複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.115 )
- 日時: 2011/07/03 14:40
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「さて。今日の見回りは終わりですね。」
「また明日も張り切っていきますか……。」
「だが、油断はしない方が良い……いつ東牙が攻め入ってくるか、わからんからなぁ。」
城の外で、雑談しながら本日の業務を終えた3人の影。
特に侵入者がなく、安心している刻杜。どうせ明日もあるのだろうと、やれやれ言っている矩樫。どんな時でも、油断はするなと断言する諺瑚。
こうして見ると、刑事は新しい環境にすぐのめり込める力がある。
現にこうして、普通の口調で話しているのだから。
「思ったんだけどよ……東牙という男は、そんなに警戒する奴なのか?」
矩樫は、やけに東牙を気にする刑事に、こんな質問をする。
すると「お前はミーティングを聴いていなかったのか?東牙以外にも、仲間が後3人いることによぉ……。」と、矩樫に言った。
「そんなこと言ってたかぁ?」
「言っていましたよ……もしかして、ずっと飛竜(ワイバーン)の事を、考えていたのでしょうか?」
刻杜のツッコミに、矩樫は「ぐっ……。」と、小さく呟き、横から刑事が「図星か……。」と、さらに追い打ちをかける。
「仕方ないだろ!?可愛いヴィラールの事を考えるのは、主人として当然だ!……オスだけどな。」
矩樫の強い主張に、刻杜は「相変わらず、矩樫らしい言葉ですね。」と、感心する。
しかし矩樫にとっては、なぜか嫌味にしか聞こえず「うるさい……。」と、拗ねてしまったという。
そしてしばらく、黙って歩いた所で城の入り口に来た3人は、諺瑚の「よし……これにて解散する……。」という言葉をきっかけに、それぞれどこかへ行ってしまった。
○
「ふぅ……ん?まだ寝ていなかったのか?」
「もうそろそろで、寝るつもりだったがな……。」
風呂上がりの樅霞が、タオルで自分の髪を乾かしながら、まだ寝ていない東牙にこう一言言う。
水を浴びた髪は、普段の髪の色よりは若干濃く見え、立派な黒髪がよく分かり、さらには風呂上がりですぐに寝るという事で、サラシはつけておらず、佳恵程ではないが、十分通用する大きい胸を、巫女服の上から揺らしていた。
全国の男性人なら、思わず目がそこにいって胸が高まる場面のはずなのに、この男は全く見ずに、手元の本を読み進めていたという。
余談だが、蓮花は10分前に自分の部屋に行き、就寝していた。
「そうか……っと、そういえば東牙に言っておくことがあったな。」
樅霞は、何か思い出したような口調で東牙に言う。
パタリ、と本を閉じ「なんだ?」と、メガネをくいっと上げて、巫女に聞く。
「何が何でも死ぬな……ただそれだけの事だ。」
チリン、カチャッ、という樅霞を表す擬音が、同時に響いた瞬間の一言だった。
あまりに露骨すぎる言葉に、かなり戸惑ったが、東牙は「分かっている。」と、巫女の瞳を凝視して言う。
「ふふ……ではまた明日。」
なぜか胡散臭いほほえみを見せて、樅霞は自分の部屋に向かったという。
しかしこんな表情を見た、東牙は全く怪しいとは思わず、むしろ神々しいと感じたらしい。
それから5分後、東牙は本を懐に閉まって、そのまま自分の部屋に向かい就寝した。
今日1日で、かなり意味深な一言を呟いて言った柊神社の巫女。
この女性がメンバーに加わったことで、さらに士気が高まったのは言うまでもない。