複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.131 )
日時: 2011/07/20 14:07
名前: コーダ (ID: yZ7ICI8F)

「な……鉈崎……警視……。」
「お、お前たち!?あの爆発に巻き込まれたのか!?」

 諺瑚の目には、爆発に巻き込まれたたくさんの部下が居たという。
 致命傷を負っている部下、なんとか軽傷で済んでいる部下など、ゴロゴロ周りに居て、その光景は諺瑚にとって、最悪という言葉しかなかったという。
 近くに居た血だらけの部下と話す諺瑚。
 しかし、出血量などから、もう助かる見込みはないと、直感的に思う諺瑚である。

「鉈崎警視……せめて……あなただけは……死なないで……くだ……。」

 部下が、諺瑚に最後の言葉を言いかけた時には、もう息をひきとっていた。

「おい!お前しっかりしやがれ!…………ちっくしょー!」

 叫んだ所で部下は戻ってこない。
 そんなこと分かっていても、つい叫んでしまう諺瑚。
 そして、刑事は部下の傍から離れ、懐から2丁の銃を取り出し左右の手に持つ。

「…………。」

 諺瑚は黙って歩く。
 その先にトラップがある危険性があるのに、ひたすら先へ進む。
 そして、ふと上空を見上げた。
 ————————————————————バサッ。
 暗い夜の空には、ワイバーンに乗った、大量の竜騎士が大空を飛んでいた。

「…………。」

 カチャ、諺瑚は銃を上空に向けて構える。
 ————————————————————バンッ!
 刑事は突然、上空に向けて銃を1発撃った。
 すると上空で、ワイバーンの悲痛な鳴き声が聞こえたという。

「けっ……。」

 ————————————————————バンッ!
 刑事はまた、1発上空に銃を撃つ。
 そしてまたワイバーンの鳴き声が聞こえた。
 なんとこの刑事は、竜騎士が乗っているワイバーンの翼に、銃を撃っていたという。
 もちろん上空の竜騎士部隊は、地上を見るが、地上も暗くて一体誰が犯人なのか分からない状況であった。
 これにより、竜騎士部隊は混乱して、縦横無尽に大空を飛んでいたという。

「俺はもう、おめぇらの行動にうんざりだぜ……。」

 ————————————————————バサッ。
 突然、諺瑚の背後に何かが地上へ降りるような音が聞こえた。

「刑事……お前、何やってんだぁ!?」

 諺瑚は黙って後ろを振り向く。
 そこにはワイバーンに乗って、とても激怒していた矩樫が居たという。

「けっ……もうおめぇらのやり方はうんざりだ……いままで我慢してきたがもう限界だ……!」

 刑事はそう言って2丁の銃を矩樫に向ける。

「はぁ!?何が何だかわかんねぇって!」

 頭の中を混乱させながら、刑事に言葉を言う矩樫。
 すると「なにが鞘嘉多の決まりだ……裏では決まりを破りまくりやがって……あまつさえ、自分たちの仲間をすぐに切り捨てる行為……おめぇは後ろを見て何も思わねぇのか!?」と、強く叫ぶ。

「後ろだと?」

 矩樫は諺瑚の言うとおり後ろを見る。
 そこには大量に倒れている刑事の部下。
 血だらけの人も居れば、もう見るも無残な姿の人も居る。

「あぁ……まぁ、仕方ないんじゃね?トラップなんてどこにあるか分からないし……運が悪かったんだろ?」

 ————————————————————バンッ!
 諺瑚は突然、矩樫に威嚇射撃をする。
 これには思わず「なんだよ!」と、叫ぶ。

「あの光景を見て運が悪いだと……?情報を一切提供せずに、仕方ねぇってか!?ふざけんじゃねぇよ!」

 ————————————————————バンッ!
 次に諺瑚は、矩樫が乗っているワイバーン、ヴィラールに向けて銃を撃つ。
 しかし、弾はワイバーンの硬い鱗に弾かれたという。

