複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.20 )
日時: 2011/06/26 01:10
名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)

「ふ〜……やっと着いた〜!」

 都会地の、東入り口で、1人の少女が伸びをしながら、ここへたどり着いた事に喜んでいた。
 全身が紅い服装、魔道書と杖を持っていて、見た感じ明るい人。

 そう、ここに来たのは、木葉 蓮花だったのだ。

「あいつは確か、この都会地に行った……だけど、ここ都会地かしらね?むしろ、廃墟地といった方が良くない?」

 周りを見ながら、矛盾に突っ込んでいた蓮花。
 どうしてここに来たのか?というと、理由は一言で済む。
 東牙を、見つけるためだった。

「……血の臭い、所々にある死体……これはなにかあるわね……。」

 そう言って、蓮花は警戒しながら、都会地を歩く。
 進むにつれて、血の臭いがきつくなり、死体の量も多くなってくるなか、少女はただ黙って、前進していった。
 すると、遠くの方から人の声が、微かに聞こえてきた。
 これを、聞き逃さなかった蓮花は、先より警戒しながら、その方向に進んだ。
 そして、だんだんとその声は、大きく、はっきりしてきて、蓮花の警戒心は、どんどん強くなる。
 この先、どんな人が居るのか、という興味と、恐怖が、少女を動かす動力でもあった。

「誰だてめぇ……ここに何か用かぁ!?」

 突然、後ろからガラの悪い言葉が聞こえた。
 どうやら、誰かに、見つかってしまったようである。
 蓮花は、心の中で「あちゃ〜……。」と呟き、恐る恐る、後ろを振り向く。

「見ねぇ顔だな……何者かは知らねぇが、お譲ちゃん早く帰んな。ここは危ねぇぞ?」

 意外と、優しい心の持ち主と判断して、ほっとした蓮花は「嫌よ。私はある人を探しに、ここまで来たんだから。」と言った。
 すると、なぜかガラの悪そうな男は「う〜ん……。」と悩んだ。
 一体、何に対して悩んでいるのか、分からなかった蓮花だが、続けて「あんたに言っても分からないと思うけど、私は科門 東牙を探してるのよ。」と言う。
 すると「何!?あの、東牙を探してるだとぉ!?」と大きな声でかえってきた。
 そして「お譲ちゃん。東牙とどんな関係だぁ?」と、間を開けず問い詰めてきた。

「まぁ、5年間くらいの付き合いね。」

 この発言に、男はまた「何—!?」と叫んだ。
 そして「これはリーダーに会わせるしかねぇ。」と言って、蓮花の柔らかくて、少し細い腕を強引に引っ張った。
 もちろん「ちょ、ちょっと!どこ触ってるのよ!痛いってば!」と、少女らしい声が、聞こえたのは言うまでもない。


               ○


「……復讐のためなら俺は殺しもする……東牙、その言葉、本当に言っているのでしょうか……。」

 顔を、少し下げながら、呟くのは、戦いに終止符を打ったのに、一切喜びもしなかった佳恵だった。

 どうやら、東牙がその原因らしい。

「……もう、昔のような東牙は居ないのでしょうか……。」

 この話は、九寺との戦いが終わった時に遡る。


                ○


「さて……行くか……。」
「……東牙、どうしてこんなことをしたのでしょうか……?」

 東牙が、刀を鞘に戻して、佳恵に行ったが、彼女は、どうして九寺を殺したのかを、声を低くして尋ねる。
 そして、東牙からは「鞘嘉多の四天王だから。」と、一言で終わる言葉が出てきた。
 すると、佳恵は一気に顔色を変えて。

「四天王だから?四天王だからという理由で、東牙は人を平気で殺すのですか!?」

 あの、いつもおっとりしている佳恵が、今だけは、怒りをあらわにして、このセリフを言った。
 そして、東牙は「そんな考えでは、復讐なんてできん。」と、佳恵に強く言う。

 —————————————————パチン!

 佳恵は、東牙の右頬に思いっきりビンタをする。
 その音を、聞く限り、思わず声を出してしまうくらい痛いはずなのに、東牙は黙っていた。
 そして佳恵は「もう……東牙なんて知りません!」と、涙を流しながら、この場から去った。

「……すまない佳恵さん……本当にすまない……。」

 そして、東牙は佳恵と逆方向に、歩いて行った。


               ○


「どうしたらいいのでしょうか……このままでは、復讐のために動く東牙になってしまう……そんなの嫌ですわ……。」

 佳恵は、また、涙を流しながら、東牙のことを考えていた。

「リーダー!東牙を探している女が居るぜぇ!」

 この一言を聴いて、佳恵は目に溜まった涙を、腕で拭き取り、反対関係者の方へ向かう。
 すると、思いもよらぬ、客人が彼女の眼に映った。

「えっ……あ—!?あの巨乳女!?」
「もしかして……あの時の?」

 2人はしばらく、唖然としていた。
 一方、反対関係者の1人は、また、頭がごちゃごちゃになったという。