複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.59 )
- 日時: 2011/06/22 22:10
- 名前: コーダ (ID: xlOcEZUh)
「そういえばお前仕事は良いのか?」
「うん、仕事仲間にちょっと怪我をした女性を看病しているって言ったら、完治するまでいてあげなさい。それまでの間有給にしておくから。とか言われたから大丈夫だよ。」
そうか、実際私がここに居ることは迷惑なんだよな……早く傷を治さないと……。
「すまない……私のせいで……。」
「ううん。こうして楓の命を救えるんだから僕は全く苦じゃないよ……そういえば聞き忘れたんだけどどうして楓はあんな場所で倒れていたの?」
その説明ならものの5秒で済む……私はどっかの狩猟者に撃たれただけだ……丁度その時は人の姿をしていなくて本当に狼の姿をしていたから……。
「えっ?楓って本当に狼になれるの?」
「まぁ……この姿の方が楽だし着物と刀の事情であまり狼にはなりたくないんだけど…」
元々獣人として生まれた私だから狼になるのはおまけみたいなもの。
とんでもなく急いでるときくらいしかならないし……。
「へぇ〜。」
「正直いらない気もするけど……。」
勘違いしないで欲しいけど私は狼になるというものは要らないだけで、耳と尻尾をいらないとは言っていないからな……まぁ、ちょっと矛盾してるけど良いよね?……だめか?
○
「う〜ん……おは……あれ?」
それから3日が経った。
私はいつも通り起床するとなぜかお前は居なかった……どうしたんだろうか?とりあえず私はベッドから起き上がりそこら辺を探した。
するとテーブルの上に1枚の紙があった。
「うん?なんだこれは……。」
おはよう楓。
突然だけど、もうここから出て行ってくれる?僕は元々君の獣目が嫌いでいつも目を合わせられなかった。
いや、合わせたくなかったんだ。
そんな理由で早くここから出ていってほしい。
これは忠告だよ。
もし逆らえばもっと痛い目に合う……良いかい?
えっ……どういう事?これってもしかして……また……捨てられるって……事?
「そんな……どうしてだ……どうして!?」
私は突然すぎる内容に頭が混乱していた。
そして気が付いたら刀を持ちそのままここから逃げ出すように出て行った……何も考えずただ道ある道をただずっと走った……。
○
「…………。」
一体どれくらい走ったのだろうか……辺りは見たことのない渓谷……私はまた捨てられた……1度ならまだしも2度までも……。
「目……私の目が悪いの!?」
最初に捨てられた時もそうだった。
母から「お前の目は普通の獣人よりもおぞましい……。」と言われ捨てられた。
そして今日もそうだった……でも、なぜか分からないが最初に捨てられたショックよりも今日捨てられたショックがとても大きかった……。
すると私は刀を鞘から抜きそのまま自分の腹部に突きつけた。
このまま生きても辛い事ばかり……ならいっそのこと死んでしまうと考えたからだ……だけど、突きつけたはいいけどそこからピクリとも動かない……どうしてなのだろうか……やっぱりお前との出来事が充実していたから?お前から初めて名前と言う物を貰ったから?いや違う……お前は私を捨てたんだ……今更そんなこと関係ない。
いっそのことお前から貰った名前も捨ててから自害するか?いや……それは……できない……名前を貰えてあんなに嬉しかったんだ……捨てられるわけがない……自害できるわけがない……。
「全部……お前のせいだからな……。」
私はそう呟き刀を鞘に入れそのまま歩き始めた。
お前が名前なんて考えるから自害しようにも自害できないんだ……。
そして私はただただ放浪していた……自分が住みやすい場所を探すためだけに……すると、私はある張り紙を見た……それは鞘嘉多四天王を募集する広告……種族、職業は問わずただ相応しいかだけをテストするものだった。
私はどうせ無理だろうという気持ちで申し込んでみたが……獣にしかない身体能力が評価され即合格となった……それから今に至る。