複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.22 )
日時: 2011/06/26 08:55
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

「おい、指示が出てないのに、長距離狙撃銃を撃つ馬鹿が、どこに居る?」
「も、申し訳ありません鉈崎警視!」

 城下町から、少し離れた平野で、20人くらいの、団体が居た。
 その中で、1番服装として、目立つ男は、仲間が勝手に、発砲したことを、注意していた。
 目立つ男の見た目は、28歳くらいの男で、灰色のスーツを着ているが、上のボタンを、全てつけていない状態で、Yシャツが見えるという特徴。
 髪の毛は、前髪が目の上半分が、かかるくらい長いが、首まではいかない。
 目は、黒一色で、とてもガラが悪そうに見えた。

 この男性は、鉈崎 諺瑚(なたざき げんご)という名前で、職業はなんと刑事。
 そう、この団体は、刑事たちだったのだ。

「ったく……これから、仕事のためにあの城へ、行くってのに、変な噂が流れたらどうすんだ……しかも、その処分は、誰に回るか、わかってるのか!?」
「……申し訳ありません。」

 諺瑚は、隊員に、こっぴどく叱った。
 しかし、この男が刑事だなんて、とても信じられないが、こう見えて、実績はかなり残しており、刑事の、最終兵器だ、と言われるくらいである。
 だが、1度堪忍袋が切れると、手に負えないという。

「……さて、どんな仕事が引き受けられるのか……。」

 諺瑚は、上のスーツを風で、たなびかせながら、城下町へと向かった。


               ○


「くっ……参ったわねこれは……。」
「ええ……打つ手がないですわ……。」

 その頃、北の都会地では、なぜか反対関係者と、蓮花が、たくさんの人たちに、包囲されていた。
 その数は、ざっと200人くらいで、反対関係者の、何人かが、この人達にやられたのが、垣間見える。

「どうだぁ?諦めて俺たちの言うことに従えよなぁ!そうすりゃぁ、命だけは助けてやるよぉ……。」

 包囲している人の中に、1人だけ、黒いローブを着て、先が折れた、黒いとんがり帽子をかぶった男が、反対関係者にこう言った。
 明らかに、他のものと違う、オーラを持っており、この男が、リーダーだというのは、すぐに分かった。

「ふざけんじゃねぇよ!誰が、お前達なんかに従うかよぉ!」

 反対関係者の1人が、反発した態度を取って、男に言った。
 すると「へぇ〜……お前は、命を粗末にすんのかぁ……。」と、言って、右手に持っている魔道書をパラパラと開き、なにやらぶつぶつ呟く。
 すると、男の足元に、八角形の魔法陣が現れた。
 これを見た蓮花は「この力……だめ!こいつに逆らっちゃだめよ!」と、大声で叫ぶ。
 そして佳恵も「やめてください!今は、命を粗末にしないでください……。」と、反対関係者に告げた。

 男は、詠唱を中断して「良い判断だなぁ……ボイン姉ちゃん……。」と、言って、反対関係者を捕まえろと、命令する。

「ちょっと!もうちょっと、優しく扱いなさいよ!」
「うっ……すみません……こんなことに、なってしまって……。」

 反対関係者は、ただ黙って、腕に縄を縛られていった。
 そして、1列に並ばされ、歩き始めた。
 すると、列の後ろに居た佳恵が。

「あなた達の目的は、なんでしょうか?」

 と、いつもトロンとした目を、今だけは、キリっとさせて、男に一言尋ねる。
 すると「知らねぇな……俺たちは、ただ協力しているだけでよぉ……あいつの考えることは、わからねぇ。」と、男は事情を言った。
 これに佳恵は「あいつ?」と呟いたが「おっと……それ以上は、聞かせられねぇよ……。」と拒まれた。

「柿崎(かきざき)殿!反対関係者は、全員既定の位置へ、向かわせました!」
「ごくろうさん……さて、後は城下町で、邪魔が入らなければいいのだがねぇ……。」

 男は、ひとまず最初の仕事を、終えたことに、ほっとしたが、また、新たに第2の仕事ができて、かったるそうにしていた。
 そして「姫狗(きく)……てめぇもしくるなよぉ……。」と、小声で呟き、反対関係者の後を、ついて行った。


                ○


「一時はどうなるかと思ったが、3日もすれば治るか……3日?あの傷でか?」

 城下町の賑わいが、ピークに達する夜。
 東牙は、宿泊している部屋の窓から、そんなセリフを言っていた。
 どうやら、銃に撃たれた犬は、無事、獣医に見てもらえることができ「傷が治るまで、あなたが見守ってください。」と、言われたのだ。

 そして、寝てるのか、気を失っているのか、分からない犬を抱え、そのまま宿泊場に行き、従業員に説得し、動物プラス料金で、なんとか、2階の部屋を取った東牙は、とりあえず最初に、抱えている犬を、ベッドの上に乗せ、近くの椅子に座った。
 着物は、従業員にお願いして、洗濯してくれて、刀は、物騒だから、自分自身が持っていた。

「この犬、どうすればいいんだ……面倒は見きれないし……はぁ……。」

 東牙は珍しく、大きなため息をして、この犬をどうするか考えていた。
 しかし、一向に良い案が思いつかず、気がつくと、東牙は目を閉じて、夢の中に行ってしまった。

 だがおかしい、東牙ぐらいなら、どうして、着物と刀があるのか、という疑問を、すぐ思いつくはずなのに、今回それがなかった。
 もしかすると、単に疲れが蓄積されて、思っていないのかもしれないし、何か、考えがあるのかもしれない。

 どちらにせよ、この犬は、ただの犬ではないことに、薄々気づいているのかもしれない、ということだ。