複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.18 )
- 日時: 2011/06/26 00:44
- 名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)
「佐々凪殿、只今、南へ全員向かわせています。」
「南?おい。それはまずい……今ここはお前と俺でたった2人だ……なにかあったら……。」
「じゃあ、何か起してやろうか?佐々凪 九寺……!」
「何!?おわぁ!」
九寺が、ガラ空きだと言った瞬間、不意に男の声が聞こえた。
思わず辺りを見回したが、どこにも人影はなく、とても警戒している九寺の懐に、いつのまにか、先ほど声を出しただろうと思う男が居て、そこからすぐさま刀を振られる。
しかし、九寺も迅速な判断で、刀を抜き、ガキンと刀と刀がぶつかりあった。
「……ふんっ、さすがだな、鞘嘉多四天王の1人……。」
「貴様は……その姿……まさか侵入者か?」
「侵入者?なるほど……ここでは俺のことを、侵入者と扱っているのか……だが、分からんのか九寺?昔、護衛をした偉い男を……。」
男は、刀を持つ力を弱め、すっと横に刀をずらす。
そして、少し距離を取り、九寺の顔を見ながらその場で、メガネを外す。
すると九寺は「お、お前は……。」と、とても動揺した。
どうやら、やっと侵入者を昔、護衛した東牙と判断したのだ。
「俺の名前は科門 東牙……宣言通り、鞘嘉多の名は捨てた……今となっては、お前との関係は全てチャラで敵同士だ……。」
「まさか裏切り者が、自らやってくるとはな……だが、俺は鞘嘉多の四天王……一筋縄ではいかないが?」
「それは承知済みだ……だが、ここで戦わなければ、いつ戦う?いくぞ……!」
東牙は、メガネを速攻でかけ、九寺の懐に迅速に入った。
しかし、九寺は右手の刀で、ガキンと東牙の刀を止めた。
お互い押しあうが、ピクリとも動かず、これではらちがあかないと判断した東牙は、一旦、作用反作用の法則で後ろへ跳んだ。
そして、そこから今度は、少し飛翔して、脳天から刀を降ろすが、もちろん、九寺の右手の刀で止められ、また後ろに跳んだ。
「ちっ……やはり小細工しないと勝てなさそうだ……。」
「どうやら、この5年間の間に相当な鍛錬をしたみたいだな……だが、俺に勝つにはまだまだ遠い話……次はこちらからいくぞっ!」
今度は、九寺が東牙の懐に迅速に入り、右手刀を真上から振る。
もちろん、東牙は両手で刀を持ち、ガキンと止めた。
しかし、その瞬間、九寺の左手刀が、右から迫ってきたのだ。
これには思わず、東牙は例の法則で後ろに跳んで、なんとか回避した。
「二刀流だったな……少し忘れていた……。」
「忘れていた?よくこの状況でそんな事が言える……一瞬の油断が……!?……はぁ!」
「うっ……完全に気配を消したのですがね……さすがですわ……。」
九寺が、東牙に警告している途中に、ふと後ろから、わずかな殺気を感じ、右刀でそれを止めた。
不意を突いたのは、佳恵だったが、見事に見切られ、思わず九寺を褒め称えてしまった。
「貴様は……まさか、あっちのリーダー佐奈観 佳恵か?」
「そうですわ……今までずっと指揮をしてた佐奈観 佳恵ですわ……!」
佳恵は、右手に持っていた刀を、左手に持ち替えて、また迅速に動き、九寺の懐へと向かい、斜め左下から刀を振った。
しかし九寺は、すっと右に体を傾け、簡単に佳恵の一撃を回避する。
そしてさらに、その影響で背中がガラ空きとなった所を、九寺は右手の刀で一閃するが、佳恵も一瞬で体勢を立て直し、くるっと、反時計回りに180度回り、ガキンと刀と刀がぶつけた。
「くっ……やるな……さすがはあっちのリーダーと名乗るくらいか……。」
「うふふ……褒め言葉を言っていられるのも、今のうちですわよ……。」
佳恵は、東牙と同じく、作用反作用の法則で後ろに少し跳び、刀を鞘に戻した。
そして、腰を低くして、そのままピクリとも動かなくなった。
「……そうか、ではこちらからいくぞっ……!」
九寺は、佳恵がいったい何をやっているのかをすぐに見通したが、なぜかそのまま刀を構え、佳恵の懐へ向かった。
————————————ガキン、ガキン!
「!?……まさか、わたくしの居合抜きを全て見切るなんて……。」
「これくらい見切れなくて何が四天王だ……ふっ……。」
そう、佳恵は居合抜きの態勢に入っていたが、九寺はあえて、そのまま向かったのだ。
そして、佳恵の1回目の居合抜きを右手刀で弾き、2回目の居合抜きを左手刀で弾いたのだ。
この結果に、思わず佳恵は、表情を崩して驚いていたという。
「……なるほど、伊達に四天王とは言われてないか……面白い、そろそろ本気を出すか……。」
のんびり観戦していた東牙は、この光景を見て、やっと四天王の恐ろしさを知ったようだ。
だとすると、今まではあまり四天王とは意識しないで戦ったことになる。
そして「佳恵さん。下がってくれ。」と、一言言って、刀を正面に構え直立しながら目を閉じた。
「なんのつもりだ東牙……精神統一したところで、俺には勝てんぞ?いくぞ!」
「(……科門奥義第七目……。)」
九寺は、東牙の行動がわけわからず、そのまま、まっすぐ懐に向かった。
そして、右刀を、斜め45度に、上から振りおろした。
——————————————ガキン!
刀と刀が、触れ合う音が聞こえた時には、東牙は九寺の真後ろに居た。
佳恵は、一体何が起こったのか分からず、とても戸惑っていたが、5秒後に、突然、九寺の右刀が、見るも無残に折れ、本人も上半身から、大量に血を噴き出したのだ。
そして、バタリとその場に倒れ、東牙はそれを確認すると、刀を鞘に戻し
「もう少し違う形で出会っていれば、仲良くできたのにな……。」と一言呟いた。
佳恵は、突然の状況に絶句してしまい、その場でペタリと座り込んでしまった。