複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.8 )
日時: 2011/06/25 18:14
名前: コーダ (ID: 5hG5Ocn3)

「……これは大変なことになりましたわね……後をついてきたのですが……こんな事を聴くとは思いもしませんでした……。」

 同時刻。木葉家の外では、洋館に背中を預けていた女性が居たという。
 その女性は、自分の主が居る部屋と思われる場所に、ずっと居て、盗み聞きもしていた。
 しかし聴かされたのは、とても深刻なことで、女性は少しどうしようか悩んでいた。

「これは報告するべきでしょうか?……悩みますわね……。」

 この事を、鞘嘉多家の関係者に報告するか、否かで、女性は悩んでいた。
 もちろん報告すれば、自分の主はひどい時には即死刑。
 だからといって、黙っていれば自分も死刑になる可能性もあるという葛藤に襲われていた。

「誰だ!?こんな所に居る奴は!?」

 どうやら、木葉家の関係者に自分の姿がバレてしまったらしい。
 しかし女性はいつもの口調で

「あら……だめでしょうか?わたくしはここに居たくて、ここにいるのですが……。」

 木葉家の関係者に言った。
 だが、そんなことが通じる相手ではなかったらしく、強引に女性を追い出そうとしてきたらしい。
 しかし、女性はそれに抵抗して、後を引いた。
 これにより、木葉家の関係者は、不法侵入者として、捉えたという。

「貴様……まさか木葉家を狙っている者だな?」
「どういう事でしょうか?わたくしは別に狙ってもいませんわよ?」

 だが、やはり女性の方はいつものトロンとした口調で、関係者に言った。

「惚けても無駄だ!」

 そしてとうとう、関係者を敵に回したという。
 だが、それでも女性はいつもの口調で「あら……乱暴な人はお嫌いですわ……。」と言う。

「これはすぐに報告せねば……。」

 仲間に報告という、最終手段を選ぶ木葉家の関係者。
 そして、いつも持っている通信機、いわばトランシーバーを出した瞬間であった。

 ——————————————ジャキン。

 突然、木葉家の関係者は、心臓部分から大量出血をして、バタリと倒れたのは。

「……居合い抜きという言葉は、ご存じでしょうか?」

 関係者が倒れた原因は、女性の素早い居合い抜きであったのだ。
 居合い抜きは、素早く相手の急所を斬りつけて、一撃で相手を仕留める技であり、並大抵の刀使いではできない技なのだ。

「……少々酷くやりすぎましたわね……誰かに見つからないうちに、退散致しましょう……。」

 血だらけの刀を鞘に戻して、女性はとっととこの場から去っていった。
 そして、なぜか女性の目からは、一粒の涙がポタリと流れ落ちたという。


                ○


「で?結果はどうなったんだ?」

 木葉家の関係者が一斉に東牙が居る部屋に入ってきては、すぐさま診断をされ、ものの10分で結果が出たらしいので、蓮花に聞き出そうとしていた。

「一応全ての検査は白ね……でも1つだけおかしいことがあったのよね〜。」
「なんだそれは?」
「あなたの魔力は非常に特殊で希なタイプなのよ……。」

 蓮花は、少し眉間にしわを寄せて、東牙に言った。
 もちろん東牙も、眉間にしわを寄せて、聴いていた。

「魔力に希とかあるんだな。」
「うん。あなたの場合は、魔力をただ待っているだけで、あまり魔法を扱えない人よ?ただ、そのおかげで、魔法に対する耐性は非常に高いのよ……だから昨日私の魔法を受けても大丈夫だったのよ。」

 蓮花は昨日の出来事の原因が分かって、非常に満足しながら説明していた。
 すると東牙は、少し馬鹿にした感じで「それはお前が弱かったからじゃないのか?」と一言言った。
 もちろん少女は、その言葉を聞いて、黙っているわけがなかった。

「ちょっと失礼よ!?それに私は蓮花!れ・ん・かよ!?何度言えば気が済むかしら!?」
「そっちこそ……俺には東牙という名前がある。何度もあなたと呼んで欲しくないがな。」

 今度はお互いの名前を言い合い合戦になった。
 この2人はもしかすると、相性的に最悪かもしれない。

「な〜にが東牙よ!?私の名前の方が立派よ!」
「聞き捨てならない言葉だな……俺だって、蓮花に負けないくらい立派な名前を貰っている。」

 こうしてしばらく2人は、大声で周りに迷惑がかかるくらいの、口ケンカをしていたらしい。
 そして、15分くらい経った頃には、もう2人は疲れ果てて、落ち着いて話し合っていたという。

「東牙と話していると、とっても疲れるわ〜。」
「俺だって、蓮花と話していると疲れる。」
「はぁ〜……って……いっけない!私としたことが重要なことを言い忘れていたわ!」

 突然の言葉に、東牙はなんだ?という顔になった。

「これから東牙は、ここに毎日診断を受けにこないとだめなのよね……ようは通院。」
「……おいおい……それは本当か?」
「ここで冗談を言うと思う?仕方ないじゃない。東牙が変な魔力の持ち主なんだから。」

 東牙は、一気にやれやれという顔をして、黙って通院を承諾した。
 もちろん蓮花も、やれやれという顔で、通院を引き受けた。
 気づくと、2人はお互いの事を普通に名前で呼ぶ仲になっていたが、それに2人は全く気づかなかったらしい。