複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.23 )
日時: 2011/06/26 09:28
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

 太陽が、明るく照らす、朝の城下町。
 表通りでは、主婦が、市場で売られている商品を見る光景を、目にすることが多い。
 朝と夜とでは、表通りの人が違うという、特色が、この城下町では有名だ。
 そして、窓の近くで、寝ていた東牙は、朝の日差しを、受けてなのか、気持ちよく起きたみたいである。
 少し腕を伸ばし、体に目覚ましをかける東牙。
 窓を開けて、心地よい風を受けながら「今日は、情報を探ろう。」と、言って後ろを振り向くと、突然「はっ……?」と唖然したという。

 昨日ベッドには、犬が1匹寝ていたのに、今日の朝は、犬が居なかった。
 そのかわり、裸体の女性が、丸まって寝ていたのだ。
 東牙は、メガネを取ったり、つけたりを、繰り返して、確認したが、やはりベッドには、女性が居た。
 しかも、よく見ると、頭の上には、2つの獣のような耳と、ふさふさした尻尾があり、よく見なくても、美人だった。
 東牙ぐらいの男性には、色々な意味で、刺激的なものなので、ある感情が抑えきれなくなるのに、この男は落ち着いて「起きたら、事情を聞こう。」と、言って、椅子に座り、懐から小さい本を出して、そのまま読み進め、女性を丸投げにしたのだ。
 傍から見ると、誤解が生みそうな場面なのに、そんなことを気にもせず、のんきに読書する、この男の度胸がすごい。
 そして「う〜ん……。」と、ベッドの方から、声が聞こえてきた。
 東牙は、それを耳にすると、すぐに本をパタリと閉じて、窓の方向を見ながら「目覚めは好調か?」と尋ねる。
 もちろん、この男は“裸体の女性”を意識して、向きを変えないでいる。

「め、目覚めは好調だ……んっ……?」

 女性は、東牙の質問に答え、しばらく黙った。
 そして、違和感を覚え、自分が、今、どんな姿をしているのかを、5秒くらい確認して、やっと頭の中で、処理ができ、毛布をばっと巻いて、クゥ〜ンと、鳴きながら赤面していた。
 東牙は内心「この行動が正解か……。」と、思っていたという。

「み、見たのか……私の体を……。」

 女性は、東牙に小声で質問する。
 すると、意外にも「ああ、見た……だから、こうやっているのさ。」と、正直に答えたという。

「う〜……。」

 この言葉に、女性はさらに、赤面したが、怒鳴りはしなかったという。
 というか、東牙があっさりと、隠さず言った事に、意味があるのかもしれない。

「あなたが着ていた着物なら、もう乾いてるだろうし……持ってくるか?」
「……た、頼む……。」

 東牙は「やれやれ……。」と、呟き部屋から出て行き、従業員に着物について、聞きに行った。
 部屋を出て、5〜6歩進んだ時に、なぜか部屋から、クゥ〜ンと、鳴き声が聞こえたのは、言うまでもない。
 しかし、ここでおかしいところがある。
 なぜ東牙は、この女性に着物を着させるのか、という事を。
 もしかすると、この男からは、謎という文字が、頭の中から、消えたのかもしれない。


               ○


「ほら。持ってきたぞ……早く着替えてくれよ?」

 東牙は、部屋を開けて、着物を女性の近くにおいては、せっせと、部屋から出て行った。
 そして、扉に背中をかけて、また懐から本を取りだし、着替えが終わるまで、読書をした。

「……もう、入ってきていいぞ?」

 女性が、着替えたことの知らせを聴き、東牙は、本をパタリと閉じ、ガチャと、扉を開け椅子に座った。
 そして「やはりそうか……。」と、女性を見ながら呟いた。

「な、なにがそうなんだ?」
「いや、なぜこの部屋に、美人な女性が居るか、っていう謎……単刀直入に言おう……あなたは、昨日撃たれた犬だよな?」

 この一言に、女性は色々な意味で、ドキッとしたらしい。
 そして、尻尾を落としながら「そうだ。私は、昨日撃たれて、お前に助けられた馬鹿な狼だ。」と呟く。

「だろうな……その耳と尻尾、さらに、獣のような眼光……明らかに、人間ではないだろうと判断した……後、自分を自分で、馬鹿というのはやめろ……それは、完全に自分を否定していることになる……良いか……!」

 どうやら東牙は、朝起きた時点で、この女性があの犬だと、見抜いていたのだ。
 もちろん、人間にはないものが、その答えに結び付いたのは、言うまでもない。
 そして、最後の言葉には、底知れぬ意味があるのだと、女性は思ったらしく「わ、わかった。」と恐れながら言った。

「まぁ、色々聞きたいことはあるが……まずは、朝食でも食うか。あなたは何が好きなんだ?」

 東牙は、とりあえず、このまま話していては、つまらないし、悪いと思って、朝食を取ることにした。
 この宿屋は“泊まる”という、概念しかないので、食事は買ってこなくては、だめなのだった。
 だから東牙は、女性に、好きな食べ物を訪ねた。

「えっと……果物ならなんでも良い……。」
「分かった。じゃあ、おとなしくここで待っていろよ?」

 そして、扉を開けて、表通りまで買い物に行った、東牙。
 女性は心の中で「優しい人。」と思ったのは、言うまでもない。






 ちょっとした補足説明…。

        〜この世界の住民〜

 この世界には大まかに人間、獣人、鳥人、竜人が存在している。

 他種族間で争いは基本的に少なくともに協力して暮らしていることが多い。しかし、一部では人間による他種族の差別的意識がある場所もある。

 とくに、獣人は犬、猫、狼、兎、狐、鼠と多種多様に存在する。

 獣人の特徴は作中でも書いたとおりそのモデルとなった獣に実際になれるということ。

 狼の獣人なら狼になれるなど…しかし、遺伝子の強さが弱いと獣になるこができない(簡単に説明すると、人間と獣人からできた子供は獣になれない。)。

 なお、鼠に狐、竜人以外の寿命は人間と同じ100年くらいである。