複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.21 )
日時: 2011/06/26 08:32
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

           〜参目 新たな仲間と敵〜


 北の都会地から、西に行った城下町。
 その名の通り、ここは、城と町があり、かなりの人口を、誇る場所である。
 治安もよく、表通りでは、隙間なく、商工業や家があり、老若男女が、ガヤガヤとしていて、とても町として発達していた。
 しかし、これは表向きの話で、裏では、ごろつき共の巣穴で、よく一般人が、そこを通って恐喝されているのも、日常茶飯事だ。
 だが、人々から聞いた話だと、一度でいいから、ここに住みたい、と言う人が多い。
 そんな城下町の夜、屋根の上に、1人の女性が居た。

「風が騒がしい……今日は良いことがなさそうだ……。」

 小声で呟き、眼を徐々に開ける。
 着物を着ていて、一応肩まで長く、艶やかで、やや黒髪に、茶色成分が含まれた髪。
 そして、なぜか頭の上には、ふさふさした2つの耳。
 よく見なくても、動物のような尻尾があり、足元には、自分の身長と同じくらいの、長い刀が置いてある。
 極めつけに、人間ではありえない、おぞましい眼光を、持っていた。

「こういう日は、黙って寝るのが1番……ん?なんだあの人だかりは……。」

 女性は、どこを見ているのか分からないくらい、遠くの方に、人だかりがあるのを見つけた。
 どうやら、彼女は、視力がとても良いと伺える。
 そして、置いている刀の、丁度、真ん中部分を持って、その場から、飛翔して、屋根をどんどん巡っていった。


               ○


「ようやく着いたか……しかしここは人が多いな……。」

 城下町の南部分で、黒い男がようやく、ここにたどり着いたことに、ひとまず安心する。
 そして、たくさんの人ごみに、少し溜息をしていたのは、そう、東牙だった。

「だが、こんな場所に四天王が居るとは……世の中、何が何だかわからんな……。」

 そして、腑に落ちない感じで、人ごみの中に、入る東牙。
 しかし、ものの3分で、彼は人ごみに酔い、表通りの陰で、休んでいたという。


                ○


「全く……なにかと思ったら、表通りに出たごろつき共が、騒いでいただけか……あまり人に迷惑をかけては、だめだぞ?」

 城下町の、だいたい東辺りで、とても長い刀で、表通りに現れた、ごろつき共を成敗した、女性が居た。
 野次馬は「おお—!」などの、歓声で彼女を見ていた。
 しかし、誰も彼女に、耳や尻尾が生えていることに、突っ込みはしなかったという。

「これからは人のために行動してみるんだな……さて、行くか……。」

 捨て台詞をはいて、女性はすぐさま、路地裏に姿を消した。
 風のように現れ、風のように去っていく、かのように。


               ○


「やはり、人通りのない路地裏が、落ち着くな……。」

 のんきに、路地裏を徘徊していた東牙。
 黒マントという、服装のせいか、路地裏の暗さと、保護色になり、とても目立たなかった。

「これから、どうする……?情報屋でも探して、聞き出す方が早いか?」

 腕を組みながら、1歩1歩進み、これから、どう行動するか、考えていた東牙。

 —————————————————バンッ!

 突然、どこからともかく、銃声らしきものが、聞こえてきた。

「……なんだ?誰か撃たれたか?」

 普通なら、焦るはずなのに、この男は、本当に落ち着いて、冗談半分で、この言葉を言う。
 そして、なぜか東牙の足は、銃声の聞こえた方向に、向かっていたという。


               ○


「俺の計算だと、ここら辺だと思うのだが……。」

 東牙は、たぶんここらへんで、誰かが撃たれただろう、という計算をして、ここを歩いていた。
 しかし、手がかりは、何もつかめず「もしかして、間違ったか?」と、珍しく失敗した、と感じる東牙。
 そして、諦めようとした瞬間、目の前に、なにやら犬のような生物が、倒れているのを見つけた。
 東牙は、少し小走りして、その倒れている犬を見た。

 なぜか、犬には着物がかけられており、口には、とても長い刀が咥えられていた。
 そして、腹部からは、銃で何か撃たれたかのような傷。
 わずかながら、息をしているが、とても危ない状況。
 よく見ると、わずかながら無茶をして、歩いた形跡もあった。
 東牙は「撃たれたのは犬か……しかし、これは見事に危ない、早くしないと……だが、面倒なことに巻き込まれるのは……。」と、助けてやりたい気持ちと、それを、拒否する気持ちが葛藤していた。
 すると、倒れている犬は、近くに居る東牙見ては、じっと見つめ、咥えていた刀を落とし、助けてと言わんばかりに、鳴き始める。

 さすがに、東牙は「あ〜……そんな声で鳴くな……仕方ない奴だ……。」と、言って、倒れている犬を、なんと、抱きかかえたのだ。
 そして、刀と着物も持ち、この傷をなんとかできるのは、表通りしかないと、すぐに考えた東牙は、颯爽と、人ごみの多い表通りへ向かった。