複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.106 )
- 日時: 2011/06/30 18:20
- 名前: コーダ (ID: dfg2.pM/)
宿屋を、自分達の貸し切りにして、自由が効いた5人。
その分、料金は高くなったが、長い眼で見ると黒字になるだろう。
蓮花、佳恵、楓、樅霞は、東牙に呼ばれ、エントランス横にある椅子でくつろいでいた。
真ん中にはテーブルがあり、開放的な話し合いには、丁度良い場所でもある。
しかし、言い出しっぺの東牙はなぜかその場には居なく、部屋にこもっていた。
あの男の事だろう、何か準備をしていると4人はすぐに理解して、文句は誰も言わず、軽い雑談をしながらただただ、暇をつぶす。
そして、ようやく上から、部屋の施錠が開く音が聴こえ、4人は一斉にそちらを見る。
A3版の紙を、片手に持っている東牙が、黙ってこちらに向かってきてなにやら難しそうな顔をしていた。
「すまない。少し準備が掛かった……。」
東牙は、一言4人に呟き、テーブルの上に紙を広げて乗せる。
すると楓が「これは……もしかして、城の空中から見た図か?」と、一言東牙に言う。
「そうだ、楓の言う通り、城の空中図だ……。」
「ほう……なかなか分かりやすいな。」
メガネをカチャッと上げて、樅霞は図を見て一言呟く。
簡単だが、とても分かりやすく、それぞれの門の場所まで書かれていたという。
「でも、いままで普通に侵入できたのにどうしてこれを?」
蓮花は、少々疑問気に、東牙へ質問する。
いままで普通に侵入できたのに、どうしてこれを出したのかという事に東牙は「そろそろ、敵も本気を出してくるかと思ってな……むしろおかしいだろ?いままで普通に侵入できたことが……。」と、蓮花が納得いく答えを言った。
「確かにそうですわ……侵入されないためには、まず外が重要ですわよね……。」
「なるほど……これから外でも、強敵が来ると睨んだんだな。」
佳恵と楓は、東牙の考えがよく分かったようで、こくこくと頷いていた。
「見ての通り、城の内部へ行くには第1、2、3の門をくぐる必要がある。城を中心に、第1を南、第2を北、第3を南……1番長い道のりに、なっているということだ……。」
東牙は紙に手を置いて、ただただ説明する。
ここまでなら、4人はなんとか理解はできたという。
「警備が堅いのは、もちろん門の付近。最低、警備が堅い場所を3回通る事になる……しかも、1つ門を通った後に、右と左どちらへ行くかによって、戦いも変わるだろうな……。」
「城を中心に、ドーナツが3個置かれている構造は嫌ね〜……飛び越えることはほぼ不可能……さて、どうするのかしら?」
東牙の説明を、やや分かりやすく蓮花が言う。
これをするかしないかでかなり違うらしい。
「そこで俺は考えた。外は絶対に、5人一緒に動いて行動する……別れて行動するのも良いが、それだと門で落ち合う時にバラつきが生じる。それを防ぐために、一緒に行動しようと思うのだがどうだ?」
「うふふ……東牙のたてる作戦は間違いなしですわ。私は賛成します。」
「私も、佳恵に1票だな。」
「逆に、それ以上良い作戦なんて私にはたてられないからな……賛成しよう。」
「私は。あんたの考えに黙って賛成するだけだわ。」
東牙の作戦は、無事に皆から賛成を得られた。
これをするかしないかによって、城の侵入が簡単になったり難しくなったりする事は、東牙も分かっていた。
次に東牙は、紙を裏にして、城の内部の図を皆に見せたが、中途半端な所で通路が切られており、4人はポカンとしてしまった。
すると「悪いが、俺の分かる城の内部はここまでだ……後は、良く分からん……。」と、東牙は4人に謝ったという。
「いえいえ……東牙は謝らなくても良いですわ……ここまでしてもらって、むしろこちらが謝りたいですわ……。」
佳恵は少し頭を下げて東牙に一言呟く。
それにつられ楓と樅霞も、頭を下げた。
「じゃあ、城の中に入ったら、もうアドリブって事?」
「そうだ……臨機応変に処理していくしかない……とりあえず、明日の夜に決行する……。」
蓮花の一言に、東牙はそう呟く。
これを境に、会議は一旦幕を閉じた。
しかし、皆の顔は会議を始める前よりだいぶ明るくなったという。
やはり、1回城に入っている東牙の、活動、反省、計画(ドゥ・シー・プラン)がとても効いているのかもしれない。