複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.60 )
日時: 2011/06/22 22:11
名前: コーダ (ID: xlOcEZUh)



「だけど……よく考えるとお前が居なかったら私はここまで生きていなくて東牙にも会えなかったことになる……。」


 宿屋のベッドで1人ぶつぶつ呟く楓。

 どうやらずっと辛い過去を思い出していたらしい。


「はぁ……そう考えるとずっとうじうじ悩んでいた私が馬鹿みたい……。」


 窓を開けて空を見上げた楓。

 どうやら何かが彼女の中ら吹っ切れたようである。


「東牙は母、お前と違って私の目を好きと言ってくれたらしいぞ?いままで恐ろしいとか怖いとか言われたけど東牙は違う……。」


 コンコン、とノックが聴こえた。楓は清々しく「入っていいぞ。」と一言言った。


「その様子だと吹っ切れたようだな……。」


 部屋に入ってきたのは城を後にした東牙だった。

 すると楓は「なぁ東牙?私の目……どう思う?」と尻尾を大きく振って質問をしてきた。

 東牙は近くにあった椅子に座り楓の目をじっと見て「俺は楓の目は好きだぞ?その真っすぐとした瞳……人間には持てないからな。」と言った。

 楓はその言葉を聴けて嬉しかったのか次に「じゃあさ……私のこと一生……捨てない?」と聞いてきた。

 東牙は「当たり前だ……楓は俺達の仲間だろ?捨てるわけがないだろ……。」と一言呟く。


「そうだよね……うん、ありがとう…………東牙。」


 楓はお礼を言っては部屋を嬉しそうに出て行った。

 東牙は「もう大丈夫だな。」と安心してそのままそこで本を読み始めたという。

 例え過去が悲しくても今こうして幸せならそんなことどうでも良いだろうと楓は今この時思っていたという。

 それを教えてくれたのは自分の仲間達で主に東牙だった。

 もしこのまま東牙に会っていなかったらまた死のうとか考えていたに違いない。

 そして楓は「もう一度お前と話したい。あの時どうして私を捨てたのかを……あまりにも突然すぎるから違う理由があるのではないか?」とひそかに心の中でこんなことを誓ったという。

 なお、宿屋の受付では「キャン!」と鳴く声と「こら巨乳女!」と叫ぶ声が聴こえたという。