複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.73 )
- 日時: 2011/06/25 19:19
- 名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)
蓮花は、突然声を若干低くして、東牙にこう質問をする。
この復讐を終わらせたらどうするか?という真面目な質問に東牙は「正直考えていない……。」と正直に答えた。
「そう……特に目的はないの?」
この一言が、何気に、東牙にとってかなりグサリと、心に響いたようだ。
確かにそうである。今の目的は、この復讐に終止符を打つ。
だけど、それからどうするかという目的は、いくら考えても出てこなかったからである。
それから、ずっと黙って目標を考えていたが、出る気配はなかった。
すると「目的がないなら……またしばらく家で、過ごして考えて良いわよ?」と蓮花が一言言うが「いや、せっかくだが遠慮する。」と丁重に断った東牙だった。
断る理由は簡単で、これ以上“蓮花に迷惑をかけたくない”ただそれだけの理由で、東牙は言った。
だが、その心は読まれていたのか「あんたってさ……他の人に迷惑をかけたくない気持ちが本当に強いよね……あの時、私を置いて家を出て北の都会地に行った時もそう。せっかく会った巨乳女にも一緒に行こうとしなかった時もそう。東牙は自分のいざこざに、他人が巻き込まれることが嫌い……だから黙って家を飛び出したり巨乳女にあんな言い方したんでしょ?」と長々と呟いた。
「当たり前だ……俺の事は俺で解決する……言い方は悪いが、あまり他の人達には助けられたくない。」
メガネをくいっと上げ、東牙は自分の心を蓮花に言う。
自分のことは自分で、という一匹狼みたいな言葉に蓮花は「それはそれで良いけどさ……私はいまいち東牙の言う事が、理解できないのよね〜……だって、人は1人では生きていけないのよ?あんたはいままで1人で生きてきたの?……違うでしょ?周りの人が居たから、こうして生きてこれたんでしょ?」と裁判官らしく正論を言う。
これには、さすがの東牙も、口答えもできずただ黙っていたという。
そして「私ね……あんたのこと放っておけないのよ……5年間一緒に住んでてずっと思った……東牙は私が傍に居ないとって……。」と蓮花も、東牙に自分の心の内を告げる。
自分のことをこんなに心配してくれているのに、何1つ気付いてあげられなかった。
そんなことを知らずに、ずっと酷い行動をしていた自分。
振り返れば、数えきれないくらい蓮花に酷いことしていたのだな、と思った東牙は「すまない……いままでずっと気づいてあげられなくて……。」と悔しそうに一言呟いた。
周りが居るから自分が居る。
このことを気づかせてくれた蓮花に、東牙はまた何かが吹っ切れたようだった。