複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.47 )
日時: 2011/06/21 23:36
名前: コーダ (ID: UXIe.98c)



「ったく……こんな簡単に入れてしまうと逆に緊張感がなくなる……。」

「東牙?もう右腕は大丈夫なのでしょうか?」


 3人は警備員をいとも簡単に退いて城のエントランスで会話をしていたという。

 佳恵はいままでの戦闘で東牙が利き腕で刀を振っていた事に気が付き思わず心配をしたという。

 すると「そんなこと気にしていたらいつまで経っても勝負に終止符をつけれないぞ佳恵さん?」と東牙は若干忠告を無視したという。


「でもそれで何かあったら楓に顔を見せられないわよ?」

「……そうか。」


 蓮花のツッコミは意外にも東牙の心に来たのか素直に無茶をしないと思ったらしい。


「うふふ……それでこそ私の知る東牙ですわ……。」


 佳恵はニッコリ笑いながら東牙に言った。

 すると「ま、まぁな……人が悲しくなることはできるだけ避けたいし……。」と少々照れながら言ったという。


「あら〜?東牙からそんな言葉が出てくるなんてね……ちょっと見なおしたわ。」

「まるで俺がいつも人のことを考えていないような言い方だな……。」


 こんなこと言っている東牙だが内心はとても嬉しかったという。

 最初は復讐のことしか考えておらず人のことは二の次だったのにだんだん人のために行動できるようになってきた心の変化に蓮花は「ふふ……東牙も変わってきたわね……ちょっと嬉しいかも。」と心の中で呟いていた。

 しかし、まだまだ安心はできないという事も心の奥底で呟いていた。


「さて……行くぞ……!!」


 東牙が気合いを入れて2人に言った瞬間。


 ———————————————————————バンッ。

 ギャラリーから銃声が聞こえたという。

 そして左上のギャラリーから「待っていたぜ……東牙。」と銃を突きつけながら諺瑚の姿が見えた。

 東牙は「ふんっ……俺もお前を待っていた……今日こそ決着をつけさせてもらう……!」とそのまま蓮花と佳恵を置いていき階段を上って諺瑚が居るギャラリーに向かった。


「ったく……ちょっと熱くなると目の前のことしか見えないのは相変わらずね……。」

「私たちも行きましょう……。」


 蓮花はやれやれと両手をあげて言った。

 そして佳恵と共に東牙の後を追った瞬間。

 ———————「くっくっく……俺を忘れては困るぜぇ……。」

 諺瑚が居る反対側のギャラリーか黒い男が現れた。


「橋鍍……ようやく来たか……。」

「悪いねぇ……ちょっと遅れてよぉ……だけどそこの女2人は任せなぁ!」


 諺瑚はその言葉を聞くと「……すまない、そちらは任せた。」と言ってそのまま走ってどこかに言ってしまった。

 東牙は「おい……待て……。」と諺瑚の後を追った。

 蓮花と佳恵も行こうとするものの「おいぃ……言っただろぉ?お前らの相手はぁ俺だってよぉ……。」と橋鍍は呪文を唱えて2人の目の前に闇のような壁が現れたという。

 さすがに行く手を塞がれてしまっては戦うしかないと思った2人はそのまま振り向き戦闘態勢に入った。


「東牙が心配なら俺を早く倒しやがれぇ……まぁ、倒せるかどうか知らねぇけどなぁ……。」

「言われなくともそうしますわ……それに私はちょっとあなたの事が気になるのですわ……。」


 ここで前に出たのは佳恵だった。

 あの時会ってからずっと気になっていた事を知るチャンスでもあったからだ。


「なにがなんだかわからねぇが……姉ちゃん俺に惚れたかぁ?」

「……そう意味ではありませんわ。私はあなたの人間とは思えない雰囲気が気になっているだけですわ……。」


 あの佳恵が珍しく前に出ていくのはそうそうないそれほど橋鍍という男が気になっている証拠だろう。

 蓮花は「ふふふ……この場はあんたに任せようかしら?」と冗談半分に言ったが「すみません……ありがとうございます……。」となぜかお礼を言われてしまったのだ。意外な反応が返ってきて蓮花は「なるほど……これは邪魔しちゃダメね……。」と心の中で呟いたという。


「伊達に用心棒をやっていないようだなぁ……くっくっく……俺が人間にはない雰囲気ぃ?そりゃそうだぁ……だけどよぉ……そう簡単には教えてやれないぜぇ……。」


 橋鍍は不気味に笑っては魔道書をパラパラめくりあるページに書いている呪文を唱えた。

 すると橋鍍の足元からは十角形の魔法陣が現れそこから不気味な闇がエントランス全体を包んだという。

 禍々しい空気に思わず気分が悪くなってしまう感じだった。


「なるほど……あなたは闇の魔法を専門に使う魔道士……弱い光では決して消せない闇……そもそも闇魔法使いは赤紅最高裁判所が超危険魔道士としてマークしているのよね。」


 蓮花はこの禍々しい空気で橋鍍がどんな魔法を使うかを1発で判断した。

 だけど佳恵は全く怯みもせずそのまま橋鍍が居るギャラリーまで走ってそのまま懐に入り刀を振った。

 ————————————————————————シャキン。

 刀を見事に橋鍍の体を斜めに斬り致命的な一撃をお見舞したが「くっくっく……甘いねぇ……。」となぜか橋鍍は笑って佳恵を見た。

 斬られた場所からは一切血は出ず出たのはおぞましい闇だけ。

 この瞬間佳恵は少し後ずさりをして様子を見ていた。


「あなたは……一体何者でしょうか……。」


 刀を両手で持ち佳恵は橋鍍に何者かを聞いた。

 すると「くっくっく……なら答えてるよぉ……俺はなぁ……1回この世から死んだけど未練が多すぎて成仏できなかった男だぁ……。」と言った。

 これを聞いた蓮花は「ふふふ……なるほどね……言い方を変えるとあなたは人間を捨てて死魔道士(リッチ)になったってことね……これは本気で危ないわ……。」といつもより目つきを鋭くして橋鍍の正体を呟く。

 そして「油断しない方が良いわよ巨乳女……こいつ本気だしたらすぐに地獄行きパスを貰えるわよ……。」と佳恵に警告する。