複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…   タイトル変更しました。 ( No.43 )
日時: 2011/07/28 14:57
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

           〜六目 巫女と鈴と刀と……〜


「失礼〜。東牙お粥持って来たわよ?」

 部屋をガチャリと開けたのは、お粥を持ってきた蓮花だった。
 東牙はベッドで本を読みながら「すまないな蓮花。」と、パタリと閉じてお粥をもらった。

「あんたって、暇なときほど本を読むわよね……本当、昔から変わらないね〜。」
「本を読むと心が落ち着くからな……お前も読んでみると良い……てか、読め……。」

 部屋で2人は楽しく会話をしていた。
 東牙の傷はとりあえず、徐々に治っていったが、楓の方は未だに治っていないという。

「あれから2日が経つ……あっちもそれなりの対策をしているだろうな。」
「ふ〜ん……でも、あんたならどんな対策をされても、すんなり行きそうよね。」

 蓮花は笑いながら東牙を見て言った。
 すると「俺はそこまで頭が回るような奴ではない……。」と、お粥を食べて否定したという。

「でも私より頭は回るでしょ?」
「そりゃそうだ……本を嫌う蓮花とは違うのでな。」

 この返答によって、蓮花はむっとした顔になり「それは認めるけど、あんただって私に勝てないことはあるのよ?」と、なぜか対抗をしてきたという。

「まぁな……俺に家事は全くできん……そこは認めるよ。」

 気が付いたらお互いを認め合っていた2人。
 5年間も、いつもこんな会話しているんだから、とても笑える。

「さて、楽しい話をそこまでにして……あんた今まで何やってきたのよ?」
「……それはいままでの経緯を話せと解釈する。」

 東牙は木葉家を抜け出して、いままでの行動をある程度偽りなく簡潔に話した。
 九寺を殺したことも、楓を助けたことも、佳恵にビンタされたことも、あの謎の巫女に会ったことも、だがさすがに、楓と一緒に寝たことは言わなかったらしい。

「……そう、けっこうやらかしてるわね……でも良かった。東牙が本当に復讐のために動いてるんじゃないって分かって。」

 蓮花からは、いままで東牙を心配していたということが、分かるセリフが出てきた。
 復讐のために戦うだけの、東牙になっていなくて良かったという安心感が、彼女の顔に現れていた。

「実は私が巨乳女と捕まっているときに、ちょっと東牙の事を聞いたのよね……まさか四天王の1人を殺したなんて、思いもしなかったから、あの時はびっくりしたわ。だけどあの楓っていう子も四天王なんでしょ?でも東牙は生かした……それって完璧に、復讐のためには動いていないことになるでしょ?だから安心したの。」

 蓮花はもしかして、ずっと東牙の事を誰よりも心配しているのだろうと思われるセリフを呟く。
 すると「だが俺にはまだ、復讐をするという心はあるもしかするとまた……。」と、意味深な言葉を呟いた。だけど蓮花は。

「はいはい。あんたは本当に世話が焼けるわね……その時になったら私が全力で止めてあげるわよ!」

 この雰囲気を無視する、まさかの言葉に東牙は、思わず拍子抜けをしてしまって「やはり蓮花らしい。」と、少々笑って言った。

「失礼しますわ東牙、怪我の方は大丈夫でしょうか?」

 コンコンとノックが聴こえて、ガチャリと佳恵は2人の部屋に入ってきた。
 すると「あの楓っている子はどうだったの?」と、蓮花がどういう状況なのかを聞いてきた。

「残念ですけどやはり一言も喋らず、ずっと頭を下げていましたわ……あれでは城には行けません。」
「そっか……少しでも多い方が良かったけど、仕方ないよね……。」

 2人は楓のことを、とても心配していたのに、東牙はただ黙って、ずっと何かを考えていたという。

「せっかく弄りがいのある人ですのに……。」
「いやいや……それはちょっとおかしいわよ!」

 そして最後は脱線する2人の会話。
 最初はきちんと心配していたのが嘘のように。
 だけど東牙「こんなんでもちゃんと、蓮花と佳恵さんは心配しているんだよな……。」と、心の中で感心をしていたという。


                ○


「さぁてぇ……これからどうするぅ?鉈崎ぃ……。」
「どうするもなにも東牙をどうにかするしかねぇって……。」

 城の廊下で、2人は例のごとく話をしていた。
 城に居る関係者曰く、このツーショットは飽きたという話が広まっているらしい。

「だけどよぉ……俺思ったんだぁ……あいつらは強えぇ……今度来たら間違いなくやられるぜぇ?」
「そんな馬鹿な話があるか、いままでの出来事を振り返ってみろ……。」

 橋鍍の言葉に、諺瑚は少し納得いかなかったのか、少々ガラの悪い声で言った。
 しかし「鉈崎は分かってねぇなぁ……何も力があれば強えぇって事じゃねぇんだよ……俺はただあいつらの“気持ち”が強えぇって、思っているんだよぉ。」、とこちらも負けないくらいガラを悪くして言った。

「けっ……お前の言う事はたまに分けわからないぜ……。」

 諺瑚は先程の言葉を聞いて、少々腑に落ちない感じで、白旗をあげそのまま黙って歩き始めた。

「どこに行くぅ鉈崎ぃ?」

 橋鍍は問いかけるが、ただ「弾の改造だ。」という、返答しか来なかったという。

「……ん?なんだぁ……。」

 橋鍍は突然、自分の通信機が鳴っていることに、気付くが、全く慌てずにでたという。

「どうしたぁ姫狗ぅ?……ん?おおぉ!そうかぁ!……よくやったぜぇ……とりあえず俺はぁ、まだ城に居るからよぉ……ゆっくりぃ向かってくれぇ……じゃあな……。」

 どうやら通信機の先は、もう1人の四天王だったらしく、その連絡に橋鍍は嬉しくなったという。
 そして通信機を切っては「さぁてぇ……東牙をどうにかしたらまたぁ仕事だぜぇ……。」と、呟きそのまま歩きだしたという。