複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.48 )
- 日時: 2011/06/21 23:43
- 名前: コーダ (ID: UXIe.98c)
「死んでも死にきれないくらいの未練ですか……それは一体……。」
「言ってもわからねぇと思うけどよぉ……俺は元々長男として柿崎家に生まれ育った……柿崎家は父、母、弟が4人、妹が3人……俺を含め8人家族だったんだぁ……家は貧乏で生活をしていくのがやっとというくらいきつい……だけど俺はよぉ……長男として少しでも家を裕福にしたいと思ったぁ……するとある日ぃ、俺は偶々“魔法研究員”という職を見つけた……新しい魔法の開発をするだけで給料はすげぇ貰えた……俺は決心した。魔法研究員になるとなぁ……だけどのそのためには魔法専門学校に行かなくてはならなくなり学費は馬鹿みたいに高かった。だけど父と母は反対せずむしろ喜んで行かさせてくれたぁ……そして努力の末俺は無事に卒業することできてすぐに念願の魔法研究員になれたぁ……この事をいち早く父と母に知らせるために俺は家まで歩いたけどよぉ……気が付いたら俺の体全体からは血が流れていた……どうやら通り魔に会ってそのままバッサリ斬られたみてぇだった……あまりの出血量に俺はそのまま死んでしまったぁ……。」
佳恵は黙って橋鍍の過去を聴いていた。
しかしまだこの悲しい話は序章に過ぎなかったという。
「それからだぁ……俺が死んだという連絡が家族に行きわたりそのまま葬式が行われた……そしてそこから生まれたものはよぉ……莫大な葬式費……元々貧乏だった家に俺はさらに追い打ちをかけてしまった……そして、葬式費を払えないと判断した家族はそのまま……全員自害したぁ……俺のせいで家族は死んだ……死んでも死にきれねぇと思った俺は死後の世界である呪文を唱えた……それはまたこの世に生き返ることができるが代償として人間のような雰囲気を出せず、しかももし成仏をしたら一生地獄で苦しむといういわば闇の契約だった。もちろん俺は何もためらいもなくその条件を飲んだぁ……。」
橋鍍は簡単に自分の過去を話した。そして最後に「俺の未練はよぉ……この世に居る富裕層を全員殺すことだ!」と大声で叫んだ。
蓮花と佳恵はこの男のように貧相な暮しを一切せず恵まれた環境で育ったため何も言えずただ頭を下げて黙っていたという。
「貧相な家庭に何も援助しねぇこの冷たい社会に俺は終止符を打つ……それを果たすまで死ぬわけにはいかねぇんだよ!」
橋鍍は魔道書を開きまた呪文を唱えだした。
すると佳恵の足元に魔法陣が現れそこから5〜6本の黒い手が現れ佳恵の足を掴んだ。
「うっ……動けませんわ……。」
「当たり前だぁ……その手は地獄に無理やり人間を連れて行くヘルハンドだぜぇ……。」
橋鍍はこのまま佳恵を地獄に連れ去ろうとした。
だけど彼女は焦りもせずかえって落ち着きながら「あなたはとても良い兄ですわ……人として尊敬できます……家族のために兄としてできることを一生懸命やる……その心はとても好きです……ですが、その未練は許せません……そんなことしたら家族が悲しみますわよ……。」と言った。
「ふざけるなぁ……そんな綺麗事ぬかしやがってぇ……どうせ姉ちゃんには俺の苦しみがわからねぇからそんなことが言えるんだろぉ!?」
「……確かにそうですわ……私は生活に困ったことはありません……そこは謙虚に受け止めています……だけど、その未練によってあなたを壊していることは分かってください!」
佳恵は橋鍍にそう叫んだ。
せっかく家族思いの素晴らしい男性なのにその未練によって台無しにしていることに気がつかせるため。
しかし橋鍍は「壊れているのは姉ちゃん達の方だろうぉ?」と全く佳恵の言葉を聞こうとしなかった。
すると「グリモワールオブエレメント・マルトアンドデクアルプ、第87章『ジャッジボルト』……。」と蓮花が呪文を唱えていたという。
詠唱を終えた瞬間上空からドカーンと佳恵の周りに居る黒い手は聖なる雷に討たれそのまま何もせずに地獄に帰って行った。
そして、聖なる雷は次に橋鍍の持っている魔導書を討つ。
これにはびっくりして思わず魔導書を落としたという。
「いくら良い事をしていてもそのわずかな行動で一気に悪人へとなる……それに気づかないあなたには有罪と言う言葉しか出ないわ……ふふ……。」
杖をくるくる振り回し本職の癖が出た蓮花。
そしてまた「グリモワールオブエレメント・デクアルプ、第34章『聖魔閃々』……。」と呪文を唱えた。
すると佳恵の刀に聖なる光の力が宿ったという。