複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.2 )
- 日時: 2011/06/30 17:50
- 名前: コーダ (ID: dfg2.pM/)
「やっぱり……人混みが激しいな……。」
いざ祭りに行くと、やはり東牙の足が止まっていた。
自分の左右には、たくさんの売店。そして自分の前後、左右付近はどこを見ても人混み。抜け出そうにも、人の流れに流され、そう簡単に抜け出せなくて少々焦っていた。
「うっ……なんか酔ってきた……。」
実はこの少年、生まれたときから人混みに行く習慣は全くなく、そのまま12年間過ごしてしまったのであった。
人混みに流されて、けっこう時間が経ったところで、東牙はふとある売店を見た。
そこには野次馬がたくさんいて、いかにもなにかがあったという空気を出していた。
さすがの東牙もこれには心が動かされたらしく、少々乱暴に人混みをかき分けて、その売店に向かった。
「どうした?何かボヤでも起こったのか?」
「なんか知らないけど紅い少女が、射的をしてイカサマって連呼するんだよ。」
「そうか……わかった。」
東牙はそこら辺にいた野次馬に声をかけて、現状分析をした。どうやら射的の結果に満足がいかない紅い少女が居るらしい。
「だーかーらー!なんでこの商品は何度撃っても倒れないのよ!?おかしいでしょ!?」
「おかしいたってお嬢ちゃん?倒れないもんは倒れないんだよ。」
「いーや!絶対なにか細工しているに違いないよ!」
「(なるほど……ボヤの原因把握……。)」
鋭い洞察力で東牙は原因を把握した。そして野次馬をかき分けて、問題の売店に向かったという。
「おい……あまり人様に迷惑をかけるなそこの紅い子供。」
「なにさ!?そっちだって子供のくせして私に説教をするの?それによそ者は関係ないでしょ!?」
「なんだと?聞き捨てならない言葉だな……確かに俺は子供だが頭はもう立派な大人だ。」
「へぇ〜……所詮あたまだけの子供ってわけね。」
ボヤを止めようとした東牙だが、逆に酷くしてしまったようだ。
端から見ると、ただの子供ケンカにしかみえないが、野次馬は「やれやれ〜!!」などの言葉を言って、さらに酷くなってきた。
「おい……俺は女だからって手加減はしないぞ……。」
「そっちこそ覚悟は出来てるの!?私に逆らったことを深く後悔させてあげるんだから!」
「後悔なんてするか……。」
「むっ……その言葉はこれを食らってから言いなさいよ!グリモワールオブエレメント・サラマンド、第1章『バーンストーム』!」
紅い少女はやたら長い呪文らしきものを詠唱した。
東牙は頭の中に、クエスチョンマークが3個くらいあったが時すでに遅し、東牙の足下には六角形の魔法陣が現れ、そこから炎が噴き上げてきたのだ。
10秒くらい火柱がたっていたが、だんだん炎は弱くなっていき、やがて消えていった。
少女は“勝った”と言わんばかりの顔をしていたが、炎が完全に消えた瞬間一気に崩れた。
「そんな初級魔法じゃ熱いしか言葉は出ないな……。」
「えっ!?なんでー!?」
腕組みしながら、余裕たっぷりな表情で少女に言った東牙。野次馬は思わず「おおー!」などの歓声を叫んだ。
「なんでと言われてもな……生まれつき魔法に対する耐性は強い方で……。」
「むむむ……じゃあこれならどう!?グリモワールオブエレメント・リョスアルプ37章『ワードオブペイ……」
「待ちなさい蓮花(れんか)!!」
少女がまた長ったらしい呪文を詠唱した途端に、東牙は受けの体制に入った。
するとどこからともかく「蓮花。」と声をかける女性が現れた。
「えっ?……お母さん?」
「あんたって子は!何周りに迷惑かけてるのよ!しかも呪文まで詠唱して!……すみません家の子が迷惑をかけて……。」
女性は蓮花と言う少女をとても怒って、さらには周りの人に頭を下げ始めた。
見た目は30前半くらいで服装は少女と同じく紅い魔法服、けっこう紅い瞳で髪の毛は肩まで掛かるくらい長く、背も165cmとあり、よく見なくても美人であった。
東牙はすぐに状況を感じ取って、もう大丈夫だなと判断した。
「ちょっと!私はこの射的屋がイカサマをしているから怒っているのであってなんにも悪くないわよ!」
「蓮花は黙ってなさい!言い訳なら家でいくらでも聴くわよ!」
東牙はこのやり取りを見て、母親としての自覚と責任をちゃんと持っているなと感じた。
そしてこの場にいるのは少々空気と思った少年は、この場から立ち去ろうとしたが。
「あっ!待って下さいそこの人!」
「はい?」
いきなり蓮花の母親が東牙を呼び止めた。
「本当にすみません家の子が……あの大丈夫ですか?」
「いえいえ……自分は生まれつき魔法に対する耐性は高いので、左腕だけ軽い火傷で済みましたよ。」
「火傷ですって!?すみません今治しますので!……グリモワールオブエレメント・レーシーアンドデクアルプ141章『フロストケア』。」
東牙は大丈夫と言っているのに、母親はとても心配した顔つきになり、あの長ったらしい魔法を詠唱した。すると東牙の左腕が急激に冷やされた。
「これで1時間あれば治りますよ。」
「わざわざすみません……もう大丈夫ですので、早くお子さんの近くに行ってあげてください。」
東牙は丁寧な言葉でお礼とお別れの一言を言った。しかし本人はまだこの女性と話したかった。
理由は簡単だった。この2人の正体を探るということ、実は蓮花が最初に詠唱した呪文の時から、頭の中で記憶をたどっていたのだ。
自分が住んでいる場所にこんな魔法が使える家系があったか?と、しかしまだ見当がつかなかった。
「ではお言葉に甘えて……。」
「あっ!……ちょっと待って下さい……最後に失礼ですが……あなたのお名前を知りたいんですけど。」
東牙はむしゃくしゃするのは嫌いなので、やはりここは思い切って女性に名前を聞いてみた。
「私は木葉 箕琴(みこと)です。あっちに居るのが私の娘、木葉 蓮花(このは れんか)です。」
「……そうですか……分かりました……自分は鞘嘉多 東牙です……では縁がありましたらまた……。」
東牙は何を思ったのか突然そそくさと自分の名前を言って、この場から去っていった。
女性の方は何も疑いもせずに、子供を引き連れて帰っていった。
「(木葉家か……やっと思い出した……まさかあの“赤紅最高裁判魔法管理事務所(せきべにさいこうさいばんまほうかんりじむしょ)”の子供が遊んでいたとは、こんな所で……そして俺は今日を境に知り合いとなった……これは参ったな……。)」
東牙は歩きながら、今日自分がやった行動をとても後悔し始めた。