「俺のヴィラールは、そんじゃそこらのワイバーンとは鍛え方が違うぞ?そんな銃ごときじゃ傷もつかないって。」

 矩樫の言うとおり、ヴィラールはピンピンしていたという。
 むしろ、何か起こった?と、言わんばかりの雰囲気を出していた。

「けっ……腐っても竜か……。」
「へへっ……ん?なんだヴィラール?……分かった。存分に楽しんで来い!」

 矩樫はそう言って、ヴィラールの背中から降りる。
そして「今から俺の大事なヴィラールと戦ってもらうぜ!」と、諺瑚に言う。
 自分の主人が背中に居ないということは、どんなに激しい動きをしても良いということになる。
 ヴィラールは、鋭い牙を出して刑事に威嚇をする。

「なるようにしかならねぇか……。」

 諺瑚はそう言って、ヴィラールに向けて銃を乱射する。
 しかし、それでも竜の鱗に傷がつくことはなかったという。

「ヴィラール!受けてばっかりじゃだめだろ!?反撃だ!」

 矩樫の言葉に、ヴィラールは鳴く。
 そして勢いよく刑事向かって、鋭い爪を出して地面に向けて、振り落とすようにひっかこうとする。
 ————————————————————ガコンッ!
 諺瑚は、銃の銃身でヴィラールの鋭い爪を受け止めるが、一瞬のうちに銃は真っ二つになったという。
 そしてヴィラールは、地面に振り落とした爪をすぐさま右へなぎ払う。
 ————————————————————ドカッ!
 右方向になぎ払われた諺瑚は、勢いよく跳ばされる。
 そして、左肩から思いっきり城壁にぶつかる。

「ぐっ……。」

 諺瑚は右手で、自分の左肩を押さえながら地面にひざまずく。
 だが、ヴィラールはそんな状況にさらに追い打ちをかける。
 ————————————————————パシンッ!
 ヴィラールは自分の長い尻尾を、刑事に向けてなぎ払う。
 防御態勢も特にとっていなかった諺瑚は、ゴツゴツした竜の尻尾を、腹からモロに喰らって吹き飛ばされる。

「良いぜ、ヴィラール!」

 矩樫がそう言うと、ヴィラールは嬉しそうに鳴く。

「ゲホッ……ちっ……。」

 諺瑚は口から若干の血を出しながら、仰向けの状態からすっと立ち上がる。
 そして、右手を懐に突っ込んでまた違う銃を出し、ヴィラールに向けてバンッと撃つ。
 すると、ヴィラールは非常に痛そうな感じに鳴いたという。
 矩樫は思わず「ヴィラール!?」と、心配する。

「くっ……ちくしょ……。」

 なぜか諺瑚は、右手に持っていた銃を、地面に落として苦痛そうな表情をする。
 地面に落ちた銃をよく見ると、非常に大きな銃口。
 そう、この銃は両手で使わないと大きな反動に耐えられないタイプだった。
 先程諺瑚はそんな銃を片手で撃った。
 もちろん右肩に重たい反動が襲いかかるのは当然のこと。
 それを承知の上で撃ったが、思ったよりダメージが大きくてこんな表情をしていたのだ。
 だが、そのリスクと引き換えに、ヴィラールの硬い鱗を貫通したのは大きな成果である。

「ヴィラール!お前はそんなところでやられる竜じゃねぇだろ!?一気にやっちまえ!」

 矩樫の言葉に、ヴィラールは痛みをこらえて大きく鳴き叫ぶ。
 諺瑚は「ちっ……。」と、一言呟き地面に落ちている銃を拾う。
 しかし、拾ったは良いが、左右の肩を負傷している諺瑚は、銃を真っすぐ構えようとすると大きな激痛が襲う。
 そしてまた銃を地面に落とす。

