複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… タイトル変更しました。 ( No.41 )
- 日時: 2011/07/28 13:32
- 名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
私は犬頌 楓。
犬頌 楓?
どうして私には名前があるんだ?
名前も貰われず捨てられたただの獣人なのに。
親の顔も全く知らない私に、そう名づけるのは誰だ?
どうせお前も私を捨てるんだろう?
気安く名前を付けないで欲しい。
だけど嬉しかった……初めて名前と言う物を貰ったんだから……だが、お前はすぐに私を捨てた……ただ目が怖いという理由で捨てられた。
なら代わりに私は、お前から貰った名前を捨て……捨て……捨てられない……どうしてだろうか?
私を捨てた酷い奴の付けた名前なんていらない……いらないのに……捨てられない……。
「楓……しっかりしろ……。」
やめてくれ……その名前を呼ばないでくれ……私はその名前で、ずっとここまで生きてしまったんだ……名前さえなければ……名前さえなければ……未練を残さず死ねたのに……全部お前のせいだ……。
「こら!楓とかいう女!勝手に死ぬとかやめてくれない!?」
お前は言ってくれた。
君には犬頌 楓という文字が似合っていると……一晩真剣に考えてくれたのに……お前は私を裏切って捨てた……憂さ晴らしに名前を捨てて死のうと考えたのに……考えたのに……名前がどうしても捨てられず死ねなかった……。
「このまま死んでよろしいのでしょうか?楓さん。」
死にたい……名前を捨てて死にたい……殺してくれ……私を呪いから解くために殺してくれ……。
「殺してくれ—!」
楓は突然ばっと起き上がり、刀を持ち、傍に居た誰かに一閃をする。
一閃されたのは東牙で、あまりに突然すぎてさらに無防備だったので、モロに上半身を斬られてしまった。
「うっ……ど、どうした楓……。」
「お願い……私を殺して……殺して……。」
楓の目は完全に獣目となっており、かなり威圧も持っていた。
そして東牙に刀をまた振る。
——————————————————ガキン。
刀と刀が当たる音。
どうやら東牙に当たる寸前で、佳恵が止めたようだ。
「か、楓さん……何があったか知りませんが……今の東牙に殺してという言葉は、少々無意味ですわよ……。」
楓はその場から、例の法則で少し後ろに飛び「私は名前を貰ったせいで死ねない……だから殺して……。」と、今度は佳恵に素早く一閃をした。
————————————————ガキン。
またもや2人の刀が当たり、その場で押し合いになった。
「名前貰ったせいで死ねないとは、どういう意味でしょうか……。」
「私は元々捨てられた獣人……だけど、あいつは私を拾い名前を付けてくれた……でもあいつも、最後に私を捨てた……だから私は、憂さ晴らしに名前を捨てて死のうと考えたのに、初めて貰った名前が嬉しくてそのまま捨てられず、生きてしまったんだ!だから……殺して……。」
楓は全身に力を入れ、思いっきり押した。
佳恵はあまりにも強い力に、思わず刀を手放し素早く横に動く。
すると「あ—……話はだいたい把握したわよ……でも私から一言言わせてもらうけど……あなた馬鹿?」と、横から蓮花の声が聴こえた。
「くっ……私の気持ちを知らないで、なにをそんな口を聞いている……。」
「そうよ。あなたの気持ちは全く分かんない……だけど、名前を貰って悲しい人は絶対に居ないわ……確かに名前を付けた人は、あなたを捨てた。でも考えてみなさい!あなたに名前を付けようとするその人の気持ちを!どうしたら周りから理解される名前になるだろうか?どうしたら周りから疎外されない名前になるだろうか?どうすれば……あなたが気にいる名前になるだろうか?その人は、数えきれないくらいの思いであなたに名前をつけようとしたのよ!それを捨てたい?何馬鹿なこと言ってんのよ!」
蓮花は長々と、楓に怒鳴りつけた。
人につける名前の深い思いについてたんたんと。
すると楓は「お前は……そこまでして考えてくれたのか?そうだとしたら私は……私は……。」と、刀をカランと落としてバタリと倒れた。