複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…   タイトル変更しました。 ( No.40 )
日時: 2011/07/28 13:16
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「安心しろ……急所は狙ってねぇ……だけど、そのままにしたら大量出血で死ぬがな……。」

 諺瑚は、腹部から血を出して倒れている楓に、小声で呟いたという。
 どうやら刑事の銃は、改造によって本来16発撃てるのに、ワザと15発撃ったらリロードをしていたらしい。
 その事に気がつくだろうという、相手の裏をかき、楓は見事その策にはまったのだ。

「俺だって何も考えずに銃を撃っている男じゃない……じゃぁ、あばよ……。」

 諺瑚は最後の言葉を言って、そのまま階段へ上り、東牙を追おうとした途端「待て……私は……まだ倒れていない……。」と、楓はふらふらと立ちあがり、刀を構えて諺瑚に言った。

「死にぞこなった犬が……よっぽど命を粗末にしたいようだな……。」
「私は約束したんだ……東牙に一生ついていくと……こんな所で……こんな所で死ねない……。」

 楓の目は、どことなく普段よりも獣っぽさが出ていて、気の弱い人がまともに見ると、恐怖で倒れてしまうくらい恐ろしかった。
 そしてそこから、今までにない速さで、諺瑚の懐に向かい刀を振る。
 これには思わず、態勢が不完全だったため、上手く回避ができず、左目の下に楓の刀が深く当たった。

「何っ……まさか俺が一撃を食らうとは……。」
「獣の身体能力を甘く見ないでほしい……うっ……。」

 楓は途端に、頭を押さえつけその場に膝松居た。
 どうやら、あまりにも出血量が多くて、だんだん意識を保つのが難しくなってきたのだ。

「獣は獣でも……血は人間と同じか……。」

 諺瑚は膝松居た楓の頭に、銃を突きつけた。
 そして「俺は基本的に人の命はとらないが、公務執行妨害をしまくった奴には容赦はない……。」と、殺す気満々のセリフを言った。

「ふふ……やっぱり無理か……ごめん東牙……約束……守れなくて……。」

 楓は死を覚悟したのか、最後にこんな言葉を呟く。
 そして諺瑚が引き金を引こうとした瞬間。
 —————————————————「待てぇ鉈崎ぃ……。」
 おぞましい声が、ギャラリーから聴こえた。
 すっと銃を降ろし「橋鍍。今更何だ?」と、不機嫌そうに刑事は言った。

「そこの犬を殺すのは、お前じゃねぇってぇことだよぉ……四天王のくせにぃ、裏切り者の同情をした罰を与えねぇとなぁ……。」

 橋鍍は魔道書をパラパラめくり、あるページを開いて、なにやら呪文のようなものを唱えた。
 すると辺りは、突然禍々しい空気になり、思わず気分を悪くなってしまうくらいだった。

「おいおい、なんだよこの気味悪い空気は……。」
「くっくっく……今に見てろよぉ……楓の……本性が見られるからよぉ……っと、丁度よく来たみてぇだなぁ……。」

 橋鍍は後ろを振り向き、3人ほどこちらに向かってくるのが見えた。
 そして「おいぃ……ずらかるぞ鉈崎ぃ……。」と、諺瑚に言って、有無を言わさず反対側のギャラリーに連れて、この場を後にした2人だった。

「うっ……この空間……この禍々しい感じ……やめろ……やめてくれ……私は……こんな姿を……東牙に……みせたく……。」

 楓は悶え苦しみながら、その場に倒れてしまった。