複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.14 )
日時: 2011/06/25 20:46
名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)

 北の都会地。
 ここは、都会地と名が付いているのにもかかわらず、治安がとても悪く、道端に死体が転がっているのは、日常茶飯事である。
 むしろ、都会地という面影はなく、廃墟地といった方が、分かりやすいだろう。
 別名、死の都会地と言われ、犯罪者にとっては、絶好の隠れ場なのだ。
 もう、誰からも干渉されないという事で、ずっと訂正されず、都会地と言われているので、それを知らない人が、ここへ訪れて帰ってこないなんてことは、普通らしい。
 その街の一角に、鞘嘉多関係者の一部と、鞘嘉多反対関係者が居た。
 一向に勝負がつかず、一時期停滞したが、最近また勝負が始まったらしいと、ごろつき共から声が聞こえたのだ。


                ○


「そうですか……これは参りましたわね……。」

 1人の女性が、眉間にしわを寄せて悩んでいた。
 彼女は、都会街の南に拠点を置く、鞘嘉多反対関係者のリーダー的存在、佐奈観 佳恵だった。

「だめだ……こっちも手が回らねぇ……。」

 反対関係者の1人が、自分の額を右手で叩いて、今の状況を辛く受け止めていた。

「さすがは鞘嘉多四天王の1人だ……じわじわとこっちの戦力を削っていくぜ……。」

 反対関係者は、あまりにもあっちの作戦が上手くて、感心までもしてしまった。
 それに佳恵は、少しばかり頷き、自分の指揮に自信をなくしたという。

「だがよぉ、俺たちはまだまだ戦える……だろ?リーダー。」
「はい……無理をなさらない程度に戦ってください……1人でも減ると危機的状況に陥るので……と皆に伝えてください……。」

 佳恵はとりあえず、今の戦いは守りの姿勢で戦うことにした。
 しかし、守ってばかりでは、いずれ負けると心の底から感じていたという。


                ○


「佐々凪(ささなぎ)殿!反対関係者が、守りの姿勢に入りました!」
「ほう……とりあえず守りに入り、隙を見つけ攻める戦法か?これは油断できんな。」

 1人の男性が、腕組みしながら、今の状況を分析して、どう対処するかを考えていた。
 見た感じ、30代前半で目まではかからないが、首元まである黒い髪。かなりツリ目で深紅の瞳をもち、やや動きにくそうな和服を着て、腰には2本の刀があった。
 男の名前は、佐々凪 九寺(ささなぎ きゅうじ)。別名、四天王の中で1番冷酷な男と言われる。
 今は、都会街の北に拠点を置く、鞘嘉多賛成関係者のリーダーという使命を果たしている。
 この男は、鞘嘉多四天王の1人であった。
 詳しく説明すると、鞘嘉多家には、本当に強敵が襲ってきたときにしか、戦いを許されない四天王を秘密で採っていたのだ。
 とても厳しい試験に、合格した者が集まったので、腕は相当良い。
 そんな四天王の1人が、ここで鞘嘉多反対関係者と戦っていたのは、よっぽど状況が危ないという証拠だろう。

「佐々凪殿。どうすれば良いでしょうか?」
「あっちが何を考えているのか少々分からないからな……一時攻めるのをやめよう。」

 四天王の中では、腕より知識で勝負する方なのでこういう判断をした。
 賛成関係者は「しかし、絶好のチャンスなのに……。」と言って、どうしてこんな命令をするのかがわからなったのだ。

「絶好のチャンスは、時として逆にもなるのだよ。だから油断してはいかんということで、一時引くことにした……この命令は不服か?」
「い、いえ、そんなことありません!今すぐ伝えに行きます!」

 賛成関係者は、急いで全員に知らせに行った。
 それを見ながら、九寺は一手、二手、三手と作戦を考えていた。


               ○


「ここが北の都会街か?……ずいぶん、治安が悪いみたいだな。」

 都会地の、東入口で、木葉家から1週間かけて歩いてきた東牙が居た。
 着く途端に、街を見て一言つぶやいていた。

「だが、明らかに鞘嘉多の関係者が戦っていそうな雰囲気を出している……っと、のんびりしている猶予はなさそうだ……。」

 東牙は、腰にかけている刀を、今すぐにも鞘から抜けるように、右手で準備をしてそう呟く。

「隠れてないで出てきたらどうだ?殺気を丸出しにしているごろつき共が……!」

 東牙は、そう言って刀を腰から抜く。
 すると、崩れた建物の陰から、どんどんごろつき共が現れた。
 そして、気がつくと東牙は、囲まれており、一気に危機的状況になった。

「ふんっ……腕慣らしには丁度よい相手だ……しかしこれだけの人数だと、少々厄介だな……。」

 東牙は、今の状況を瞬時に把握して、どうするかを考えた。
 そして刀をぐっと、力強く握り。

「科門奥義第伍目『円斬刀(えんざんとう)』……!」

 勢いよく、その場で回る。
 すると、しばらく何も起こらず、ごろつき共は頭の中がクエスチョンマークでいっぱいだった。
 そして、そこから5秒後、一気にごろつき共は倒れていった。

「刀を回した時にできた細い風圧に、斬られたなんて誰も気づかないか……先を急ごう……。」

 東牙は、刀を鞘に戻し、急いで、都会地を進んでいった。