあの声。
まるで水の底にいた私に手を差し伸べていたような声だった。
「でも、聞いたことの無い声だなぁ…」
誰だったんだろうか、あの声の主は。
でも、いつも見ている夢よりも何だか—— お母さんのように優しくて。
少しそう感傷に浸った後、私はいつもの通りの現実に戻って行った。
———
「おはよう、お母さん」
そう私が言うと、キッチンで朝食を作っている私のお母さんは私の声に反応していつも通りの綺麗な顔立ちでにっこり笑った。
「あら、おはようハクちゃん。今日は少し遅く起きたわね」
「あれ、そうなの?」
「そうよ〜、いつもなら5分前に起きるのに珍しいわね」
「フフフ」と綺麗な微笑で私の事で少し笑った。
私のお母さんの名前は「赤島朱音」。
お母さんは16年前までその綺麗な顔立ちと今は被っていないけど赤い頭巾を被っていて昔は『赤ずきんちゃん』と呼ばれていたらしい。
けど、私はお母さんの子供ながら背も低いし可愛くない。
時々、お母さんと私は似つかないからと思って自分が嫌いだったけれどお母さんがいつも言うあの言葉に励まされてきた。
「お母さん、今日の予定は?」
「うーん…そうねぇ…。今日から私ね、3日間仕事で出張なのよ」
「え、そうなの?」
少し辛そうな顔でお母さんは続けて言う。
「ごめんね、ハクちゃん。仕事が終わったらまた休みをもらえるから、ね?」
「うん、分った」
「よしよし、いい子ね」とお母さんはそう言って私の頭を撫でる。
その温もりが、私は大好きだ。
「はいはい、まずこれまでにして早く朝食を食べましょうね」
にっこりと綺麗な顔で私に言った。
———
お母さんが家を出た後、私は近くの森で毎朝日課にしている動物たちへの餌やりをしに行っていた。
この時間が一番楽しくて、小さい頃から動物といつも触れ合っていた。
森の山道ではいつも、風の優しい流れに乗せて鳥の声や小さな川の音が響く。
その響きに合わせて、木が少し揺れて木陰をいろんな形に形作っていた。
そんな森の中、いつも動物たちが集まる場所に行くと動物たちがこちらに気付いて待っていた。
「はいはい、あげるね」
この時間がとっても貴重で、とっても和む。
こんな時間が続けばいいなと私はそう思うけれども—— 現実に引き戻される。
そう思っていた瞬間。
「やっぱり、ここにいるんだね毎朝。—— 『白ずきんちゃん』」
「—— !!」
後ろから声がしたので振り返ったが—— 誰もいない。
「…あれ? さっき…声が」
「—— うん、言ったよ俺が」
「—— キャッ!!」
反対に振り返るとすぐに近くに顔があってビックリして私は尻餅をついた。
「だ…—— 誰?」
「あ〜…ごめんね、驚かせちゃったね白ずきんちゃん」
「アハハハ…」と声の主の彼は苦笑した。
そしてから「立てる?」と手を差し出すため恐る恐る手を伸ばすとグイッと立たせてもらった。
「俺さ、悪戯大好きだから本当にごめんね? あ、俺は通称『チャシャ猫』って呼ばれている「猫色メトロ」って言うから」
「チャシャ…猫…」
今見れば確かに服装のデザインやらまったくのチャシャ猫。
だけども、とても綺麗な顔立ち。
「うん。そして俺は君を知っているよ—— 嫌われていることも」
「—— !!」
「言わないで」と言う強い言葉が心に浮かんだ。
それでも、彼は止めない。
「昨日も君の事を侮辱していたよねあの二人。白ずきんちゃんの事を侮辱するなんて本当にイラッとするね」
私は聞いている内にドンドンと—— 怒りが上がる。
「だから、彼女達に少し痛めつけて—— !」
彼の言葉を遮るように、パァァァッンと鳴り響く。
そう、私は珍しく—— 人の頬を叩いた。
私の息は少し上がっていた。
「…最低。初めてあった人に対して知った振りして言わないでよ! 貴方、しかもいつも私の危険が来ると相手に傷を付けるでしょう! 止めてよ、じゃないと——」
「じゃあ、彼女達は君に振り向くと思っているの?」
「っ——」
ピシャリとひんやりした鋭い言葉が突き刺さった。
叩かれた彼、メトロは真剣な眼差しで私を見るため私はすぐに目を逸らしてしまう。
「…私はっ、ただ頑張りが」
「それで振り向いてくれる? いつも馬鹿にされていて泣いているじゃないか—— 君は」
「……」
返す言葉が無い、いや返せない。
彼の言うとおり、私は馬鹿にされている。
「…俺は君が泣いているから助けているんだ、君は優しいからとっても。だけど、俺の行動は君の心を深く傷つけたね」
「ごめんね」と苦笑した顔で彼は言った。
その言葉に私は涙が溢れる。
だけど耐え切る、泣く姿は滑稽だから。
「…貴方は私に会ってどうしたいの?」
「あ、やっぱりバレてたか」
少し苦笑して彼はヘラッとする。
「こんなことを話す為に来たんじゃなかったな、本当は—— 君に“ワンダーランド”の余所者になってほしかったんだ」
「どう言う…事?」
「余所者って何?」と心の奥底が響いていく。
少し動揺している私を見て彼は言った。
「君は優しく頑張り屋、だからこそ—— “ワンダーランド”の住人たちの悩みを聞いて欲しいから君を連れて行こうと思ったんだ」
第2話「チャシャ猫」
