複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.33 )
- 日時: 2011/07/03 15:02
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「いやぁ〜……昨日は鉈崎の手柄だったなぁ!俺が出るまでもねぇなぁ!」
「何、俺を今まで通りのやり方で、やっただけだ……褒められる筋合いはない。」
「何にしても、これで東牙はしばらく、ここには来れないという事ですね。」
城の最上階で、諺瑚、橋鍍、夜尭が昨日のことを話題に、朝の食事をとっていた。
食パン、フランスパン、揚げパンなど、たくさんのパンを主食にして、副食には、なんと肉がズラリと並び、朝からある意味酷いメニューに、さすがはお金持ちと、諺瑚と橋鍍が思ったのは言うまでもない。
「しかし、俺の勘だと東牙は懲りずにくるぞ……そうだな、せいぜい早くて明日か?」
諺瑚は、イチゴジャムをたくさん塗った食パンを1口食べ、牛乳を一気飲みして、こんなセリフを吐いた。
橋鍍は「そんなのありえねぇってのっ!見ただろぉ、あの傷ぅ!?あれじゃあ、まともに刀は振れねぇよ。」と、揚げパンを食べながら言った。
しかし夜尭は「(それはそれでありえそうですね……。)」と、心の中でわずかな可能性があるかもしれないと悟り、黙って紅茶を飲んだ。
「ふんっ……そうやって言っていられるのも、今のうちだ……。」
「ちっ……俺は信じねぇからなぁ!」
刑事と四天王が、うるさく朝食をしていることに、夜尭はあまり気にせず、ただ黙ってこれからについて考えていた。
すると諺瑚からは「どうして、東牙をそこまでこだわる?夜尭。」と、ふと疑問に思ったことを言った。
「そういえばお話していませんでしたね……良いでしょう。刑事さんには特別に理由を説明しましょう。」
「けっ……。」
どうやら夜尭は、諺瑚が気に入ったみたいで、きっぱりと話すと言った。
その反応に、少し不満げな顔をして、揚げパンを食べていた橋鍍が居た。
「2人とも知っていると思いますけど、東牙は元鞘嘉多の人間ですよね?鞘嘉多家は、代々続いている家系で、とても財産も持っている……と言われます。しかし、実は昔、鞘嘉多家はこれでもかというくらい貧乏な時代がありました……当時、鞘嘉多家は鞘嘉多 雅樹(まさき)という男が、中心となっていましたが、あまりの財政難で困っているとこを聴きつけた、昔からの友人である高仲 賢輔(けんすけ)が、彼に援助したのです……そこから鞘嘉多家は、大きくなり、代々続いて行きました。この関係は今でも続いていたのですが、あの鞘嘉多 東牙により、それが絶望的になったのです……。」
長々と、東牙を追う理由を言った夜尭。
まさか、この2つの家系にそんな関係があったとは知らず、諺瑚は思わず手に持っていた食パンを、落としてしまった。
しかし、ここでまた新たな疑問が生まれたという。
「そうか……しかし、鞘嘉多と言えば誰にも干渉されずという、代々の教えなのに、なぜ今でも援助しているんだ?」
「馬鹿野郎ぉ!何聞いてんだよぉお前ぇ!」
どうやら聴いてはまずい質問をしたらしい。
橋鍍は慌てて諺瑚を怒鳴った。
すると夜尭は「……それは表向きの話ですよ……そうでないと、家系が成り立たないじゃないですか……。」と、あっさり開き直ったという。
「……(はぁ?なんだそれは……むちゃくちゃじゃねぇか、この坊ちゃん……ちっ、これならまだ裏切った奴が、正しい気がするぜ……。)」
鉈崎は、すっとその場から立ち「少し、パトロールしてくる。」と、言って部屋から出て行った。
橋鍍は「あの刑事ぃ……何か考えていたぜぇ……んじゃぁ、俺も席をはずすぜぇ……。」と、続いて部屋から出て行ったという。
「……東牙、私は君を許さないからね……。」
○
「おう、交代の時間だぜ。」
「やっと交代か〜。」
その頃、城の地下では牢屋を見張っていた警備員の話があった。
「そういえば知ってるか?昨日、1人の男と1人の女がここに侵入してきたの。」
「ああ……朝の連絡であったやつか?」
「実は俺、たまたま現場を見たんだよね……あれはすごい。男は黒いマントで、腰には刀を持っていて、メガネをかけて、かなり頭脳派。女はかなり長い刀を振りまわし、なんと獣人だったんだぜ!」
「!?……(東牙!?)」
「……(東牙……?)」
牢屋の前で会話をしていたのを、盗み聞きしていた所、突然、蓮花と佳恵はその姿に思い当たる人物が、昨日をここへ侵入していたとは思わず、びっくりしていた。
「へぇ〜……それは恐い……うわ〜、殺されたくね〜。」
「まぁ、今は見張りを頑張ろうぜ……じゃあ、また12時間後に。」
そして、男たちの会話は途絶え、静かな牢獄に戻った。
蓮花は、佳恵に近づき「もしかして……私たちが、ここに捕まっているということを知っていて、ここに?」と、コソコソと会話を始めた。
「あの東牙ならありえますわね……所で、女とはどういうことでしょうか……。」
佳恵も東牙のことを気にするが、それ以前に、女と言う人物が、1番気になったという。
蓮花は「どうせまた、東牙が変な優しさをして、ついてきた感じでしょ?」と、すんなり東牙がしそうな事を言った。
それを聴いた佳恵は「……そうですわよね。」と、どこか悲しく呟いた。
「……どうしたの?」
「いえ……やっぱり東牙のことを、しっかり見ている……と思いまして……。」
どうやら佳恵は、自分より東牙のことを知っている蓮花に、少し嫉妬したみたいだ。
すると「別に5年間の付き合いだったし、それくらいちょっと考えればわかるわ。」と、佳恵の導火線に、もっと火をつける一言を言ったのだ。
「……そ、それはどういう意味でしょうか?」
「ん?そうね〜……友達以上恋人未満っていう意味よ。」
「と、友達以上恋人未満ですって……わ、わたくしでも、そこまでいかないのに……く、悔しいですわ……。」
佳恵はもっと蓮花を嫉妬する。
すると蓮花は「ひょっとして、東牙のこと……。」と、言って「あ—!違いますわ〜!」と、何も言ってないのに全否定したのだ。
そして「あら〜?私は何も言ってないのに、何が違うのかしらね〜。」と、イタズラに笑って言う。
この女、魔女みたいな性格している。
「うっ……ぼ、墓穴を掘りましたわ……。」
「ふふ、まぁでも、その気持ちはなんとなく分かるわ……なんだかんだ言ってあいつ、優しいし……ちゃんと人の事、見てくれるし……。」
蓮花は、とても意味深な言葉をぶつぶつ呟いて、そのまま佳恵から離れた。
一体この言葉の意味はと、思う佳恵だったが、ここは乙女のマナー的に、口に出してはいけないとすぐに判断して、聴かなかったふりをしたという。