複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.112 )
日時: 2011/07/02 20:28
名前: コーダ (ID: H0XozSVW)

「では、ミーティングを終了します。」

 空全体が、曇りがかって、綺麗な星空が見えない夜。
 城の最上階では、ミーティングが終わる合図が聴こえて来た。
 特に大事なことはなく、ただ夜は油断をするなと警告するだけのものだった。
 主にミーティングでは、楠美と矩樫の2人が騒がしかったという。
 椅子から立ち上がり、そのまま静かに座っていた狼鍍に近づく刑事。
 昼に、会って会話ができなかったので、今ここでするという考えだった。

 そして、刑事が「少し良いか?」と、一言言うと狼鍍は「……遠慮する。」と、断られてしまった。
 すると横に居た楠美が「やめた方が良いですわよ?狼鍍は無口だから、会話は好みませんのよ。」と、忠告する。
 これに諺瑚は「そうか……それは失礼した……。」と、謝罪をして少し距離を置いた。

「極端に無口ではない……大事なことなら話しに参加はする……。」

 だがこの言葉を聴いていそうな、人は誰も居なかった。
 狼鍍は「はぁ……」と、浅い溜息をして、ささっとこの部屋から出て行った。

「……実力は確かなんですけどね。狼鍍は。」
「だけどあいつ、本性出したらの話しだろ?」
「まぁ、そうですけどね。」
「どっかに、狼鍍をワクワクさせる獣人は居ないもんかね〜。」

 何気なく矩樫と刻杜が話していた事を聴いていた諺瑚。
 するとふと「東牙の所に獣人が居たな……。」と、小さく呟く。

「ん〜?なんか良いこと聴いちゃったな〜。」

 姫狗は、トランプをシャッフルしながら刑事にすり寄ってきた。
 その顔は、胡散臭いという言葉が似合っており、非常に怖かった。

「なんだ姫狗……聴いていたのか?」
「ええぇ……それって楓の事ねぇ〜……ふふ、元鞘嘉多の四天王と言えば、狼鍍の闘争心が沸くかもね〜……。」

 怪しい笑顔になりながら、姫狗はトランプの1番上のカードを引き「サターンの審判。」と、また意味不明なことを呟き、次に「これは面白くなりそうね。」と、刑事に言う。

「……思ったが、その行為はなんだ?」
「う〜ん?別にぃ、ただの占いよぉ〜。」

 姫狗はすっとトランプを自分の懐に入れて、一言刑事に言う。
 あまり腑に落ちない表情で諺瑚は「そうか……。」と、了解した。

「疑うのは別にかまわないわよ〜?だって私は、トリックスター。怪しまれてこその存在だからねぇ〜。」

 この言葉に刻杜は「さすがですな。」と、感心したらしい。続いて楠美も「あ〜ら。刻杜が褒めるなんて明日は雪ですわね。おーほっほっほ!」と、高笑いをした。
 一方、こんな雰囲気なのに夜尭と老人は、別の話をしていたという。

「やはり鞘嘉多の復旧は無理ですぞ……この際、鞘嘉多家を無くすしかないですな。」
「そうですか……後継者は居ない……あれもこれも、全部裏切った東牙のせいですね……。」

 かなり険悪なムードを出す2人。
 どうやら裏切り者の東牙について話をしていたらしい。

「誰にも干渉されないという言い伝えだが、裏では高仲の助けを借りたという事を、教えなければ東牙が悪人ですぞ?」
「そうですね。」

 色々とおかしい気がする会話。
 しかし2人は、何事もなく話を進めていた。

「しかし、鞘嘉多家を無くす前に、早い所裏切り者を始末したいの〜。」
「任せてください。城の将軍達が、跡形もなく消してくれますよ……。」

 このセリフを境に、2人の会話はすっと終わり、何事もなかったかのような表情をして周りを見た。
 特に違和感だと思っている人は居なく、その証拠として人目を気にせずに盛り上がっていたからだ。