複雑・ファジー小説

Re: 白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜 ( No.5 )
日時: 2011/06/16 13:48
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

「ん——」
急に明るい所に出て少し眩しい。
少し目が慣れなかったけれども、数秒くらいいると慣れてきた。
「わぁ…」
慣れてきた後、周りを見ると—— 綺麗な花畑。
いろんな花がきれいに鮮やかに咲いていて少し圧倒されて声が出せない。
それ位、とても綺麗だった。
「本当に…私って穴に落ちたのかな…」
圧倒するほどの綺麗な花畑を目の前に、そう呟いてからハッと我に帰った。
「私、本当に“ワンダーランド”に来ているの…?」
現実の世界とあまり変わりないような感じ。
自分の服装など確認しても綺麗なままである。
確認をして少し花畑に引き寄せられるような感覚を感じたその時——。

『ねぇ、誰?』
「—— !!」

ヒヤリとした冷静な声に少しビクッと私は震えた。
すぐに声のした方へ目をやると、青い髪で金と銀のオッドアイをして眼鏡を掛けている男がいた。
メトロとは性格が十分反対だとすぐに分る。
男はジッと私を見つめ、また言葉を言う。
『知らない女…ねぇ、君は—— 誰だ?』
「え、ええっと…わ、私は…」
あまりの冷たい声にその場から動けない。
まるで私は—— 金縛りにあったように。
そんな私をジッと見つめる男の顔は、メトロと同じように綺麗だが表情は欠けていて笑おうとも怒ろうともしないただ、私を見つめ続けるだけで冷酷なような顔。
『勝手に黙らないでくれる? イライラするんだけど。女って何でそうなの? 凄く—— 殺したくなる』
「—— キャッ!!」
男は行き成りナイフを出し私の首を狙ってきたけれども、私は何故か分らないけれど素早く避けた。
『…? 何で、君は死なない? 避けれるはずも、ないのに?』
その言葉に私は勇気を出して返した。
「わ、私だって知らないよ!! それよりも、急に何!? 私を殺す理由なんてあるの、貴方は!?」
私のその言葉を聞いた男は少し驚いた表情をした。
『殺す理由? ある訳無いよ、ただムカついたから殺すだけさ。まず第一に君を知らない。だからイラつくから殺す。第二に君は僕の質問に答えなかった。だからイラつくから殺す。第三にさっきの答えになっていない事を言ったから。だから—— 今殺す』
「—— っ!」
理由にならないよ、そんな事で。
そう思う気持がいっぱいだったけれど、男はすぐ目の前に迫っていてナイフが獲物を捕らえたいように光るのが見える。
「あぁ…私は死ぬの?」と思って目をつぶって痛みを待っていたが—— 痛みは来なかった。
逆に誰かが私とその男の間に入った気配が感じられた。
少しずつ目を開けると、そこにいたのは。

「やぁやぁ、血の気が盛んだねぇ——鏡さん?」
「——メト…ロ…?」

見慣れた服装に少し悪戯っぽい声、まさしくメトロ本人。
殺す行為を止められた男は、少し舌打ちをする。
『何処から来たのさ、君。邪魔しないでよ、知らない女は削除しないとさぁ』
その言葉を聞いて、メトロ自身少しクスッと笑った。
「おやおや、困ったなぁ。鏡さんは余所者とこの国の住人の見比べ方を知らないのかな?」
『余所者…? こんな女が…?』
真面目な顔でも少し顔が凍りついたようだ。
私をジッと見るが、耐えて私は見返す。
その後、襲い掛かった男はスッと腕を下ろした。
『何だ、余所者か。それだったら知らないはずだね—— 殺したいけど』
「怖いなぁ、鏡さん。女の子には優しくしなきゃいけないよ」
「ね?」とニコッと笑って言うメトロ。
私は少し間を開けて小さく頷く。
本当に襲い掛かってきた男はとてつもなく怖い。
メトロは私の方を見て口を開く。
「ごめんね、彼はこの世界の番人の『鏡』こと「鏡陸ソト」って言うんだよ。彼ね、血の気が多いからすぐに質問とかは返した方が身のためだから」
『フン、君には言われたくない』
ツン、とすぐに即刻言われた。
少しメトロはその仕草に苦笑するけれど…。
「……怖い…な」
小さい声でそう呟いた。
本当に、“ワンダーランド”って大丈夫なの?


            第4話「鏡」