複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.27 )
日時: 2011/06/26 14:34
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

 表通りが、1番賑わう時間帯。
 もちろん、城の方も、にぎわっているが、その分、警備は万全である。
 そんな、夜の飲食店で、メガネをかけた、黒いマントの男と、美人で、耳と尻尾がある女が、一緒に食べているという噂が、小規模で、流れていた。

「騒がしい飲食店しかとれなくて、すまない。」
「いや、東牙が謝る事じゃない。だから、気にしないでくれ。」

 飲食店と言うか、むしろ、酒場と言った方が、あっている場所で、2人は、夜の食事をしていた。
 周りは、のんべぇの男たちが、騒いでおり、東牙にとっては、最悪な場所だ。
 なのに、楓を心配する辺りが、この男らしい。

「城に関する有力な情報が、本当になくて困るな……。」

 お茶を飲みながら、肘をついて、東牙はこんなセリフを呟いた。
 すると、それを聴いていた、隣の男が「兄ちゃん。城のことが、聞きたいのか?」と、酔っ払いながらも、話しかけてきた。

「その情報が、正しいという根拠は?」
「な〜に……こう見えて、俺は城を警備する男だ!今日は、たまたま休みで、こうやって仲間と飲んでるんだがよぉ!」

 東牙は、これを聴いて、顔色を変え「情報を、教えてくれ!」と、言った。
 すると男は「良いけどよぉ……ただじゃなんだから……。」と、言って、お店のメニューを見た。
 もちろん東牙は、何を言っているのかが分かっており、懐から、酒1杯分の、お金を渡した。

「兄ちゃん、物分かりが良いなぁ!」
「ふんっ……。」

 ちなみに、楓はこのやりとりを、唖然としながら見ていた。
 どうして、東牙はこういう人の接し方が、自然にできるのか、という意味で。

「じゃぁ、言うぜぇ……今日、城に40人くらいの人が捕まった、という話は聞いたことあるだろ?だけどよぉ、実は、一昨日辺りから、もうここに連れてこられたんだ。」
「なるほど……どういう人が居たとか覚えているか?」
「あ〜……そうだなぁ……俺は、ちらっとしか見てねぇから、一概に言えんが、全員、刀を持っていてその中に、かなり胸がでかい女性が居て、なぜか1人だけ、全身が紅い服を、着ていた女性もいたな……あれは、見たところ魔道士と見たぜぇ。」

 この言葉により、東牙は「やはり、佳恵さん達が捕まっているのか……。」と、心の中で呟き、2秒後に「そういえば、なんで蓮花も居る?」と、1つ謎が生まれた。

「親方は、見るときは、みるんですねぇ〜。」
「へっ、俺は親方が気づく前に、あの胸がデカイ姉ちゃんを見てたぜぇ!」
「そういえば、お前ずっとその人、見ていたなぁ…。」

 東牙と男が話していると、仲間たちが、会話に参加してきた。
 これにより、どんどん情報が得られやすいと思った、東牙であった。
 相変わらず、楓は唖然としながら、この男達を見ていた。

「でな、その捕まったやつらは……おっと、ここからは、極秘だから言えないが……。」

 東牙は「極秘の情報は、絶対に教えてくれないのか?」と、親方に問い詰める。
 すると、親方は仲間の顔を、1人1人見て、最後にメニューを見る。
 だが、やはり東牙は、何を言っているのかが、わかっており、懐から、酒16杯分のお金を渡した。

「さすがだなぁ、兄ちゃん!俺の言っていることを、完全に解ってるぜぇ!」
「4の2乗をしただけだ……それ以外、理由はない。」

 この行動に、仲間たちも、他のお客さんの事を考えず、歓声をあげて、盛り上がった。
 というか、周りが、ほぼそういう状態だから、何も言われなかったらしい。

「へへっ……どうして、あの40人が捕まったのかという理由……表向きでは、暴れたと言っているが、それは違うぜぇ……てことは、分かるだろぉ?裏向きの理由があることに……。」

 親方は、小声で、東牙に言った。
 そして、ゆっくりと、裏向きの理由を言い始めた。

「どうやら……あの40人を助けるために、来るだろうと思われる男を、呼び込むために、捕まえているらしいぞぉ……。」

 この言葉に、東牙は心の中で「何!?」と、叫んだ。
 しかし、ここで表情に出すのは、少々危険なので、落ち着いて「な、なるほど……その男が目当てか……。」と、呟く。

「しかもよぉ……来なかったら来なかったで、捕まっている40人を、処罰すんだってよぉ。」
「あ〜あ……勿体ねぇよな、それ……なんなら、俺にあの姉ちゃん、くれってのにぃ……。」
「そして、すぐにビンタされ、お前は死ぬと……。」
「はは!それは、面白い死に方だな!」

 東牙は「そうか、すまないな……こんな極秘情報を教えてくれて。」と、言って親方の手に、酒20杯分のお金を渡した。
 そして「行くぞ……。」と、楓に言って、この場を後にした。

 気がつくと、外は少し冷たい風が吹いていて、思わず、身震いしてしまう中、楓は「良かったのか?あんなにお金を出して。」と、東牙の経済面を心配した。
 しかし「その金以上の、価値がある情報をきけたから良い。」と、きっぱり言って、宿屋に早足で向かった。