複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.121 )
- 日時: 2011/07/06 06:44
- 名前: コーダ (ID: KztNadal)
「………………どうした。」
刑事が不機嫌そうに、城のエントランスに入ると、突然ギャラリーの上から、誰かが声をかけてきた。
頭にはふさふさした獣みたいな耳、そして獣のような尻尾が特徴的な狼獣人。
狼鍍であった。
「狼鍍か……お前はいつもどこに居んのかわからねぇ奴だぜ……。」
刑事はそう言って、狼鍍の居るギャラリーへ向かった。
「…………城の中は落ち着かん。外で黙っているのが……1番だ。」
狼鍍の言葉に諺瑚は「おめぇ……本当に狼らしくねぇな……。」と、呟く。
すると狼鍍は、両耳をピクっと動かし「…………同族の血を見ていないからな。」と、小さく呟く。
「同族かぁ……そういえば東牙の仲間に、おめぇと同じっぽい獣人が居たぜ。」
諺瑚の言葉に狼鍍は突然「何!?」と、食いつく。
「けっ……反応すると思ったぜ。」
「獣人…………。」
狼鍍の目は突然獣らしくなり、元々赤い瞳がさらに赤くなったという。
極めつけに「グルル……。」と、狼らしい鳴き声を出していたという。
この様子に、刑事は少々危ないと感じて狼鍍との距離を置く。
「早く来い……獣人……グルル……。」
「おいおい……やべぇぞこいつ……。」
刑事はそう言って、懐から銃を出してバンッと威嚇射撃をする。
すると狼鍍ははっとした表情になり心を落ち着かせたという。
「…………すまない。つい本性を出してしまった。」
「いや……気にすんな……。」
諺瑚はそう言って、この場から逃げるように去ったという。
そして「東牙の所の獣人とおめぇ……どっちが血だらけになるんだろうなぁ……。」と、呟いていたという。
○
「ハロ〜。刑事さん。」
「ん?なんだ姫狗かぁ……。」
城の廊下で諺瑚は姫狗に出会う。
相変わらず派手な格好で、本当に戦う姿なのかと疑問に思う刑事。
「何を考えていたのかしら?」
「考えていた?俺は何も考えてねぇよ……。」
「本当に?自分は果たしてここに居て良いのかって考えていない?」
姫狗は、丁寧にトランプを切りながら刑事にそう言う。
まさかの言葉に諺瑚は「なんだ……いきなり。」と、目をそらしながら答える。
「橋鍍から若干聞いたけど、刑事さん……鞘嘉多と高仲の関係を知ったんだって?」
「まぁな……ひでぇ話だぜ……。」
この言葉を聞いた姫狗は「まっ……そういう裏事情くらいあってもおかしくないわ……今回は裏切った東牙がけっこう正しいのかもね〜。」と、呟く。
「………………。」
諺瑚は黙る。
その様子を見た姫狗は、胡散臭い笑いを浮かべながら「刑事さんも裏切るなら裏切っても良いのよぉ〜?」と、言う。
「けっ……うっせぇな……俺にだって考えはあんだよ……。」
刑事はそう言ってこの場を後にする。姫狗は丁寧に切ったトランプの1番上のカードを1枚引き「レオとタウロス……まさかの共同……?」と、ぶつぶつ呟いていた。