複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.30 )
日時: 2011/07/02 19:23
名前: コーダ (ID: H0XozSVW)

「何!?侵入者が、第2門へ向かっているだと!?」

 鉈崎は、通信機に向かって大きな声で隊員に言った。
 そして、慌てて通信機を切っては、懐からハンドガンを取り出し弾数のチェックをして「面白くなってきたな……。」と侵入者を待っていた。


                ○


「東牙!第2門はあっちだ!」
「了解……っと、危ないな……。」

 楓のとても良い視力により、第2門を見つけては急いでそっちに向かった。
 だが、思いのほか警備の数は多く、このままではラチがあかないと判断した東牙は、精神を集中させて「科門奥義第伍目『円斬刀』……!」と、技を繰り出した。
 そして、一気に警備の数は激減し、あっさり第2門を突破した。

「これは、また門を探すことになるのか?」
「ああ、そうだ。第3門を突破すればやっと城に入れるぞ……左へ行くぞ……!」

 東牙は、第1門の上で、ある程度どんな地形かは頭の中には入っていたので、次にやることがパッと言えた。
 そして、またたくさんの警備員を退けながら進んだ。
 2人が、第3門へと近づくにつれ、なぜかどんどん警備の数が減っているのに違和感を覚え、最終的に門の前には誰も居なかった。
 これにはさすがの2人は、怪しく思い警戒して門を通る。
 しかし、やはり警備員は誰も居なかった。先程までの戦いがまるで嘘のように。

「東牙……これは一体……。」

 楓は、怯えながらセリフを言ったが、東牙は「……おい、そこに居る奴……出てこい。」と、声を太くして言った。
 すると、バンッと銃声が聞こえ、東牙は素早く回避した。

「やはり、親玉が居るか……隠れてないで、出てこい。」

 東牙は、挑発気味にこのセリフを言う。
 すると、草陰からサッと、スーツ姿の男が出てきて、また2〜3発銃を撃った。
 しかし、東牙は一歩も動かずに事を終えた。

「ふんっ……俺の脅しが効かないとはな……大した度胸の持ち主だ。」

 どうやら、この男はワザと外して撃ったみたいだ。 もちろん東牙は、そのことを分かっていたので動かなかったという。

「どうやら貴様を倒さないと、無事に入れてくれないようだな……。」
「けっ……誰が通すかっての……刑事をなめるな……。」

 お互い正面に向き合い、構えに入った。
 そして東牙が、すっと動くと刑事は9、10発、銃を連発して距離を取った。
 しかし、そのスキに楓は、刑事の不意を突き、後ろから刀を振ったが、刑事はそれに気が付き左手を懐に入れ、もう1丁の銃を速攻で取り出し、なんと後ろを向きながら1発、刀に撃った。
 これにより、楓の刀は銃により弾き飛ばされ「くっ……。」と、呟き、遠くに飛んで行った刀を取りに行った。

「不意打ちとかやめた方がいいぞ……誤って命をとるかもしれねぇしな……。」

 この行動を見て東牙は「これはかなり危ない奴だ……下手すれば四天王より強いかもしれん……。」と、久しぶりに強敵だと認識した。

「さて、そこの男はどう来るか……。」

 刑事は東牙を見ながらずっと銃を構えていた。
 するとどこからともかく「ったくよぉ……って、楓じゃねぇかよぉ!」という声が聞こえてきた。
 3人がその方向を振り向くと、なんと黒いローブを着た男、橋鍍がその場に立っていた。
 楓は「きょ、橋鍍……。」と、怯えながら言った。東牙は「ん?知り合いか?」と、尋ねた。

「まさかぁ……ここで楓に会えるとはねぇ……くっくっ……鉈崎、楓、そいつが裏切り者の東牙だぁ!」

 橋鍍が叫ぶと鉈崎は「焦らせるな。ちゃんと捕まえてやる!」と、言った。
 楓は「えっ……?」と、マヌケな声で言って東牙を見る。
 そう、彼女の斬るべき相手は、あの東牙だったのだ。
 これには思わず「橋鍍!本当にそいつが、裏切り者の東牙なのか!?」と、再確認する。
 だがやはり「ああぁ、そうだよぉ!だから遠慮なく斬れ。」という回答が返ってきた。
 東牙は、少しこの状況についてこれなくて思わず「おい橋鍍という男……楓とはどんな関係だ?」と、強く言う。
 すると「簡単だよぉ……楓も俺たちと同じ、鞘嘉多の四天王だからだよぉ!」と、笑いながら言った。

「……なんだって……。」

 東牙はこの一言により、楓に対する目がすっと変わった。
 それは明らかに、敵を見るかのような眼光、しかし楓は「待ってくれ!私は東牙と戦う気はない!」と、叫ぶ。
 だが残念ながら「黙れ四天王が……。」と、言って、さっと楓の懐に入って刀を振った。

 ————————————————ガキン。

 刀と刀がぶつかる音が聴こえ、東牙は例のごとくあの法則を使って後ろにすこし下がった。
 そして「どうした……思いっきりかかってこい……。」と、楓に言ったが「嫌だ!私は東牙と戦いたくない!」と、やはり戦いをしたくないと主張する。

「ならこちらからいくぞ……。」

 東牙は刀を両手で構え、楓の懐に向かおうとした瞬間。

 ———————————————バンッ。

 銃声が響き、次に聴こえたのはカランと刀が落ちる音が聞こえ、その次に「うっ……ぐっ……。」と、東牙が右手からの出血を左手で抑えつけながら、その場に膝をついていた。
 なんと、東牙が楓に集中していたのをチャンスと見た鉈崎は、銃で右手を上手く射撃したのだ。
 しかも右利きで刀を使う東牙には、致命的なダメージで、これにより圧倒的不利な状況になった。

「ふんっ……周りを見れない若造が……。」
「すげぇなぁ……さすがは鉈崎だぁ!」

 橋鍍は、鉈崎の一撃にとても感動していて、思わず喜びを声に出してしまった。
 楓は、手で口を押さえながら、腕を必死に押さえて痛みにこらえる東牙見ていた。
 そして「やめてくれ!これ以上の戦いはやめてくれ!」と、2人に強く発言した。
 すると「おい楓ぇ……なんで裏切り者をかばう……てめぇは、鞘嘉多四天王の犬頌 楓だろぉ?」と、橋鍍がとてもガラの悪い口調で言った。
 東牙も「ど、どうして……俺をかばう……なぜだ……うっ……なぜなんだ!」と、楓に問いかけた。
 すると「……私は銃で撃たれ生死をさまよっているところ、東牙によって助けられた……そして心優しく私のことを見てくれた……そんな、そんな人を私は、敵とは思いたくない!」と、涙を流しながら東牙に言う。
 この一言により橋鍍は「おい鉈崎ぃ……あの犬も……撃てぇ……。」と、小声で言って「言われなくとも……。」と、鉈崎は銃を取り出し、楓に構えて引き金を引いた。

 ————————————————カチッ。

 とてもマヌケな音が響き「ちっ……リロードを忘れていたぜ……。」と、言った。
 この行動により、楓は即座に「危ない。」と、獣の勘が悟り、素早く、膝をついている東牙をいとも簡単に抱え、来た道を急いで戻った。
 その速さは、人間が出せるものではないくらい速く、2人が気づいた時にはもうその場にはもう居なかった。