「やれヴィラール!裏切り者を殺せ!」

 ヴィラールはじょじょに刑事との距離を縮める。
 ただでさえ暗い夜なのに、竜の大きな影で、諺瑚の周りがもっと暗くなるくらいまで距離を縮める。

「ちくしょ……このまま死ぬのはごめんだぜぇ……。」

 諺瑚は地面に落ちている銃を拾う、落とす、という行為を3回くらい繰り返す。
 死ぬならせめて、最後の悪あがきしないと気が済まない刑事だが、肩が言う事を聞かない。
 そしてついに、ヴィラールは諺瑚に向けて、鋭い爪を振りおろそうとする。

「けっ……俺もそろそろ潮時か……。」

 諺瑚はそう言って死を悟る。
 そして、ふと刑事の脳内に自分の妻と娘を思い浮かべる。

「悪ぃ……俺はもう無理だ……紗枝……娘を頼んだぜ。」

 諺瑚が、そう最後の言葉を言っている時には、もう ヴィラールの鋭い爪は振り落とされていたという。
 ——————————————————ガキンッ!
 突然、刃物と刃物が触れ合う音が鳴り響く。
 矩樫は「お前は!?」と、叫ぶ。
 諺瑚の前に現れては、ヴィラールの爪を刀で受け止める黒いマントとメガネが特徴的な男。

——————————————————東牙だったのだ。

「さて……ここから本番だ……。」

 東牙はそう言って、思いっきり刀を前へ押してヴィラールの爪を弾く。

 ——————————————————「科門奥義第弐目『絶刀斬(ぜっとうざん)』!」
 ガキンッ!東牙は叩きつけるように、ヴィラールの顔面に刀を横に振る。これにより一瞬ワイバーンは怯んで動きをとめる。

 ——————————————————「科門奥義第壱目『交倭斬(こうわざん)』!」
 ジャキン、ジャキン。今度はヴィラールの体を、交差するように刀で斬る。ワイバーンは痛そうに鳴き叫ぶ。

 ——————————————————「科門奥義第六目『突斬刀(とつざんとう)』!」
 ザクッ、ヴィラールの体に突き刺すように刀を真っすぐ伸ばす。鋭い月刀は見事にヴィラールの体に深く刺さり、ヴィラールは大きく鳴き叫ぶ。
 さらに追い打ちとして、刀を体から抜くために、思いっきり真上に刀を動かしたという。
 東牙は、ひとまずヴィラールから距離を置いて血だらけの刀を自分の黒いマントで拭う。

「やはり竜は格が違うな……このコンボを受けてもまだ倒れないとは……。」

 くいっとメガネを上げて、東牙はヴィラールを見つめながらそう小さく呟く。
 そして、ふと後ろを振り向き「お前は、こんな所で死んで良い奴だったか刑事?」と、諺瑚に一言言う。

「ちっ……まさか、お前に助けられるなんてな……。」

 諺瑚は悔しそうに一言言う。
 東牙は地面に落ちている銃を拾って、ぶっきらぼうに刑事に投げ渡すと「理由は分からんが、とりあえずこいつらをなんとかするぞ。」と、言った。
 両肩を負傷している諺瑚だが、目の前に居る東牙を見て、そんな事情を忘れて銃を受け取り「けっ……早ぇとこ片づけるぞ……。」と、強く言う。

「こりゃ、やべぇな……。」

 矩樫はそう言って、勢いよくヴィラールの背中に乗る。
 そして、5mくらい地上から空へ飛びあがり「俺とヴィラールのコンビネーションで片づけてやる!」と、大きく叫んだという。

「ふんっ……そんなもの、崩せば問題ない……行くぞ刑事……!」
「んなこと言われなくても分かっている……!」

 刀と銃を構えて、強く言葉を言う2人、敵同士だった東牙と諺瑚が突然の協力戦闘。
 果たしてどんなコンビネーションが生まれるのだろうか。