複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.4 )
日時: 2011/06/25 16:52
名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)

「(今思うと少し頭を冷やした方が、良かったかもな……。)」

 外の雀が一声に鳴き始める朝の時間。東牙は起きた途端に、昨日起こった出来事を思い返し、少々反省していた。
 たぶん鞘嘉多の決まりに少し、自分とあの少女が触れたと言うことに、頭を悩ませていたのだろう。
 一応鞘嘉多の関係者は、あの場に居なかったから今回は大丈夫だが、これからはもう少し冷静にいこうと誓ったその途端。

「東牙殿!」
「うわっ……なんだ爺さんか……いきなり襖を開けるな!……で?なんだ。」

 襖をガラッと勢いよく開けたのは、東牙の執事であった。
 本人はとてもびっくりしたが、ものの5秒でいつもの冷静状態に戻った。

「この爺嬉しいですぞ……まさか、あの人混みが大の苦手な東牙殿が、昨日1人で祭りに行かれたのですぞ!」
「……その情報の発端は?」
「昨日ここの関係者が見回りしていたら、東牙殿が出て行く姿を見かけたらしいですぞ。」
「(……少々不味いな……)ふむ……そうか……いや、偶には俺も外を歩きたいと思ってな。」

 東牙は少し不味そうな顔をして話を続けた。
 もしあのやりとりが見られていたら一貫の終わりだからだ。

「しかしこの爺喜んでばかりではありませんぞ!出かけるなら一言言って下され!何かあったら大変ですぞ!?」
「あ〜……それは悪い事したな……すまん……。」

 この流れは大丈夫だなと思った東牙は、もう安心して話しに集中した。

「……東牙殿……もしかしてですぞ?今日も祭りに行かれたりは……。」
「……するかもな。」

 東牙は一瞬考えた。
 もしかすると、またあの木葉家に会えるかもしれないし、またそこで改めて話が聞けるかもしれないと、なので、少し黙って、祭りに行くかもしれないと発言した。

「おお……まさか2日連続で行かれるとは……もちろんこの爺許可しますぞ!」
「ありがたい。」

 実は東牙の両親はもうすでに他界していて、この老爺が東牙の親代わりであったりもした。 
 なので口うるさい発言はお互い了承しているので、特に変わったことでもない。

「ですが……今回の件はさすがに1人では行かせませんぞ……。」
「だと思ったよ……条件はなんだ?」
「な〜に簡単ですぞ!東牙殿の隣に、用心棒を置くだけですぞ。」
「用心棒?どんな人だ?」

 さすがに、後継者が祭りのど真ん中を歩くのは、いけないと思った老爺は、今日だけは、用心棒を置くことにした。
 東牙は別によいという顔をしたが、一体どんな用心棒なのか気にはなった。
 なお、鞘嘉多家では偉い人を守るための目的で、用心棒を配置するのは特例で認められている。
 しかし、その用心棒が、偉い人に指図することはできない。偉い人も、用心棒に指図して行動させることもできないという条件付きで。

「半年前に鞘嘉多家に仕える用心棒を募集して、見事適性試験に合格した用心棒名前は確か“佐奈観 佳恵(さなみ かえ)”と行ったかのう……しかも!まだ10代後半の女性ですぞ!」
「なんで最後の部分を強調したんだ?……佐奈観 佳恵か……果たして刀の腕はどうか……。」

 東牙は自分の刀をチラッと見て、これは是非お手合わせ願いたいと一瞬思った。
 そして、老爺が1回くらい対面した方がよろしいと言って、早速東牙に佐奈観 佳恵という人物を会わせた。


                ○


「佐奈観殿〜!」

 老爺は佳恵が鍛錬している庭に入っては、大声で名字を叫んだ。

「ん?もしかしてあの着物を着た人か?(動きにくい服装なのにあの身軽さ……これは期待できそうだ……。)」

 東牙は庭のど真ん中で刀を持って、鍛錬する着物を着た女性をみて、さらに手合わせしたい気持ちが増幅した。
 そして、こちらの気配を察知したのか、着物を着た女性はすぐに刀を鞘に戻して、2人が居る方向に振り向き

「はい。どうしましたか?あら……可愛い男の子ね……ふふ。」

 最初の第一声を発した。 
 東牙は生まれた初めて言われた言葉に、少々戸惑っていた。
 余談だが東牙を見た人達が最初に思う第一印象は大抵“堅物そう”“冷静そう”だという。

「佐奈観殿……この方が先程お話した鞘嘉多 東牙殿ですぞ。」
「あら?そうでしたか……先程のお言葉、大変失礼しました鞘嘉多殿……。」
「いや気にしないでください……えっと佐奈観さん?俺のことは別に東牙だけで良いですよ?これから使役関係になるんですし、堅いのはない方が良いですよね?」

 東牙よりは背が少し高くて、肩に掛かるくらい長い黒髪、目はこれでもかというくらい垂れていて、瞳は緑がかった黒、話し方は少しトロンとしていた。
 そして、無駄な飾り付けがない薄青い着物をきているのに、胸は結構あって少しぎこちなかった。
 東牙的に解釈すると、刀を持ったかなり垂れ目の大和撫子だけど、けっこう巨乳でもったいない女性らしい。

「では東牙も私のことは佳恵と呼んで下さりますよね?」
「もちろん……佳恵……さん(ううむ……けっこうペースに乗れないぞこれは……。)。」
「東牙殿!佳恵殿のご厚意が無駄になりますぞ!」
「爺は黙ってくれ!」

 もしかすると東牙はこういう年上の女性だと、調子が出ないのかもしれない。
 それもそのはず、長年1人で考えて育ったのだから、いざ女性で、しかも自分より年上(大人)の人と対面すると緊張するに決まっている。
 そんな東牙を見て佳恵は、また心の中で「可愛い男の子。」と呟いたらしい。

 そして、色々やり取りした後、東牙と佳恵は祭りに向かった。そんな2人を老爺は少しほほえんで見送ったという。






 え〜…キャラなどの詳しい設定に関してはしばらくお待ちください。